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第1章 勇者マストダイ!!【勇者なのに……〇〇されました。】
第55話 それが勇者パーティーの方針なんで。
しおりを挟む「う……あ…あ……。」
「大丈夫か?」
鉄駕籠を破竹撃で破壊し、名無し男を救出した。身体中、アザとか腫れや内出血だらけだが生きている。しかも、解放された事がわかると、自らヨロヨロと中から這い出てきたのだ。あの攻撃に耐えただけでも凄いが、この怪我の多さでもなお自ら動けるなんて奇跡という他ない。
「よく耐えたな! お前はすごいヤツだ!」
「怪我の治療をしてやりたいところだが、生憎、回復術師や薬もないから、しばらくは耐えるんだぞ。」
「どんなことされたらこんな傷になるんでヤンスか? ヒドイでヤンスね。」
イツキは名無しの怪我に気を遣い、ここの聖職者を締め上げて回復魔法でも使わせるか、なんて言い始めた。なんとか仲間と合流できれば、とも付け加えている。例の黒っぽい犬みたいな娘がそういうのを使えるのだろうか? 植物の力を使う魔法系統にはそういうものがあるとサヨちゃんが言っていたのを思い出した。
「あっ! そういえば、コレはアナタの持ち物でヤンすか?」
「う……ああ!?」
「うわわ!? なんか物凄い勢いでふんだくられたでヤンしゅ!?」
タニシが例の”?武器”を名無しに見せた。やはりというか、なんというか異常なほどの食い付きを見せ、タニシの手から素早く奪い取った。全身怪我をしている人間とは思えないほどの動きだった。よっぽどその武器には執着があるらしい。なにも話せなくとも、それが大事なものであることは覚えているようだ。
「これが例の意味不明な物体って訳か。なるほど、見れば見るほど不可解さが増していくようだぜ。」
「これが切っ掛けで何か思い出せればいいんだけどな。」
「……アリ……、」
「ん? 蟻がどうかしたのか?」
「……ガ……トウ……。」
「なんか、感謝してくれてるみたいでヤンしゅね?」
「おお! 早速しゃべれるようになったか!」
非常に辿々しくだが、大切な持ち物を持ってきてくれたタニシに感謝しているようだ。そして彼が初めて回りの人間に対してコミュニケーションをとった瞬間でもあった。やっぱり身近な物が手元にあるというだけで記憶の回復がすすんだのだろう。この調子で記憶を取り戻せればいいが……。
「しかし、あの男はアンタの仲間か? 大した身のこなしの様だが?」
「ああ。技を極めてるという意味では俺より遥かに強い。なんたって”梁山泊五覇”の一人、”槍覇”だからな!」
ヘイフゥはカボチャ兜の猛攻をいとも簡単に凌いでいる。カボチャ兜はちぎれた鎖を豪腕で振り回し、相手を粉砕しようと必死になっているが一向に当たらない。さっきみたいに無防備な名無しを相手にしているのと訳が違うのだから。
「何? そういう地位にいる人間は女じゃなかったか? 聞いている情報と違うんだが?」
「アレはあの人の趣味みたいなもんだから……。仮面被って男として技を極めてきたんだよ。」
「ああ、そういうことか。武芸ともなれば、女からしちゃあ風当たりの強い風潮があるからな。身の処し方でああいうことをしているんだな。」
イツキたちの情報網は大したものだがヘイフゥの情報はなかったようだ。俺たちの事をどの辺りからしているのかは知らないが、少なくとも大武会以降の情報に限られているのかもしれない。レンファさんは大武会で正体がばれて以降は一度もあの仮面を着けていなかったからな。
「戦技一○八計が一つ、燕雀連攻!!」
「ゴオッゴゴ!!!」
回避に専念しているだけに見えたヘイフゥだったが、一転して攻勢に転じた。目にも止まらぬ突きの連発でカボチャ兜を翻弄し、手にした鎖を取り落とさせるまでに至らせた。相手は堪らず膝をつき、その隙を見てヘイフゥは更なる一撃のための構えをとった!
「奥義、”霽月八衝”!!」
「グゴッ!?」
構えと共に繰り出された一撃、止めの奥義がまともに入った。一見すると相手の横を一瞬で通り過ぎただけのようにも見えるがすれ違いざまに鋭い一撃を加えている。しかも”霽月”だ。この一撃であっても相手には一切、傷をつけていない。俺と同じく敵の意識を失わせるだけに止めてくれたのだ。
「また峰打ちかよ! アンタら、どこまで甘ちゃんなんだよ!」
「即座に命を奪うことだけが戦いではないよ。要は戦闘不能にしてしまばいいのだから。」
またしてもイツキが俺たちの方針に異を唱えているが、俺達はそれを変えるつもりはない。でもイツキ達を非難するつもりもない。彼ら獣人が教団から迫害を受けているという事情は知っている。彼らが生き抜くためには非情にならないといけなかった環境にいたのだから、否定するのは間違っていると思うから。この時点で処刑人達は全部倒れた事になるが……何やらヘイフゥの後ろから襲いかかろうとする影がいた!
「ヘイフゥ、危ない!」
「甘ちゃんが命取りになるってことを教えてや……、」
「霽月八衝!!」
「ぐえ……!?」
ギリーがいつの間にか意識を取り戻し、ヘイフゥを背後から襲おう……とした。だが、ヘイフゥから完全に察知されていたためか、彼もまた梁山泊の奥義で再び意識を飛ばされてしまう結果になった。これでやっと奴らを無力化できたことになるのか。手強い奴らだったな……。
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