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レディーファースト魂の正体

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 「君の思いはよくわかりました」
 
 マジマンジさまが厳しいお顔になりました。ああ貴方のようなお優しい方に、断罪を願い出るなど申し訳ないことをしておりますこと、重ねてお許しくださいませ。
 わたくしは逸らしそうになる目を懸命にとどめました。
 
 
 「では弟に、時期皇位をゆずりましょう」
 
 
 ……いまなんと仰せになられました?
 いいえ、ちがいますわね、わたくしは聞きまちがえたのでございますね。
 
 「ママママジマンジ殿下!?」
 「今のお言葉はマジまことでございますか!!」
 侍従たちが騒ぎ立てる声がいたします。
 
 
 聞きまちがえ……ですわよね??
 
 
 「私は君とずっと一緒にいられればそれでいいのです。君が王妃になりたくないと言うのなら、私が王にならなければいいだけのこと」
 
 
 ……聞きまちがえではないようでございます……。

 あ、あの、マジマンジさま、お気は確かでいらっしゃいますか。わたくしが尋ねるのもなんですけど……
 
 「弟のことなら心配はいらない。あれは君も知ってのとおり気さくで町にもよく出向き、民の声を拾い上げてきた。つまり民の信頼も厚い。あれが王になればきっとこの国はより良い国になるに違いない」
 
 「マジマンジ殿下!!国王様がそれではなんと仰せになられるか…!今一度、今一度、お考え改めくださいませ!!」
 侍従たちの言うことはもっともですわ。王様がうんとおっしゃるはずございませんわ。
 といいますか、
 その前にまずわたくし、まだ抱きしめられたままでございます。そしてこの展開は何かのまちがえかと、まだ頭のどこかで考えております。
 ええ、そうですわ。ありえませんもの。次期国王が、わたくしのために王位継承権を放棄ですって。どういうことですの。いろいろおかしいです。おかしくないわけございません。ございませんわ。
 
 「ダリ―ナ、また思っていることが声に出ていますよ」
 「え」
 「そして決しておかしくなどありません。君のためになら継承権でも何でも捨てましょう」
 
 「何故でございますか…何故わたくしのためにそのような…」
 
 ああマジマンジさま、レディーファースト魂も少々いきすぎではございませんか。
 
 「君を愛しているから以外にどんな理由がありますか。これまでも散々、君にこの愛を伝えてきたではありませんか」

 それは、ですから、マジマンジさまの骨の髄まで染み込んだレディーファースト魂ゆえの、お優しいお言葉がけではないのですか。
 わたくしは呆然とマジマンジさまを見つめてしまいました。
 
 「……まさか、本当に君にはこの愛が伝わっていなかったのですか」
 
 「お、お言葉ですけども、マジマンジさまは幼少のころから、わたくしにそのように話してこられました。ですから…そのように話すよう教育をお受けになった、ということではございませんの?」
 
 幼き子が大人のように愛を語る自体、不可思議でしょう。ならばただそのように女性を賛美するよう躾けられたのだと、同じく幼き頃のわたくしとて思いましたわ。
 
 「そ、それは、初めはそうだった。おかげで、大人になってもこのような思いを躊躇することなく口にできるようになれたのだ」
 
 がっしりとわたくしの両肩がつかまれました。
 
 「ではいま改めてはっきり言います。いや何度でも君に伝わるまで言います。私は、君を愛してる……!」
 
 
 ああ……なんてこと。
 胸が沸騰しそうでございます。締めつけられすぎてついにおかしくなったのかしら。
 顔が沸騰しておりますのは確かでございます。と申しますより全身が真っ赤になってしまった気がいたします。
 
 ああマジマンジさま。恋とは愛とは、もしかしてこのような心地をいうのでしょうか。
 
 「つ…伝わりましたように存じます……」
 
 胸が沸騰どころか破裂しそうでございます。
 
 「そ、そうですか!では急いで帰って父上に報告だ!次期国王の座は弟へ譲ると!そして君と結婚式を挙げると!」
 
 
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