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二章 引き受けた仕事の先で(2)
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出会い頭、美貌の男に氷のような冷やかさで見降ろされた。
ティーゼは、生粋の魔族が持つ小さく尖った耳と、宝石のような艶やかな赤い瞳を改めて確認し、彼がこの屋敷の人間である事をゆっくり把握した。やけに好戦的なやつだなぁと思いながら、仕事の用件である手紙を差し出した。
「ギルドから、手紙の配達を頼まれたんです」
男は秀麗な眉を潜めながらも、汚れ一つない指で手紙をつまみ取った。送り主と宛先を確認すると、彼の眉間の皺が少し薄くなった。
「ああ、私宛てでしたか」
「え。あなたがルチアーノさんなんですか」
まさか本人が出てくるとは思わなかった。
ティーゼが瞬きすると、美貌の男――ルチアーノが綺麗な顔を顰めた。
「私の顔を御存じないのですか。魔界の宰相として、結構知られている顔だと思っていたのですが? ああ、そうですか。あなたは人族の王や、重要人物の顔と名前も覚えないタイプの人間なのですね。理解致しました」
一つの質問に対して倍の嫌味が返って来たので、ティーゼは、思わず口角を引き攣らせた。
そんなに自分を知られていないことを気にするなんて、こいつは自意識過剰なのだろうか?
「その、なんというか、すみませんでした……?」
「別に謝罪を要求しているわけではありませんよ。政治に興味がない人間にとって、さしたる問題ではないのでしょうし」
ルチアーノは自然に言ってのけると、その場で手紙を読み進めた。内容は短かったようだが、ふと思慮する瞳で「やはり難しいですね」とぼやく。
こいつ面倒な性格してるし、とっとと逃げよう。
嫌味を言われたせいで、仕事の完了を告げるタイミングを逃したティーゼが、形式的な挨拶は要らないだろうと判断し、そろりと後退を始めた時、ルチアーノの後ろから「誰かきたのかい?」と美しいアルトの声が上がった。
それは、耳朶に鳥肌が立つような錯覚を覚えるほどの美声だった。
ティーゼは半ば飛び上がりながら、反射的に視線を向けた。いつの間にかルチアーノの後方に親しげな笑みを浮かべた青年がいて、パチリと目が合う。
男性にしては少し長い艶やかな漆黒の髪と、対象の如く白い肌に映える紅玉のような瞳。色香のある美貌の微笑みが目を引き、親愛も窺える目元は優しげだ。幼馴染のおかげで、美貌には耐性がついていたので、ティーゼは見惚れる事はなかった。
しかし、彼女は、漆黒の髪を見た途端に強い眩暈を覚えていた。
この世界で、黒い髪を持った人物が一人しかいない事ぐらい、世間に疎いティーゼも知っている。
「……もしかして、あなたが魔王さんですか?」
「はい。僕が魔王です」
出来れば現実であって欲しくないと感じ、ティーゼは、ついて疑問を口から滑らせていた。すると、美青年が気にした様子もなく、あっさりと答えてしまう。
想像以上に威圧感のない、むしろ親しみ度が半端ない柔和な表情の魔王に、ティーゼは一瞬、ルチアーノとの温度差を比較してしまった。自分との身分に天と地の差があるのは一目瞭然で、彼女は数秒遅れて、慌てて頭を下げた。
「すみませんでしたッ。私は用が済みましたので、これにて失礼します!」
魔王は、滅多にお目に掛けない存在であると噂されている人物であり、面会を求める場合は、国を通して行われるぐらいの重要人物だと幼馴染から聞いた事がある。
ここで国際問題に発展したらまずい。むしろ、冗談じゃない。
ディーゼは、すぐさま『回れ右』をしたが、人懐こい魔王の、身分を超越するような優しさが仇となったのか、彼女は途端に肩を掴まれて硬直した。
「かしこまらなくてもいいよ。こう見えても、僕は二百歳の若輩者だし、発言権だってそんなにないから。むしろ、父上の影響力が強くて、僕はまだお飾りみたいな感じ?」
「そんな内部事情を一般庶民に話さないで下さいッ」
魔王は、自嘲ともとれる発言を、のんびりとした顔で言ってのけた。恐らく、空気が読めない残念な人なのだろうと、ティーゼは戦慄と共に、自分の中の魔王像が音を立てて壊れていくのを感じた。
いや、そんなことはどうだっていいのだ。
彼女が今直面している問題は、どうやって、この肩に置かれた魔王の手をどかせばいいのか、である。
振り払うわけにはいかないし、かと言って、触わるのも憚られる――どちらにせよ、こちらのやりとりを冷ややかな目で見守っているルチアーノに、嫌味を言われるのは容易に想像出来た。
しかし、ティーゼの素直な口は、そんな小さなパニックでも本音を抑える事が出来なかった。
「いやいやいや、二百歳って、私達からすると、とてつもなく年上なんですが」
「そう? 僕たちの中では全然若いよ。多分、人間でいうところの二十六、七歳ぐらいかなぁ。だから、気軽に話してくれて問題ないよ」
「アバウトすぎますよ色々と!」
ティーゼが力いっぱい断ると、魔王は少し困ったような表情をした。考える素振りをした際、肩に置かれていた彼の手が離れた事に、彼女はほっとした。
「うーん、やっぱり人間と魔族の感覚の違いのせいかな。それとも、若い女の子に、いきなり友人関係を築こうとするのは難しいのかな?」
「友人にするつもりだったんですか、初対面の、今のこの場で?! 意味が分かりませんし、ここは通りすがりの郵便配達人だと思って華麗にスルーして下さって結構です!」
そこで、ティーゼはようやく「あれ?」と首を傾げた。
「初対面の人にはよく間違えられるのに、よく私が女の子だと分かりましたね」
「人間族と一緒にしないでいただきたいですね。雌雄の区別くらい幼子でもつきます」
魔王のそばで控えていたルチアーノが、間髪入れずそう指摘した。
「ちなみに、年頃ではないので問題にはなりませんが、独身の女性が男性に長く触れられるのは頂けないので、将来の為にも覚えておいてほうがいいでしょう」
「私はこう見えても十六歳です!」
この国では、十五歳からは成人として扱われて飲酒も認められていた。女性であれば、十六歳からは結婚も可能な年頃なのだ。
すると、魔王が驚いたように目を見開いた。対するルチアーノは、実に残念な生き物を見るような目をティーゼの胸元に向ける。
「――なるほど。人間にしては成長機能が上手く働いていない、という事ですか」
「お前今どこ見たッ? これは盛っていないだけであって、全くないわけじゃないんです!」
「そうですか。魔族は女性の匂いと、年頃の色香には敏感な生き物だと自負していたのですが……」
「露骨な表情吐くってまで打ちのめすの、止めてくれません!? これでも下着選びには苦労してるんですよッ、女は面倒な生き物なんです!」
ティーゼは堪らず、「畜生!」と地団太を踏んでいた。彼女は、別にサラシを巻いてもいなければ、胸が潰れるようなジャケットを選んで着用している訳でもない。どのジャケットを着ても、女性らしい体付きが隠れてしまうだけなのである。
やりとりを見ていた魔王が、遠慮がちに二人の間に割って入った。
「あのね、一応年頃の女の子が、そういう話題を口にするのは良くないと思うよ?」
「いいんです、大きくなければ動く時に邪魔になったりしませんし、育つのは、きっとこれからだと思っていますから」
「だから、そういう――」
「陛下、コレは改善の余地のない可哀そうな人間です。コレが年頃の娘だというのは何かの陰謀に違いありません」
「真面目な顔して何言っちゃっての!? 私だって女だし、女心も分かっているつもりですよ! 女の子は誰でも豊満な胸が欲しいし、くびれにも憧れるし、あと身長がもう少し高ければいいのに!」
「後半は単に、あなたの願望ではないのですか」
ルチアーノに冷ややかな止めを刺され、ティーゼは、両手で顔を覆って項垂れた。
この目付きの険しい嫌味野郎、もう嫌だ。
そう口の中で愚痴っていると、ふと、目の前に魔王が立つ気配がして、ティーゼは顔を上げた。すぐそこには、何故か美貌に花を咲かせた魔王の、期待に瞳を輝かせた素晴らしいお顔があった。
魔族という特性のせいか、彼らは、どちらもすごく背が高い。それでも正面から真っすぐ絡み合う視線に、ティーゼは少し遅れて、魔王が腰を屈めてこちらを覗き込んでいる事に気付いた。
「……何でしょうか?」
一歩後退しながら、ティーゼは、少し前の自分の発言に何かまずいところでもあっただろうか、と悩んだ。
やはり、肩に手を置かれた時点で早々に逃げるべきだったのでは……そう逡巡していると、不意に大きな両手に右手が包まれて、ティーゼは思わず「ひぃッ?」と声を上げていた。
種族の違いか、温度の低い魔王の手は、水のようにひんやりと冷たかった。しかし、彼女の口から反射的に色気のない悲鳴が上がったのは、美形な男の色香よりも、国際的な危機感を強く覚えたせいだ。
「そうだよね。やっぱり人間の女心は、人間の女の子の方がよく知っているよね」
「その、物の例えではそうと言いますか……一応、私も女ですし?」
「うん、やっぱり僕と友達になろうよ。友達だったら、恋愛相談とかもしていいんでしょう?」
ティーゼは一瞬、言葉の意味を咀嚼出来で硬直した。僅かの間を置いて、「は?」と行き場のない言葉が口をついて出る。
彼女が数秒ほど考えて思った事は、一つだった。
この魔王様は、一体何を考えて生きているんだろう。
思わず悟りを得そうなほどの呆け感に包まれ、ティーゼは、しばらく反応する事が出来なかった。
ティーゼは、生粋の魔族が持つ小さく尖った耳と、宝石のような艶やかな赤い瞳を改めて確認し、彼がこの屋敷の人間である事をゆっくり把握した。やけに好戦的なやつだなぁと思いながら、仕事の用件である手紙を差し出した。
「ギルドから、手紙の配達を頼まれたんです」
男は秀麗な眉を潜めながらも、汚れ一つない指で手紙をつまみ取った。送り主と宛先を確認すると、彼の眉間の皺が少し薄くなった。
「ああ、私宛てでしたか」
「え。あなたがルチアーノさんなんですか」
まさか本人が出てくるとは思わなかった。
ティーゼが瞬きすると、美貌の男――ルチアーノが綺麗な顔を顰めた。
「私の顔を御存じないのですか。魔界の宰相として、結構知られている顔だと思っていたのですが? ああ、そうですか。あなたは人族の王や、重要人物の顔と名前も覚えないタイプの人間なのですね。理解致しました」
一つの質問に対して倍の嫌味が返って来たので、ティーゼは、思わず口角を引き攣らせた。
そんなに自分を知られていないことを気にするなんて、こいつは自意識過剰なのだろうか?
「その、なんというか、すみませんでした……?」
「別に謝罪を要求しているわけではありませんよ。政治に興味がない人間にとって、さしたる問題ではないのでしょうし」
ルチアーノは自然に言ってのけると、その場で手紙を読み進めた。内容は短かったようだが、ふと思慮する瞳で「やはり難しいですね」とぼやく。
こいつ面倒な性格してるし、とっとと逃げよう。
嫌味を言われたせいで、仕事の完了を告げるタイミングを逃したティーゼが、形式的な挨拶は要らないだろうと判断し、そろりと後退を始めた時、ルチアーノの後ろから「誰かきたのかい?」と美しいアルトの声が上がった。
それは、耳朶に鳥肌が立つような錯覚を覚えるほどの美声だった。
ティーゼは半ば飛び上がりながら、反射的に視線を向けた。いつの間にかルチアーノの後方に親しげな笑みを浮かべた青年がいて、パチリと目が合う。
男性にしては少し長い艶やかな漆黒の髪と、対象の如く白い肌に映える紅玉のような瞳。色香のある美貌の微笑みが目を引き、親愛も窺える目元は優しげだ。幼馴染のおかげで、美貌には耐性がついていたので、ティーゼは見惚れる事はなかった。
しかし、彼女は、漆黒の髪を見た途端に強い眩暈を覚えていた。
この世界で、黒い髪を持った人物が一人しかいない事ぐらい、世間に疎いティーゼも知っている。
「……もしかして、あなたが魔王さんですか?」
「はい。僕が魔王です」
出来れば現実であって欲しくないと感じ、ティーゼは、ついて疑問を口から滑らせていた。すると、美青年が気にした様子もなく、あっさりと答えてしまう。
想像以上に威圧感のない、むしろ親しみ度が半端ない柔和な表情の魔王に、ティーゼは一瞬、ルチアーノとの温度差を比較してしまった。自分との身分に天と地の差があるのは一目瞭然で、彼女は数秒遅れて、慌てて頭を下げた。
「すみませんでしたッ。私は用が済みましたので、これにて失礼します!」
魔王は、滅多にお目に掛けない存在であると噂されている人物であり、面会を求める場合は、国を通して行われるぐらいの重要人物だと幼馴染から聞いた事がある。
ここで国際問題に発展したらまずい。むしろ、冗談じゃない。
ディーゼは、すぐさま『回れ右』をしたが、人懐こい魔王の、身分を超越するような優しさが仇となったのか、彼女は途端に肩を掴まれて硬直した。
「かしこまらなくてもいいよ。こう見えても、僕は二百歳の若輩者だし、発言権だってそんなにないから。むしろ、父上の影響力が強くて、僕はまだお飾りみたいな感じ?」
「そんな内部事情を一般庶民に話さないで下さいッ」
魔王は、自嘲ともとれる発言を、のんびりとした顔で言ってのけた。恐らく、空気が読めない残念な人なのだろうと、ティーゼは戦慄と共に、自分の中の魔王像が音を立てて壊れていくのを感じた。
いや、そんなことはどうだっていいのだ。
彼女が今直面している問題は、どうやって、この肩に置かれた魔王の手をどかせばいいのか、である。
振り払うわけにはいかないし、かと言って、触わるのも憚られる――どちらにせよ、こちらのやりとりを冷ややかな目で見守っているルチアーノに、嫌味を言われるのは容易に想像出来た。
しかし、ティーゼの素直な口は、そんな小さなパニックでも本音を抑える事が出来なかった。
「いやいやいや、二百歳って、私達からすると、とてつもなく年上なんですが」
「そう? 僕たちの中では全然若いよ。多分、人間でいうところの二十六、七歳ぐらいかなぁ。だから、気軽に話してくれて問題ないよ」
「アバウトすぎますよ色々と!」
ティーゼが力いっぱい断ると、魔王は少し困ったような表情をした。考える素振りをした際、肩に置かれていた彼の手が離れた事に、彼女はほっとした。
「うーん、やっぱり人間と魔族の感覚の違いのせいかな。それとも、若い女の子に、いきなり友人関係を築こうとするのは難しいのかな?」
「友人にするつもりだったんですか、初対面の、今のこの場で?! 意味が分かりませんし、ここは通りすがりの郵便配達人だと思って華麗にスルーして下さって結構です!」
そこで、ティーゼはようやく「あれ?」と首を傾げた。
「初対面の人にはよく間違えられるのに、よく私が女の子だと分かりましたね」
「人間族と一緒にしないでいただきたいですね。雌雄の区別くらい幼子でもつきます」
魔王のそばで控えていたルチアーノが、間髪入れずそう指摘した。
「ちなみに、年頃ではないので問題にはなりませんが、独身の女性が男性に長く触れられるのは頂けないので、将来の為にも覚えておいてほうがいいでしょう」
「私はこう見えても十六歳です!」
この国では、十五歳からは成人として扱われて飲酒も認められていた。女性であれば、十六歳からは結婚も可能な年頃なのだ。
すると、魔王が驚いたように目を見開いた。対するルチアーノは、実に残念な生き物を見るような目をティーゼの胸元に向ける。
「――なるほど。人間にしては成長機能が上手く働いていない、という事ですか」
「お前今どこ見たッ? これは盛っていないだけであって、全くないわけじゃないんです!」
「そうですか。魔族は女性の匂いと、年頃の色香には敏感な生き物だと自負していたのですが……」
「露骨な表情吐くってまで打ちのめすの、止めてくれません!? これでも下着選びには苦労してるんですよッ、女は面倒な生き物なんです!」
ティーゼは堪らず、「畜生!」と地団太を踏んでいた。彼女は、別にサラシを巻いてもいなければ、胸が潰れるようなジャケットを選んで着用している訳でもない。どのジャケットを着ても、女性らしい体付きが隠れてしまうだけなのである。
やりとりを見ていた魔王が、遠慮がちに二人の間に割って入った。
「あのね、一応年頃の女の子が、そういう話題を口にするのは良くないと思うよ?」
「いいんです、大きくなければ動く時に邪魔になったりしませんし、育つのは、きっとこれからだと思っていますから」
「だから、そういう――」
「陛下、コレは改善の余地のない可哀そうな人間です。コレが年頃の娘だというのは何かの陰謀に違いありません」
「真面目な顔して何言っちゃっての!? 私だって女だし、女心も分かっているつもりですよ! 女の子は誰でも豊満な胸が欲しいし、くびれにも憧れるし、あと身長がもう少し高ければいいのに!」
「後半は単に、あなたの願望ではないのですか」
ルチアーノに冷ややかな止めを刺され、ティーゼは、両手で顔を覆って項垂れた。
この目付きの険しい嫌味野郎、もう嫌だ。
そう口の中で愚痴っていると、ふと、目の前に魔王が立つ気配がして、ティーゼは顔を上げた。すぐそこには、何故か美貌に花を咲かせた魔王の、期待に瞳を輝かせた素晴らしいお顔があった。
魔族という特性のせいか、彼らは、どちらもすごく背が高い。それでも正面から真っすぐ絡み合う視線に、ティーゼは少し遅れて、魔王が腰を屈めてこちらを覗き込んでいる事に気付いた。
「……何でしょうか?」
一歩後退しながら、ティーゼは、少し前の自分の発言に何かまずいところでもあっただろうか、と悩んだ。
やはり、肩に手を置かれた時点で早々に逃げるべきだったのでは……そう逡巡していると、不意に大きな両手に右手が包まれて、ティーゼは思わず「ひぃッ?」と声を上げていた。
種族の違いか、温度の低い魔王の手は、水のようにひんやりと冷たかった。しかし、彼女の口から反射的に色気のない悲鳴が上がったのは、美形な男の色香よりも、国際的な危機感を強く覚えたせいだ。
「そうだよね。やっぱり人間の女心は、人間の女の子の方がよく知っているよね」
「その、物の例えではそうと言いますか……一応、私も女ですし?」
「うん、やっぱり僕と友達になろうよ。友達だったら、恋愛相談とかもしていいんでしょう?」
ティーゼは一瞬、言葉の意味を咀嚼出来で硬直した。僅かの間を置いて、「は?」と行き場のない言葉が口をついて出る。
彼女が数秒ほど考えて思った事は、一つだった。
この魔王様は、一体何を考えて生きているんだろう。
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