最強の女騎士さんは、休みの日の過ごし方を知りたい。

ろうでい

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十一話 煌めく宝物《リユースショップ》

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「いやー、昨日は大手柄だったね二人とも。おかげで抱えている指名手配犯の数も大分減ってきたよ」

 翌日、謁見の間。国王は満足そうな笑みを浮かべながら、手にしている指名手配書の束から昨日捕まえた手配犯の紙を引き抜いていく。
 昨日の騒動で捕まえた凶悪犯は、全部で五人。一夜のうちで捕まえた数としては、王国の歴史の中でもかなりの上位の数字となるのであろう。
 玉座に座る国王の隣に、その手配書を覗き込む右隣のルーティアと腕組みをして納得の出来ないような表情でうなり声をあげているリーシャがそれぞれいた。広い室内に居るのは、今日はこの三人だけだ。

「でも国王。その手配犯を気絶させていたのは……」

「魔族の男、でしょ?狙って手配犯を倒したのか、それとも偶然なのか分からないけれど……結果オーライってヤツかな。いやー、感謝状でも贈らなくちゃかなー」

 リーシャは既に、昨日の騒動の一連の流れを国王に伝えていた。 自分が酒場で暴れている男がいたと通報を受けて駆けつけた時には、既に魔族の男が酒場の中にいたゴロツキ達を気絶させていたという状況。そしてそれを取り押さえようとして、リーシャとマグナが向かっていったが――。

「マグナの方は、問題ないそうです。医務室で精密に検査をしましたが、傷一つないそうですね」

 ルーティアは、その報告書の内容を国王に告げた。その内容に、リーシャはますます首を捻る。

「おかしいのよ。明らかに打撲、下手をすれば骨折をするくらいの勢いで壁に叩きつけられて……しかも魔力を帯びた拳を浴びたのに、傷一つないだなんて……」

「魔皇拳と言ったそうだな。魔力を拳に宿した拳法……。それによって力を増したり攻撃の威力を高める、魔族特有の魔法の使い方だそうだが……逆に、威力を弱めたという事は考えられないか?」

「威力を、弱める……?」

 ルーティアのその考えに、リーシャは俯いていた顔を上げてそちらの方を向く。

「吹き飛ばした相手に防御魔法を瞬時に施して、壁に叩きつけた衝撃を和らげるんだ。そうすれば見た目の勢いはすさまじいが、マグナが傷一つ負っていない事に納得は出来る」

「で、でもどうしてよ?なんでそんな事をする必要があるのよ」

「……うむ、それが分からないな。それにあの男はどうして酒場で暴れてなどいたのかも……」

 憶測の域を超えない推察を繰り返し、リーシャもルーティアも腕組みをして俯くばかりだった。 そんな二人のうなり声を止めるように、国王は玉座から立ち上がって二人の方を向いて笑顔を見せた。

「まあまあ、いいじゃないの!マグナは怪我をしていない、指名手配犯を五人も捕まえられた!その魔族の男……ランディルとかいう男が何をしていたのかは分からないけれど、全て良い結果に繋がっているんだし!」

 本来であれば、酒場で暴れていた罪に加えて騎士団員に怪我を負わせた罪もあり、それこそ国内での指名手配犯にもなりかねない案件である。 しかしマグナに傷はなく、暴れて気絶をさせていた相手は全てお尋ね者の犯罪者。罪に仕立て上げる事も出来るが、どちらかというと功績の方が目立つ今回のケースに、国王はわざわざこれを騒ぎ立てるような考えを持っていない様子だった。

「ですが、国王!この件をただ放っておくだけというのも――」

 リーシャが抗議の声をあげようとしたその時。
 謁見の間の重く大きな観音開きのドアが開き、そこからマリルとマグナが入ってきた。

「!マグナ!大丈夫なの!?」

 リーシャは壇上から飛び降りて、マグナの元へ駆け寄った。
 マグナは少し赤い顔をして後頭部を掻きながら、少し恥ずかしそうに微笑んだ。

「は、はい。あの……ご心配、おかけしましたリーシャ様。お医者さんに診てもらって、外傷は全くないそうです。魔術団の……クルくんにも診てくれて、魔法による呪術や身体内部の傷なんかも全くなくて、健康そのものだそうです。本当に、心配かけてすみません……」

「……あ、アンタが謝るコトじゃないでしょ、ばか……!うううう……」

 涙目になるのをぐっと堪えながら、リーシャは自分より少し背の高いマグナの肩に両手を置いて、顔をそこに伏せた。ルーティアも、マリルも、国王も、その様子をみて安心しきった様子だった。

「国王、今マグナちゃんが言った通りです。お医者さんからも、魔術団からも、何事もないとお墨付きが出ました」

「うんうん、良かった良かった。マリルも色々手配してマグナと一緒に回ってくれたんでしょ?ありがとうね」

「いえ、そんな。アタシも心配でしたから」

 父親役の国王は、娘達の無事と絆の強さが見えた事が何よりも嬉しい様子だった。

「マグナは大事をとって今日は家で休養をとりなさい。リーシャ、上司としてマグナを家まで送ってあげるように。いいね?」

「あ、ありがとうございます、国王」

「……うう、マグナ……もうちょっとだけ、待ってて……」

「え、あ……は、はい……っ」

 泣き顔を診られたくないのであろう。リーシャはマグナに顔を伏せたまま、自分の腕で顔を拭っている。その様子を見て、部下であり心配されていた側であるマグナが、何故かリーシャの背に手を伸ばしてトントン、と優しく安心させるようにそこを叩くのだった。


「ルーティアとマリルは今日はお休みだったね。非番だったのに助かったよ二人とも」

 国王に言われ、ルーティアは気付いたように「あ」と声をあげた。

「そうか、今日は休みか」

 昨日の騒動から手配犯の城への護送やマグナの看病を手伝っていたルーティアはその感覚がなかったようで、今になってようやくそれに気付いたらしい。
 同じように病院や魔術団の手配をしていたマリルも、欠伸をして腕時計を見た。

「仮眠はとったけれど、結構疲れたね。お昼とったら出かけようか、ルーちゃん」

「……出かける?」

 言われた言葉に首を傾げるルーティアに、マリルはにやりと笑った。

「あー、さては昨日ケラソスで話してた事、覚えてないでしょー」

「……すまん、お酒を飲んだあとにあの騒動だったので、つい……」

「あはは、まあ仕方ないよね。じゃ、覚えているか分からないけれど……今日のお休みの過ごし方を発表しよう!」

 マリルはしゅたっ、と謁見の間の壇上に上り、ルーティアを指さして告げた。


「 今日は『リユースショップ』を見に行くわよ!ルーちゃん! 」

――

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