めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。

hoo

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告白

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 どういうことでしょうか。わたくしの胸はかつてないほどぎゅうぎゅうに締めつけられております。
 水浸しになったせいで、コルセットが水の重みで胸を締めているのでしょうか。いいえ、もうすこし胸の奥が痛いのです。

 いったいこれは何でしょうか。

 「ダリ―ナ、聞いてますか。いまここで誓ってくれ」
 
 わたくしは強く抱きしめられました。ああ、皆さまがまわりにいるというのに。ふたりとも水浸しだというのに。
 
 「マジマンジさま…お離しください…」
 「離しません」
 「わたくしは…誓えないのです」
 「それは何故ですか」
 「何故って…」
 
 ここで正直に洗いざらい言ってしまったら、どうなるのでしょうか。
 いくらなんでも自由になりたいからだなんて理由まで告げてしまえば、家名断絶は免れないでしょうか。いえ、婚約破棄を申し出たわたくしに対して、まだこんなにレディーファーストで大切にしてくださるマジマンジさまならば、きっと大丈夫でございますわよね。
 
 「どうかお許しください。わたくしは、元々…王妃になりたくはないのでございます」
 
 どうしましょう。強く抱きしめられているというのに、なんだか体が震えてまいりました。口にした言葉の重みをわたくしはきっといまさら感じているのですわ。
 この十七年間をむげにするような言葉を口にしたこと……
 
 ですけどおかしいですわ、もうずっと無意識に心に鬱積してきた願いですし、前世を思い出してからのここ最近ははっきりと願って願ってどうしようもなかったことです。
 それなのに、言葉に出してしまったら、あらためてこの願いの恐ろしさを思い知らされた気分でございます。
 これが言霊というものなのでしょうか。
 
 「ダリ―ナ…理由を聞かせてはもらえないか」
 
 やはりお優しい貴方は、怒ってはおられないのですね。それはそれは静かにお尋ねになられたマジマンジさまへ、わたくしは顔を上げました。きっと感情まみれの、見せてはいけない顔です。それでもわたくしはあえて上げました。
 
 
 初めてご覧にいれたせいでしょうか。マジマンジさまの宝石のような瞳は大きく開かれました。
 
 「そんなに辛い理由があるのですか…」
 
 マジマンジさまのお言葉で、わたくしがいま辛い顔をしているらしいことは存じました。
 そうですわね……たしかに胸が張り裂けそうに辛うございます。
 
 「ダリ―ナ、それは君が私とは結婚したくないということか」
 
 「ちがいます!」
 
 わたくしは咄嗟に答えておりました。つくろったわけではございません。考えるよりも先に言葉が心から飛び出しておりました。ええ、決してわたくしはマジマンジさまと結婚したくないわけではないのですわ。それは事実でございます。
 
 「では何故」
 
 「…自由が欲しいのです」
 
 もう隠すことなどありません。すべてぶちまけてしまうしかありません。
 わたくしはまっすぐにマジマンジさまを見つめました。
 
 「疲れてしまいましたの。…このようなことは望んではいけないと存じております。生まれながらに王妃になるべき宿命と、わたくし自身へ言い聞かせて過ごして参りました。選択の自由など無いのだと」
 
 
 ああ、どうしましょう。涙があふれてまいりました。
 
 「ダリ―ナ…」
 
 「でも本当は、…なりた…くない……」
 
 声が詰まります。うまく言葉になりません。泣きながら話そうとすると、こんなふうになるのですね。
 ああきっとわたくしは世にも醜い顔になっていることでしょう。
 
 「こん…なわたくしの、ことなど、不敬罪に処して、くださいませ」
 
 とうとう、しゃくりあげてまいりました。
 
 今まで物陰にかくれて泣いたことなら何度となくございましたわ。ですが、人前でこうして泣くのは初めてでございます。なんて恥ずかしくて情けなくてどうしようもなく悲しいのでしょう、そして、なんて同じほど、救われるおもいなのでしょう。
 こうして、涙をみせてしまえました事に、
 
 マジマンジさまに、苦しいおもいを打ち明けることができました事に。
 
 
 もう悔いはございません。
 
 「も…うしわけ、ありません」
 
 「ダリ―ナ、」
 
 わたくしは覚悟を決めて、彼の瞳を見つめました。
 
 どんな罪でもわたくし一人にでしたら受け止める所存でございます。
 


 
 



 


  ☆ ☆ ☆ ☆

 新作『同情の余地なし』を開始しました。
 こちらは一転してダークな世界になる予定です。
 よろしければ、のぞいてみてください。
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