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優等生の首にある噛み跡。
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気温30度を超える真夏日だと言うのにワイシャツのボタンを上までキッチリと締め汗もかかずに涼しい顔をしているのはクラス委員長の不破晃太だ。
半袖から伸びる腕は日焼けではなく元からの黒さのようでムラがない。
1度も染めたことがないであろう黒髪はいつも綺麗に整えられていて彼の性格が体現されている。
文武平等に加え高身長。謙虚でお人好しな彼に欠点などあるのだろうか。
授業中、斜め前に座る彼を横目で盗み見る。
背筋の伸びた背中は綺麗で座り方も完璧なのかよとため息をついた。
その背中に白い手が触れる。
不破とは反対に地から真っ白な肌でそれに似合わず厳つい顔をした幼馴染の茶渡雷だ。
彼はどちらかと言えばスポーツの方が得意だが不破に次いでクラス2位の成績を収めている。誰にでも手を差し伸べ力を貸す性格からクラスの兄的存在でムードメーカーのような奴だ。
詳しく聞いたことは無いがどうやら2人は幼稚園から交流があるそうで高校生となった今でも付き合いが続いているほど仲がいい。
不破は隣に座る茶渡に口パクで「なに?」と言っている。
茶渡の方は長くてなんと言っているかわからないがどうやら課題についての質問のようでプリントを見せ合い不破が解説している。
しばらくして茶渡が顔の前で手を合わせる。それに対し不破は手を振り再び姿勢を正して自分の課題に取り組み始めた。
何気ない行為だが2人は1度も声を発していない。全て口パクと身振り手振りで問題をひとつ解いてしまったのだ。
天才は読心術でも使えるのか。なんて呑気に考えていたら後ろから担任に頭を小突かれた。
課題は真っ白、さらによそ見をしていれば当然のことで慌ててプリントに向き直る。
1問目からわかんねえ。
昼休み。もうすっかりグループが固定されており教室にはいくつかのまとまりが出来ていた。
俺も趣味の合う友人と机を合わせ購買で買ったパンをかじる。
ふと気になり不破と茶渡の姿を探す。
ぐるりと見回しても2人を見つけることは出来なかった。そういえば入学してから2人が教室で昼休みを過ごしているのを見たことがない。
「なあ、不破と茶渡っていつもどこで飯食ってんだ?」
隣に座る友人に声をかける。
そいつも「そういえば見かけないよな。」なんて言いながら教室を見渡す。
ほかの友人も知らないようで明日は後ろでもつけてってやろうかなんて思った。
午後の体育は外でサッカーをしていたが終了間際に雨が降り始め中止となった。
慌てて更衣室に駆け込み汗ふきタオルで頭を拭く。
ジャージもずぶ濡れのためこの後は少し早いが着替えていいことになったので豪快にTシャツを脱いだ。
たまたまロッカーが隣同士だった不破をまたも横目で盗み見る。
水も滴るいい男とは彼のために出来た言葉なんじゃないかってぐらいに濡れた髪の毛が映える。
いつもかけている眼鏡にも水滴が付いたようで初めてメガネを外した顔を見た。
意外とまつ毛が長いことだとか鼻の頭にうっすら眼鏡の跡が付いているだとか。普段お目にかかれない姿に不思議と目を奪われる。
「どうかしたの?」
見すぎてしまっていたようで不破がたれた眉毛をさらに下げて微笑む。
「あ、いや。……そうだ、茶渡は?」
流石に本人に向かって綺麗だから見ていたなんて言える訳もなくいつも近くにいる茶渡がいないことについて話題を出した。
「先生と片付けしてから来るって。先生は別にいいって言ったんだけど2人の方が早く終わりますって無理やり。」
「なんか想像できるわ。」
茶渡の手助けは先生にまで及んでいたなんて。
それから特に話題もなく黙々と着替えていく。
不破の着替えなんていつも特に気にならないのだがセコムがいない状態が珍しすぎるのでついつい目がそちらに向かってしまう。
脱いだTシャツを丁寧に畳み袋にしまう姿はどこか母親を思い出させる。
そこで偶然見てしまった。不破の首にある明らかに人工的につけられたであろう噛み跡を。
偶然なんかでそこに噛み跡が着くはずがない。あれは意図して付けたものだ。
まさかこんな優等生に彼女がいたなんて。しかも結構積極的で独占欲が強いと見受けられる。
そりゃあこんな綺麗な顔にどこまでも完璧な人間がいれば女はほっとかないだろう。
つい最近彼女に振られた俺は心の中で舌打ちした。
「晃太、ちゃんと頭拭いたか?」
ようやくやってきた茶渡が不破の頭を撫でる。
不破はその手を払い首から下げていたタオルを茶渡の頭にかぶせた。
「また人のことばっかり。自分の方が濡れてるんだから。」
不破は茶渡の酷く濡れた髪の毛を丁寧に拭いていく。
どこまでお人好しなんだか。そんなことまでしなくてもいいんじゃないか、なんて思って見ていると茶渡の首にも噛み跡があることに気づいた。
二人揃って同じ場所。なんとなく嫌な予感がする。あまり踏み込んではいけないような、気づかない方がよかったような。
ゆっくり視線を上げると不破越しに茶渡と目が合った。
俺が何を見ていたか気づいているようで不破の頭を抱き俺にだけ見えるように口元に人差し指を当てた。
全て察してしまった俺は2度首を縦に降り2人から視線を逸らす。
「いきなりなに?」
「いや、髪にゴミがついてたんだよ。」
「なんだそっか。ありがとう。」
横で交わされる会話は2人の関係を知ってしまった今、イチャついているようにしか聞こえない。
さっきの髪を拭いてあげるくだりだとか、昼休み二人揃ってどこかに消えることだとか、授業中のやりとりだとか。その全てが幼馴染、友人としてではなく恋人同士としての行いだと思うと変に艶っぽく思えてしまい。
今後2人をまともな目で見れる自信がなくなってしまった。
半袖から伸びる腕は日焼けではなく元からの黒さのようでムラがない。
1度も染めたことがないであろう黒髪はいつも綺麗に整えられていて彼の性格が体現されている。
文武平等に加え高身長。謙虚でお人好しな彼に欠点などあるのだろうか。
授業中、斜め前に座る彼を横目で盗み見る。
背筋の伸びた背中は綺麗で座り方も完璧なのかよとため息をついた。
その背中に白い手が触れる。
不破とは反対に地から真っ白な肌でそれに似合わず厳つい顔をした幼馴染の茶渡雷だ。
彼はどちらかと言えばスポーツの方が得意だが不破に次いでクラス2位の成績を収めている。誰にでも手を差し伸べ力を貸す性格からクラスの兄的存在でムードメーカーのような奴だ。
詳しく聞いたことは無いがどうやら2人は幼稚園から交流があるそうで高校生となった今でも付き合いが続いているほど仲がいい。
不破は隣に座る茶渡に口パクで「なに?」と言っている。
茶渡の方は長くてなんと言っているかわからないがどうやら課題についての質問のようでプリントを見せ合い不破が解説している。
しばらくして茶渡が顔の前で手を合わせる。それに対し不破は手を振り再び姿勢を正して自分の課題に取り組み始めた。
何気ない行為だが2人は1度も声を発していない。全て口パクと身振り手振りで問題をひとつ解いてしまったのだ。
天才は読心術でも使えるのか。なんて呑気に考えていたら後ろから担任に頭を小突かれた。
課題は真っ白、さらによそ見をしていれば当然のことで慌ててプリントに向き直る。
1問目からわかんねえ。
昼休み。もうすっかりグループが固定されており教室にはいくつかのまとまりが出来ていた。
俺も趣味の合う友人と机を合わせ購買で買ったパンをかじる。
ふと気になり不破と茶渡の姿を探す。
ぐるりと見回しても2人を見つけることは出来なかった。そういえば入学してから2人が教室で昼休みを過ごしているのを見たことがない。
「なあ、不破と茶渡っていつもどこで飯食ってんだ?」
隣に座る友人に声をかける。
そいつも「そういえば見かけないよな。」なんて言いながら教室を見渡す。
ほかの友人も知らないようで明日は後ろでもつけてってやろうかなんて思った。
午後の体育は外でサッカーをしていたが終了間際に雨が降り始め中止となった。
慌てて更衣室に駆け込み汗ふきタオルで頭を拭く。
ジャージもずぶ濡れのためこの後は少し早いが着替えていいことになったので豪快にTシャツを脱いだ。
たまたまロッカーが隣同士だった不破をまたも横目で盗み見る。
水も滴るいい男とは彼のために出来た言葉なんじゃないかってぐらいに濡れた髪の毛が映える。
いつもかけている眼鏡にも水滴が付いたようで初めてメガネを外した顔を見た。
意外とまつ毛が長いことだとか鼻の頭にうっすら眼鏡の跡が付いているだとか。普段お目にかかれない姿に不思議と目を奪われる。
「どうかしたの?」
見すぎてしまっていたようで不破がたれた眉毛をさらに下げて微笑む。
「あ、いや。……そうだ、茶渡は?」
流石に本人に向かって綺麗だから見ていたなんて言える訳もなくいつも近くにいる茶渡がいないことについて話題を出した。
「先生と片付けしてから来るって。先生は別にいいって言ったんだけど2人の方が早く終わりますって無理やり。」
「なんか想像できるわ。」
茶渡の手助けは先生にまで及んでいたなんて。
それから特に話題もなく黙々と着替えていく。
不破の着替えなんていつも特に気にならないのだがセコムがいない状態が珍しすぎるのでついつい目がそちらに向かってしまう。
脱いだTシャツを丁寧に畳み袋にしまう姿はどこか母親を思い出させる。
そこで偶然見てしまった。不破の首にある明らかに人工的につけられたであろう噛み跡を。
偶然なんかでそこに噛み跡が着くはずがない。あれは意図して付けたものだ。
まさかこんな優等生に彼女がいたなんて。しかも結構積極的で独占欲が強いと見受けられる。
そりゃあこんな綺麗な顔にどこまでも完璧な人間がいれば女はほっとかないだろう。
つい最近彼女に振られた俺は心の中で舌打ちした。
「晃太、ちゃんと頭拭いたか?」
ようやくやってきた茶渡が不破の頭を撫でる。
不破はその手を払い首から下げていたタオルを茶渡の頭にかぶせた。
「また人のことばっかり。自分の方が濡れてるんだから。」
不破は茶渡の酷く濡れた髪の毛を丁寧に拭いていく。
どこまでお人好しなんだか。そんなことまでしなくてもいいんじゃないか、なんて思って見ていると茶渡の首にも噛み跡があることに気づいた。
二人揃って同じ場所。なんとなく嫌な予感がする。あまり踏み込んではいけないような、気づかない方がよかったような。
ゆっくり視線を上げると不破越しに茶渡と目が合った。
俺が何を見ていたか気づいているようで不破の頭を抱き俺にだけ見えるように口元に人差し指を当てた。
全て察してしまった俺は2度首を縦に降り2人から視線を逸らす。
「いきなりなに?」
「いや、髪にゴミがついてたんだよ。」
「なんだそっか。ありがとう。」
横で交わされる会話は2人の関係を知ってしまった今、イチャついているようにしか聞こえない。
さっきの髪を拭いてあげるくだりだとか、昼休み二人揃ってどこかに消えることだとか、授業中のやりとりだとか。その全てが幼馴染、友人としてではなく恋人同士としての行いだと思うと変に艶っぽく思えてしまい。
今後2人をまともな目で見れる自信がなくなってしまった。
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