刑事たちの余談

江木 三十四

文字の大きさ
14 / 111

13.奇跡の天然水

しおりを挟む
 セールスマン風の男がとある家を訪ねてくる。
 玄関に出てきた女性にこんな話をする。
 「この近辺に超良質な天然水の水脈があります」
 「天然水?」
 「はい、健康に必要なミネラルや各種の栄養が豊富に含まれています」
 「体に良いの?」
 「はい、長寿にも十分たぶん効果があります」
 「うち、水道水使ってんだけど」
 「それとは比べものになりません。一度飲み比べてください」
 カバンからペットボトルを取り出し差し出す。
 「どうですか?」
 「確かにコクがあるみたい」
 「飲んでいただくだけで、じきに効果が現れてきます」
 「ああ、水の配達サービスね」
 「いえいえ、そんな面倒なものではありません」
 「水のセールスじゃないの?」
 「もっとけた外れに素晴らしいものです」
 「けた外れって何?」
 「はい、当社の科学者が調べたところ、この天然水が奥さまの家の真下を通っていることが判明しました」
 「そんなのが地下にあるなんて知らなかったわ」
 「これはもう奇跡に近い、ラッキーです」
 「そうなの?」
 「そこでご提案です」
 「何かしら?」
 「掘り当てたらでいいので、工事の契約をお願いできますか?」
 「出なかったら、お金払わなくていいのね?」
 「もちろんです」
 「じゃ、いいかな」
 「それではさっそく」
 指笛を吹くセールスマン。
 それを合図につるはしやスコップを担いだ男どもが来て庭を掘り返し始める。

 30分ほどで、先ほどのセールスマンが再び現れる。
 「奥さま、水脈に達しました」
 住人が庭を見るが何も出ていない。
 「出てないじゃない」
 「しばらく時間をいただければ・・・はい出ますよ」
 穴から水が噴き出す。
 「あらっ、本当」
 「これで、お客様は健康長寿を手に入れられました。おめでとうございます」
 「ありがとう。うれしいわ」

 福田君「という詐欺でね」
 みさとさん「なんでが出てくるの?」
 福田君「近くでね、水道工事があると地域内の水が止まるじゃない」
 みさとさん「うん」
 福田君「その時にが出るというパイプを、もともとあった水道管につないじゃうんだ」
 みさとさん「水道工事が終わって、水道の水が流れてくると・・そうか」
 福田君「うん、が自噴するんだよ」
 みさとさん「でも本当はただの水道の水って訳ね。ずいぶん手間のかかる詐欺ね」
 福田君「でもね、高額の工事代を請求していたんだ」
 みさとさん「それで、なんでつかまったの?」
 福田君「間抜けな連中でね、水道管と間違えてガス管に穴を開けちゃったんだ」
 みさとさん「危ないじゃない」
 福田君「それでね、ドッカーンとやっちゃったんだ」
 みさとさん「誰かケガしたの?」
 福田君「詐欺の連中が大やけどを負っただけ」
 みさとさん「おバカさんなのね」

 おしまい
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...