大泥棒

糸田造作

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大泥棒

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自分で言うのも何ですが、私は大泥棒です。

大泥棒と泥棒の違いは犯行声明にあります。

だから私はここに宣言します。

「あなたの大切なものを今から盗みます」

カバンを持っている方は財布があるか今すぐ確認してください。貴重品も気にした方が良いかもしれませんね。

さて、犯行声明も終わり、身構えているあなたに、少し泥棒について説明させてもらいましょう。

大泥棒の私の意見ですが、泥棒には2種類いると思っています。

一つは普通の泥棒。
これはよくニュースとかで見るタイプです。

生活に困ったり、自分の欲に負けてしまいついつい人のものを盗んで捕まってしまう方のことです。特徴としては何かしら盗んだ痕跡を残して、逃走しても結局は捕まってしまう者が多いことでしょう。

もう一つは大泥棒。
これはニュースでは見ないタイプです。

こちらは盗む標的も世界で1つしかない様なとびきり貴重なものや、盗まれた事すら発表できないような超重要物。特徴は、とにかく捕まらない事と盗むものが超貴重なものばかりである事でしょう。

では、世間の人は泥棒を評価をする時に何に注目しているのでしょうか。

盗んだもの?犯行の華麗さ?逃走の上手さ?

たとえこれらが泥棒の格付けをするために見られているとしたら、やはり私は最上位に入るでしょう。

なぜそう言えるかって?

盗むものはこの上なく貴重なものであり、手を汚さない犯行は美しく、誰も追って来られないに決まっているからです。

姿を見せずに、人々の貴重なものを次々と盗んでいく。もちろん、指紋や道具は一切残さない。

そもそも痕跡を残す方など泥棒の恥晒しと言えます。そんな奴は泥棒には向いていないでしょう。

今まで、何千回もこの犯行を繰り返していますが、私を見つけた警官、探偵など一人もいないのです。

いつも人々の大切なものを奪っているのに、なんて面白いのでしょう。奪われた者の顔を想像しただけでニヤけてしまいます。

人々もなぜ奪われていることに気づかないのか、いつも不思議に思います。

さて、そんなことを話している内に何かに気が付きましたか?

気がついていないのなら、もう少しお話をしましょう。

大泥棒は世界に一つしかないような貴重なものに目がないのです。

多くの人は貴重なものとして、ダイヤモンドのような宝石や金塊を想像するかもしれませんね。

でも、私はそうは思わないのです。

本当に大切なものは目に見えないと昔誰かが言っておりました。

私はその意見に賛成です。
形あるダイヤモンドも金塊も人々が皆平等に手に入れることができない時点で大切ではないのです。例えば、ダイヤモンドや金塊を持っていなくても困る人はいません。

困らないというのは、貴重品でも大切なものでもないのです。そして、もしも私がダイヤを盗んだとしても、返せば元通りになります。

平等に皆が持ってありながら、失えば取り戻せないもの、それが私にとって至高の盗む標的なのです。

勘の良い方ならそろそろお気づきかもしれませんね。

この世は多くのもので溢れていますが、皆が生まれた時から持っており、失ったら元に戻せないものは私が考えるに3つに限られています。

命、信用、そして時間。

私は大泥棒ですが殺人者にはなりたくありません。

私は大泥棒ですから誰かからの信用などはとっくの昔に捨てました。

だから、こうして宣言通りあなたの大切な「時間」を奪っているのです。

お気づきになりましたか?
最初からやたらに説明くさい回りくどい文章を書いてきました。

つらつらと書いてきましたが、ここまでお読みくださりありがとうございました。

充分お時間を盗むことができたので私はこれにておさらばします。

もし、あなたが時間を盗まれた悔しさがあるのなら、この作品を誰かに読ませればよろしい。

ひょっとすると、私のように人の時間を盗む快感に溺れ、あなたも大泥棒の仲間入りになるかもしれませんね…
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