25 / 44
六章 まさかの理想の騎士様
しおりを挟む
翌日、リリアはめでたくも学院復帰となった。昨日中、様子をみていたものの、クシャミの拍子などの放電も確認されなかった。
放電期、無事、終了である。
アサギの手配で、休んでいる間分の、授業の資料をもらったのは助かった。それくらいで遅れませいよと教授にぼそぼそ言われたものの、そんなわけあるはずがない。
「放電期のこと、あいつに笑われなかったのは良しとするけど。これで勉強の成績を落としたら、今度こそバカにされるわ。それは阻止するッ」
昔から、勉強が苦手だったとは自覚している。今後のことも考えて、しっかり領地経営に必要な勉学分は頭に叩き込んでおかねば。
しかしながらリリアは、それが第二王子の未来の妻に相応しい教養の一つ、だとはまるで考えていなかった。
一週間以上も休んでいたせいか、久しぶりの学院でじろじろと見られた。
頭の狐耳も目立っているのだろう。全く、人外差別も甚だしい。
「ふっ、アサギにも『大丈夫』って言って来たんだから、ここで心を乱して放電なんて、絶対にしないわよ」
リリアは負けず嫌いに火が付いて、堂々と移動し授業を受けた。
『第二王子とは、婚約者同士うまくいっているのか?』
『さぁ、どうなんだろう……』
――そう、不仲説の揺らぎについて、こっそり交わされる噂は耳に入らない。
講義の時間が終われば、遅れた分の授業内容を復習した。次の授業開始までには移動して、またしっかりと勉強に励む。
本日の日程は、気付けばあっという間に終わってしまっていた。
そんな中、リリアは通り過ぎようとした掲示板に「んん?」と目が吸い寄せられた。
「希望制の講座か……これ、私が休んでいた間の項目よね」
これは、受けるべきか、受けないべきか。
そんなことを、リリアは廊下で立ち止まって考える。しかし不意に、廊下の外側がにわかに騒がしくなった。
女の子のびっくりした悲鳴も、遠くから聞こえてきた気がした。
なんだろうと思って振り返った矢先、リリアは、「うわっ、なんだこれっ」とよける令息達の姿と――そして、泣きっ面のもふもふ狸の顔面が、目に飛び込んできた。
「姫様ぁ――――――っ! うぅ、こんなところにいたんですね! うわああああ人間の学校で広すぎて分かんないっ、もうすごく会いたかっです!」
半ばバニックになったカマルが、狸姿のまま人間の言葉をぎゃんぎゃん言ってきた。
喋る狸が出たと、周りの生徒達は大騒ぎしていた。しかも人間っぽい喜怒哀楽があって余計に怖い、とにかく可愛いやら不気味やらで怖い!と混乱している。
リリアも突然のことで混乱した。
「うわあああぁぁ!?」
真っ直ぐ自分のもとへ大ジャンプをしてきたカマル目掛けて、直後、驚きのあまり狙いを定めて放電していた。
ずどーんっ、と一瞬眩しい光が放たれた。
それがやんだのち、掲示板にぴったり背中を付けているリリアと、廊下に突っ伏しているもふもふ狸の姿があった。
固唾を呑んでいた生徒達が、ゆっくりと後退し始める。
と、またしても若干焦げたカマルが、よろよろと小さな右前足を上げた。
「ひ、姫様に、結婚のご報告を、しようかと、思いまして」
それで律儀に自分を探しにきたらしい。
恐らくは、アサギから学院にいるとでも伝えられたのだろう。でもリリアとしては、本当にまさか、ここにカマルが来るとは思っていなかったから驚いた。
「ご、ごめんなさいカマル。ここ、随分遠いけど、どうやってきたの? 私みたいに飛ぶ手段はないんでしょう?」
「化け狸の妖怪国の道を使いました!」
話している間に回復したのか、カマルが、今度は元気良く挙手して答えてきた。
そういえば、どこからでも引き寄せられると言っていた。そう考えると、妖怪国の地理的に端寄りだという化け狸の住処は、意外と便利だ。
その様子を、廊下の外側から観察していた令嬢令息達が、小さくざわついた。
「やっぱり狸が喋っている……」
「しかも器用に前足も上げて返事をしている」
「なんか、ちょっと可愛い気がしますわ……」
「動物と、意思疎通が……?」
何人かの生徒達が、幼い頃のトキメキでも思い出しかのような、ドキドキした表情で胸を押さえた。
その一方、リリアもまた、びっくりしてドクドクしている胸を押さえていた。少し落ち着いたのち、カマルが「よいしょ」と後ろ足で立ち上がったタイミングで尋ねる。
「でもそれ、帰ってからでも良かったんじゃないの?」
正直な疑問を口にした。アサギだって、リリアのスケジュールを知っている。恐らく、日中には戻れることを伝えてあっただろう。
するとカマルが、妖術で体の焦げ跡を消して、ふんふん興奮した鼻息をやりながら言う。
「いいえ! すぐにでもお会いしたかったのですっ」
得意気に胸を張って彼が答えた。もふもふの狸が、両足で立っている姿に、廊下の向こうで何人かの生徒が「ぐはっ」「胸にきた!」と崩れ落ちていた。
……あそこの子達、ある意味大丈夫かしら。
気付いたリリアは、ふと心配になった。ぶんぶん短い狸の手を振ってくるカマルに目を戻してみると、彼が意気揚々と述べてくる。
「実は、彼女と新居の住処探しに出るのです。今、メイは父親のもとで荷造りをしておりまして。あと少しで、旅立たなければなりません。ですから、時間がないので今すぐ恩返しをさせてください!」
そんな押し付け恩返し、聞いたことない。
リリアは、めでたい日ゆえか、やけにテンションが高いカマルを見下ろした。パッと思い付くことだってなく、頭の狐耳をやや落として困り込んだ。
「必要ないわよ」
注目が集まっているのに気付いて、そう答えた。
カマルは「えぇぇ」と納得いかない様子だ。
「あ。なら、姫様の恋のお助け、とかは?」
カマルの方が、パッと思い付いた様子で提案してきた。
そんなに簡単なことであれば、悩んでいない。騒ぎを聞き付けた他の生徒達も、移動がてら立ち寄ってくる中、リリアは犬歯を覗かせて強めに返した。
「私は、立派な大妖怪になるの! だから、結婚なんてしないんだからっ」
それを耳にした近くの令嬢令息らが、「え」と困惑を漂わせた。
カマルは焦って、そちらにも気が回らないまま、おろおろとリリアを宥めにかかった。
「ご事情はちゃんと覚えてますっ。ただ、えっと、協力してもらったおわびです!」
「別に、おわびなんていらないわよ」
「そこをなんとか!」
「どんな言い分? だから、して欲しいことなんて、ないんだってば」
リリアは、これで話は終わり、といわんばかりにプラチナブロンドの髪を払った。
だが、カマルは諦めなかった。彼女が歩き出す前にと、あわあわとその場でぐるぐる歩き回って必死に考える。一部の生徒達が、また新たに悶絶していた。
その時、彼が閃いた顔で「あ!」と大きな声を上げた。
「相手が人間がいいというのなら、姫様の好みな人間の男を捜してあげますから!」
くるりと振り返ったカマルが、『任せてください』的な仕草をする。
「え」
リリアは嫌な予感がした。そもそも、自分が恋愛小説を読んでうっとりしているだとか、憧れのシチュエーションを楽しんでいるだとか、絶対に知られたくないことで――。
そう思っていると、唐突にカマルが動き出した。
とことこと小走りで移動するのを見て、リリアは慌てた。
「あっ、ちょっと待って!」
焦って声をかけるも間に合わなかった。パッとどこかへ目を留めたかと思ったら、カマルがピンときた様子で、人混みの中に勢いよく突っ込んだ。
驚きの声が上がった。「意外ともふもふ」やら、「たぬきがーっ」やら、「近くでみると大変可愛いですわっ」やら、一気に騒がしくなる。
「カ、カマル、いいから戻ってきなさいっ」
さーっと青い顔をして、リリアはどうにか収拾せねばと声を投げた。
その時、沢山の人がいる中から「うわっ」と声が上がった。
「君、一体なんですか!?」
「ははっ、いいからいいから」
そんなカマルの声が聞こえたかと思ったら、人々の間から「よいしょ」と彼の丸いボディが出してきた。
その小さい右前足で、堂々と一人の男の手を捕まえている。身長差があまりにもありすぎて、その人は前屈みになってしまっていた。
「ほらっ、姫様が好みだと口にしていた『正統派騎士』! それでいて『性格良さそう』『爽やかで優しい気配のイケメン』です!」
ざわっ、と途端に周囲一帯が困惑に包まれた。
「え、正統派の……なんだって?」
「好み?」
「つうかあれ、コンラッド様じゃ――」
と、カマルが引っ張ってきた男性が、不意に顔を上げた。
リリアはバチッと目が合った。しかし、同時に、割れた人垣の向こうにサイラスの姿があることに気付いた。
……あれ? これってもしかして、あいつの護衛騎士じゃない?
リリアは、その正装の騎士服を目に留めて冷や汗を覚えた。気のせいでなければ、その衣装にされている上品な刺繍の柄は『第二王子』の所属紋だ。
――だが、それよりも、直後にやはり顔へ意識が戻っていた。
カマルが連れてきたその人は、確かに小説の絵と雰囲気がとても似ていた。優しげな印象の端整な顔立ち、疑問符いっぱいの表情も、すごくハンサムで……。
正面からガン見した次の瞬間、リリアはかーっと赤面した。
嘘でしょ。現実に、妄想していたあのイケメン騎士様がいるだなんて!
リリアは、ついよろけてしまった。もう彼に見られているだけで無性に恥ずかしくなってきて、頭の中は妄想と現実でこんがらがった。
「あの、その、違うんです。私、そのあやかしの子を、止めようとして」
普段の口調はどこへ行ったのか。リリアは、すっかり大人しい娘のように、しどろもどろに言った。
でも、言葉はそこで途切れてしまう。
サイラスが「は」と呆気に取られた声を上げた。それを耳にした瞬間、リリアはみんなに見られていることを猛烈に意識して、気付いた時にはカマルを抱えて空を飛んで逃げ出していた。
放電期、無事、終了である。
アサギの手配で、休んでいる間分の、授業の資料をもらったのは助かった。それくらいで遅れませいよと教授にぼそぼそ言われたものの、そんなわけあるはずがない。
「放電期のこと、あいつに笑われなかったのは良しとするけど。これで勉強の成績を落としたら、今度こそバカにされるわ。それは阻止するッ」
昔から、勉強が苦手だったとは自覚している。今後のことも考えて、しっかり領地経営に必要な勉学分は頭に叩き込んでおかねば。
しかしながらリリアは、それが第二王子の未来の妻に相応しい教養の一つ、だとはまるで考えていなかった。
一週間以上も休んでいたせいか、久しぶりの学院でじろじろと見られた。
頭の狐耳も目立っているのだろう。全く、人外差別も甚だしい。
「ふっ、アサギにも『大丈夫』って言って来たんだから、ここで心を乱して放電なんて、絶対にしないわよ」
リリアは負けず嫌いに火が付いて、堂々と移動し授業を受けた。
『第二王子とは、婚約者同士うまくいっているのか?』
『さぁ、どうなんだろう……』
――そう、不仲説の揺らぎについて、こっそり交わされる噂は耳に入らない。
講義の時間が終われば、遅れた分の授業内容を復習した。次の授業開始までには移動して、またしっかりと勉強に励む。
本日の日程は、気付けばあっという間に終わってしまっていた。
そんな中、リリアは通り過ぎようとした掲示板に「んん?」と目が吸い寄せられた。
「希望制の講座か……これ、私が休んでいた間の項目よね」
これは、受けるべきか、受けないべきか。
そんなことを、リリアは廊下で立ち止まって考える。しかし不意に、廊下の外側がにわかに騒がしくなった。
女の子のびっくりした悲鳴も、遠くから聞こえてきた気がした。
なんだろうと思って振り返った矢先、リリアは、「うわっ、なんだこれっ」とよける令息達の姿と――そして、泣きっ面のもふもふ狸の顔面が、目に飛び込んできた。
「姫様ぁ――――――っ! うぅ、こんなところにいたんですね! うわああああ人間の学校で広すぎて分かんないっ、もうすごく会いたかっです!」
半ばバニックになったカマルが、狸姿のまま人間の言葉をぎゃんぎゃん言ってきた。
喋る狸が出たと、周りの生徒達は大騒ぎしていた。しかも人間っぽい喜怒哀楽があって余計に怖い、とにかく可愛いやら不気味やらで怖い!と混乱している。
リリアも突然のことで混乱した。
「うわあああぁぁ!?」
真っ直ぐ自分のもとへ大ジャンプをしてきたカマル目掛けて、直後、驚きのあまり狙いを定めて放電していた。
ずどーんっ、と一瞬眩しい光が放たれた。
それがやんだのち、掲示板にぴったり背中を付けているリリアと、廊下に突っ伏しているもふもふ狸の姿があった。
固唾を呑んでいた生徒達が、ゆっくりと後退し始める。
と、またしても若干焦げたカマルが、よろよろと小さな右前足を上げた。
「ひ、姫様に、結婚のご報告を、しようかと、思いまして」
それで律儀に自分を探しにきたらしい。
恐らくは、アサギから学院にいるとでも伝えられたのだろう。でもリリアとしては、本当にまさか、ここにカマルが来るとは思っていなかったから驚いた。
「ご、ごめんなさいカマル。ここ、随分遠いけど、どうやってきたの? 私みたいに飛ぶ手段はないんでしょう?」
「化け狸の妖怪国の道を使いました!」
話している間に回復したのか、カマルが、今度は元気良く挙手して答えてきた。
そういえば、どこからでも引き寄せられると言っていた。そう考えると、妖怪国の地理的に端寄りだという化け狸の住処は、意外と便利だ。
その様子を、廊下の外側から観察していた令嬢令息達が、小さくざわついた。
「やっぱり狸が喋っている……」
「しかも器用に前足も上げて返事をしている」
「なんか、ちょっと可愛い気がしますわ……」
「動物と、意思疎通が……?」
何人かの生徒達が、幼い頃のトキメキでも思い出しかのような、ドキドキした表情で胸を押さえた。
その一方、リリアもまた、びっくりしてドクドクしている胸を押さえていた。少し落ち着いたのち、カマルが「よいしょ」と後ろ足で立ち上がったタイミングで尋ねる。
「でもそれ、帰ってからでも良かったんじゃないの?」
正直な疑問を口にした。アサギだって、リリアのスケジュールを知っている。恐らく、日中には戻れることを伝えてあっただろう。
するとカマルが、妖術で体の焦げ跡を消して、ふんふん興奮した鼻息をやりながら言う。
「いいえ! すぐにでもお会いしたかったのですっ」
得意気に胸を張って彼が答えた。もふもふの狸が、両足で立っている姿に、廊下の向こうで何人かの生徒が「ぐはっ」「胸にきた!」と崩れ落ちていた。
……あそこの子達、ある意味大丈夫かしら。
気付いたリリアは、ふと心配になった。ぶんぶん短い狸の手を振ってくるカマルに目を戻してみると、彼が意気揚々と述べてくる。
「実は、彼女と新居の住処探しに出るのです。今、メイは父親のもとで荷造りをしておりまして。あと少しで、旅立たなければなりません。ですから、時間がないので今すぐ恩返しをさせてください!」
そんな押し付け恩返し、聞いたことない。
リリアは、めでたい日ゆえか、やけにテンションが高いカマルを見下ろした。パッと思い付くことだってなく、頭の狐耳をやや落として困り込んだ。
「必要ないわよ」
注目が集まっているのに気付いて、そう答えた。
カマルは「えぇぇ」と納得いかない様子だ。
「あ。なら、姫様の恋のお助け、とかは?」
カマルの方が、パッと思い付いた様子で提案してきた。
そんなに簡単なことであれば、悩んでいない。騒ぎを聞き付けた他の生徒達も、移動がてら立ち寄ってくる中、リリアは犬歯を覗かせて強めに返した。
「私は、立派な大妖怪になるの! だから、結婚なんてしないんだからっ」
それを耳にした近くの令嬢令息らが、「え」と困惑を漂わせた。
カマルは焦って、そちらにも気が回らないまま、おろおろとリリアを宥めにかかった。
「ご事情はちゃんと覚えてますっ。ただ、えっと、協力してもらったおわびです!」
「別に、おわびなんていらないわよ」
「そこをなんとか!」
「どんな言い分? だから、して欲しいことなんて、ないんだってば」
リリアは、これで話は終わり、といわんばかりにプラチナブロンドの髪を払った。
だが、カマルは諦めなかった。彼女が歩き出す前にと、あわあわとその場でぐるぐる歩き回って必死に考える。一部の生徒達が、また新たに悶絶していた。
その時、彼が閃いた顔で「あ!」と大きな声を上げた。
「相手が人間がいいというのなら、姫様の好みな人間の男を捜してあげますから!」
くるりと振り返ったカマルが、『任せてください』的な仕草をする。
「え」
リリアは嫌な予感がした。そもそも、自分が恋愛小説を読んでうっとりしているだとか、憧れのシチュエーションを楽しんでいるだとか、絶対に知られたくないことで――。
そう思っていると、唐突にカマルが動き出した。
とことこと小走りで移動するのを見て、リリアは慌てた。
「あっ、ちょっと待って!」
焦って声をかけるも間に合わなかった。パッとどこかへ目を留めたかと思ったら、カマルがピンときた様子で、人混みの中に勢いよく突っ込んだ。
驚きの声が上がった。「意外ともふもふ」やら、「たぬきがーっ」やら、「近くでみると大変可愛いですわっ」やら、一気に騒がしくなる。
「カ、カマル、いいから戻ってきなさいっ」
さーっと青い顔をして、リリアはどうにか収拾せねばと声を投げた。
その時、沢山の人がいる中から「うわっ」と声が上がった。
「君、一体なんですか!?」
「ははっ、いいからいいから」
そんなカマルの声が聞こえたかと思ったら、人々の間から「よいしょ」と彼の丸いボディが出してきた。
その小さい右前足で、堂々と一人の男の手を捕まえている。身長差があまりにもありすぎて、その人は前屈みになってしまっていた。
「ほらっ、姫様が好みだと口にしていた『正統派騎士』! それでいて『性格良さそう』『爽やかで優しい気配のイケメン』です!」
ざわっ、と途端に周囲一帯が困惑に包まれた。
「え、正統派の……なんだって?」
「好み?」
「つうかあれ、コンラッド様じゃ――」
と、カマルが引っ張ってきた男性が、不意に顔を上げた。
リリアはバチッと目が合った。しかし、同時に、割れた人垣の向こうにサイラスの姿があることに気付いた。
……あれ? これってもしかして、あいつの護衛騎士じゃない?
リリアは、その正装の騎士服を目に留めて冷や汗を覚えた。気のせいでなければ、その衣装にされている上品な刺繍の柄は『第二王子』の所属紋だ。
――だが、それよりも、直後にやはり顔へ意識が戻っていた。
カマルが連れてきたその人は、確かに小説の絵と雰囲気がとても似ていた。優しげな印象の端整な顔立ち、疑問符いっぱいの表情も、すごくハンサムで……。
正面からガン見した次の瞬間、リリアはかーっと赤面した。
嘘でしょ。現実に、妄想していたあのイケメン騎士様がいるだなんて!
リリアは、ついよろけてしまった。もう彼に見られているだけで無性に恥ずかしくなってきて、頭の中は妄想と現実でこんがらがった。
「あの、その、違うんです。私、そのあやかしの子を、止めようとして」
普段の口調はどこへ行ったのか。リリアは、すっかり大人しい娘のように、しどろもどろに言った。
でも、言葉はそこで途切れてしまう。
サイラスが「は」と呆気に取られた声を上げた。それを耳にした瞬間、リリアはみんなに見られていることを猛烈に意識して、気付いた時にはカマルを抱えて空を飛んで逃げ出していた。
42
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
本編完結済み。
続きのお話を、掲載中です。
続きのお話も、完結しました。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
だってわたくし、悪女ですもの
さくたろう
恋愛
妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。
しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
モブ令嬢、当て馬の恋を応援する
みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~
ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、
夜会当日──
婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、
迎えに来ることはなかった。
そして王宮で彼女が目にしたのは、
婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。
領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、
感情に流されることもなく、
淡々と婚約破棄の算段を立て始める。
目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、
頭の中で、今後の算段を考えていると
別の修羅場が始まって──!?
その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、
エヴァンジェリンの評価と人生は、
思いもよらぬ方向へ転がり始める──
2月11日 第一章完結
2月15日 第二章スタート予定
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる