能力が『勇者をしじする者』の僕なのですが、勇者パーティをクビになりました!

トリノ

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エルフの村

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「そういえばまだ名乗ってなかったわね。私はラーナ。森の奥にあるエルフの村から来たの」

「僕はオリト。それでラーナ、さっき村を助けてほしいって言ってたけど、どういうこと?」

「それはね…」

とラーナは村の状況を話し始めた。

ラーナの話によれば、人里離れた森の中で結界をはり隠れて暮らしていたのだが、突然結界が破られ、人間が押し入り村を襲い始めたそうだ。

村の住民たちは応戦したものの、敵の強さに圧倒され敗北した。

ラーナは村長から助けを呼ぶように言われ村を脱出したのだが、さっきの男たちに見つかり追いかけられていたとのことだった。

「村が襲われたのは昨日の夕方のことなの。だから早く戻らないと…みんなが…」

ラーナが今にも泣きそうな顔をしている。

そういえば勇者パーティにいた時に、珍しい種族を奴隷にして売り歩いている集団がいるって聞いたことあるな…

討伐任務出ていたような気がするんだけど…誰も受けなかったのかな…

「僕はほとんど戦えないよ?武器も防具もないし、ラーナを戦わせることになる。それでもいいの?」

「それでもあなたの力があれば私は強くなれる。だからあなたに来てほしいの!」

僕は考える。
僕はラーナに出会わなければ自分の可能性に気づかず路頭に迷っていただろう。
ラーナの言葉に僕は救われた。

だったら…

「…僕でよければ一緒に連れていってくれ!君の力になりたい!」

「……ありがとう!じゃあ早速行きましょう!」

ラーナは立ち上がると俺の手を引いた。

「ちょ、ちょっと待って!!」

「どうしたの?」

「ちょっとね…」

俺は死んだ男の持っていたナイフを拾う。
もともと片手剣を使っていた僕だけど、無いよりはマシだろう。

「ラーナ行こう!」

「ええ!」

ラーナは再び俺の手を取り、森の中へと走り出した。





エルフの村は森の中に入ってから1時間くらいのところにあった。

「意外と近くなんだね、エルフの村って」

「そうね、ただここにエルフの村があることは知られていないはずなんだけど…おそらく誰かがつけられたか、結界を破るための情報を売ったかどっちかね」

「…エルフ内に内通者がいるってことか?」

「あまり信じたくないけど、その可能性もあるかなって思うの…そうだとすれば心当たりがあるやつもいるし…」

「とりあえず村に入ろう。その話はラーナの仲間たちを助けてからだね」

「ええ」

ラーナの案内で僕はエルフの村に入った。





「……遅かった…」

目の前には壮絶な光景が広がっていた。
民家からは煙が上がり、地面には戦って死んだであろうしたいが転がっている。

「…みんな…ごめんね…私がもっと早く帰って来られれば…」

ラーナは座り込み涙を流し始めた。

「ごめん…ごめん…」

謝り続ける。

「…………れ!」

ん?どこかから声がする。
男の声だ。僕は耳を澄ませる。

「…早く乗れって言ってんだ!」

間違いない!誰かいる!

「ラーナ!あっちに誰かいるよ!」

「………えっ?ほんと?」

「うん、でも男の声だし敵の可能性が高い」

「いいわ、早く行きましょう!」

俺とラーナは声のする方に走り出した。

「あ、あれ!あそこに運搬車があるわ!……みんなが乗せられてる!」

「じゃあ十中八九敵だね。ラーナ慎重に…あれ?」

ラーナどこ行った?
前を見ると一目散に運搬車に向かって走っている。
男たちもラーナに気づき、

「おい!まだ生き残りがいやがったぞ!」
「女だ!殺さずに捕らえろ!」

とナイフや剣を構える。
ざっと14、5人はいるだろうか。

「ラーナ!ってもう声は届かないか!こうなれば!」

能力を使うしかない。

「勇者よ!僕を助けてくれー!」

僕が叫ぶと僕とラーナは光に包まれた。

ラーナは男たちが突き出すナイフを華麗にかわし、矢をつがえ着実に1人ずつ倒していく。

ただ相手の数が多い。
ラーナがナイフをかわし、着地したところを確実に狙ってナイフを突き出している。
ラーナもなんとか避けるが、息が荒くなっている。

「僕も行かなきゃ!」

ナイフを取り出し走り出した。

「おい!もう1人いたぞ!」
「男だ、殺せ!」

僕に気づいた数人が標的を僕に変える。

「死ねや!」

剣を振り上げ僕に突撃してくる。

「遅いよ!」

男の懐に入り込み、ナイフを突き刺す。
男は剣を落とし、その場に倒れこんだ。
僕は落ちた剣を拾い一歩後退。

うん、やっぱり片手剣のほうがしっくりくる。

「さぁ!かかって来なよ!」

「てんめぇ、なめやがって!おい!あいつ速攻殺してブタの餌にするぞ!」

「へい!」

今度は3人が突撃してくる。
くっ、3人は対処できない!

「死ねや!!」

ヒュンッ!
ヒュンッ!

風切り音とともに2人の男が倒れた。
2人とも頭に矢が刺さっている。

「な!ちょ、ちょっと待てよ!」

「終わりだよ!!」

俺は剣を真っ直ぐに男に突き出した。
見事に男の体を貫き、絶命させる。

「助かったよ、ラーナ!」

「こちらこそ!あなたの能力って本当にすごいのね!体が軽くなって相手の攻撃が全部遅く見えたわよ!」

ラーナ1人で10人くらいは倒してるんじゃないか?
もともとかなり強いのでは…?

「みんな!大丈夫!?今出してあげるから!」

ラーナは運搬車に捕らえられた仲間の元に駆け寄った。
エルフの仲間たちは未だに怯えた顔をしている。
すると運搬車の中から

「ラーナ!早く逃げなさい!!」

と声がした。

「…え?なんで?敵は全部倒したよ?」

「違う!違うの!まだ残ってる!あいつが残ってるのよ!!」

あいつ?あいつってなんだ?
そう考えていると

「……あぁ?なんか騒がしいと思って出てきたら、全員死んでんじゃねーか」

と言いながら恰幅のいいおっさんが民家の中から出てきた。

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