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第4話
しおりを挟む料理の基本の基本を教えるのとステーキと野菜スープを作ると言ったのは、絶対にこのレベルではスープの定義とか血抜きすらできていない時点で、そもそもの基本がわかっていないのだと断言できる。
この世界は魔法があるため、ケータイみたいな連絡手段と写真を撮ったりできる魔道具やテレビのようなものもあり、現代のように機能によって価格分けされているため、平民でもほとんどの人が持っていたり、テレビは一家に一台はちゃんとあるらしい。他にも冷蔵庫や洗濯機、ル○バっぽいのもよほどの貧乏でもなければどの家にもあるんだそうだ。
特に便利なのがオーブンレンジのような火炎複合魔方陣付与型温熱解凍箱型魔道具―――略してエンバコがあるため、貴族でも毒味をしても冷めた料理を食べ無くてもいいのと、なぜかは知らないがおかしなことに醤油や味噌や米(小麦粉のようにパンを作る米粉のようなものになっていたが)やマヨネーズなど、なんであるのに使えないのと、呆れてしまうほどの充実ぶりだったのだが、御都合主義でなんともありがたいと思ったものだ。どこか違和感が拭えないが。まあ、いくら温かい料理でも調味料もうまく使えていないので余計にマズくなっているため、へえ、ぐらいの感想しか出ないのだけど。
でも、今そんなことよりもヤバイのが、
(やばいぃいいいい!さっき数口しか食べてないからお腹がぁああ、早く何か美味しいのを食べたいぃいいいい!!)
と内心で叫びながら、今にもなりそうな腹の虫を気合いで押さえつけて、表面上では極めてにっこりと有無を言わせない迫力で、
「では、とりあえず血抜きは今からは無理なので、牛肉と野菜とベーコンと調味料を今すぐ用意しなさい!。」
「「「はっ、はいぃいい!!」
と、なぜか怯えたように返された。しっかりと使う野菜の名前などとできれば私が使えるサイズの台なども用意して欲しいと伝えることも忘れてはいない。キビキビと動く姿は手慣れていてプロなのだなぁと感心する。十数分経つとあっという間にどこからか運ばれてきた食材達が並んでいて驚いてしまった。準備ができて皆が私の方を向いたので、
「食材はこれでいいでしょう。ではまずは一枚料理長に作ってもらいます。その後に私が作ります。他の方達はしっかりと見ていてください。」
「「はい。」」
私が言うと半信半疑と言った表情で返事が返ってくる。真ん中の見やすい調理スペースの所で、直ぐに料理長が準備をし、牛肉の塊をちょうどいいサイズに切り出す。そこまでは良かったのだが、まさかの味付けもせずフライパンに放り込んだのだ。ジュュウゥといい音がし、香ばしい匂いが辺りに漂ったが、その匂いはすぐに焦げ付いた匂いが漂い始めた。しかも、レアはとっくのとうに過ぎており、これ以上焼くと焼き過ぎたどころではなくなるでしょ…と内心、ツッコミたくてうずうずしていたが、え、と思ってしまったのがそれを周りの料理人達がおぉ!とか流石!と言った感じなのだ。料理長も心なしか嬉しそうだ。
そんな感じでなんとか、真っ黒焦げのひどすぎる見た目のステーキが出来た。あまりの出来に私は心の中でまさか味付けもしないで、ひっくり返すタイミングが分かっていないとは……。
そして差し出されたステーキがやっぱりひどくて、ドン引きしながら、この味を覚えていてくださいと料理人達に押し付けた。
「では、アナスタシア様な番でございます。」
「わかりました。ああ、でも身長が、ってあら用意がいいのですわね。では、……」
いつの間にか身長に合わせた台が置かれ、私のサイズに合わせた特注の小さい調理道具までもが鎮座していた。それに驚きつつも、コック服と帽子をかぶり、手を洗って準備をする。そして、子供の手、ながらも迷いのないしっかりとした手つきに先ほどまで半信半疑ながらも心配そうにしていた料理人達から感嘆の声が漏れる。肉を切り、調味料をまぶし、手際よくフライパンの中に放るその様は素晴らしいとしか言いようがなかった。あっという間にあたりに食欲をそそるいい香りが漂い始めると、唾を飲む音やよだれが床に垂れる音などがそこらじゅうで聞こえるようになった。そうして、出来上がったステーキはキラキラと芸術品のように美しかった。
「では、早速試食して見て下さい。」
そう促すと、恐る恐るナイフを入れ、緊張した面持ちで口に運ぶと、
「う、うまい!なんだこれは、一見中に赤みがあり、生焼けかと思ったが、ちゃんと火が通っていてニンニクの匂いが食欲をそそるし、塩と胡椒がピリリと効いて、ハーブの香りも素晴らしい。噛めば口の中で溶けて、肉汁が溢れ出すぞ?!」
と食レポを言い、絶賛した。料理長の目にも、それを見ていた周りの料理人たちの目にも、尊敬が込められていて、なんだか気恥ずかしい。全員の目が獲物を前にした肉食獣のごとしギラギラとせずに口の端からよだれが垂れていなければだが。
「あの、アナスタシア様、もしよろしければもう一度手順を見せるためにお作りしてもらうことはできませんでしょうか?」
と、料理長が、キラキラとした目で、問いかけて来る。はあ、と内心でため息をつきながら、手際よくもう一度ステーキと今度は野菜スープも作り始める。料理を作り終わると、ふぅ、と幼女らしからぬ作業をしてかいた額の汗をぬぐいくるりと回ってじっと見つめまくっていた料理人達の方を向いて、笑顔で言った。
「では、二枚焼いたうち、一枚は料理長がもう一度味見をして下さい。一枚は私の夕食です。」
そう言って、かなーり小さい方のステーキを差し出すとちょっぴり残念な顔をしながらすぐさま口に入れ、先ほどとは比にならないぐらいのペラペラと饒舌にステーキについて語り出した。あっという間にに平らげたようで、こちらを羨ましそうに皆から見られているが、気にもとめず、私は食べ始めた。
(うーん。ヤバイ、今まで食べたステーキの中で一番美味しいわ。やっぱり素材がいいからスジもなくて舌の上でとろけるし、ちゃんとすればやっぱり美味しいじゃないの。)
そうして、その後もステーキと野菜スープをおしえ、口々に絶賛されながら美味しいものでお腹がいっぱいになった私は、お風呂に入りご機嫌で眠りにつくのだった。
―――まだ、のんきにしていられなくなる重大なことに気づいてないことも知らずに。
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退会済ユーザのコメントです
これからどんな改革をしていくのか楽しみですね。
前に来ていた転生者は娯楽を中心に文明を発展させていったのですかね?
前の転生者も同じ事を思ったかも知れないですねw
塩と胡椒があればもう少しまともな料理が出来ると思うのですが、定番のマヨネーズなど調味料もこれから作っていくのか楽しみにしています。