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覚醒
しおりを挟む「お前らが殺したのか?」
巨大な大太刀を背負ったおっさんが話しかけてくる。
「そうだとしたら?」
「まぁ別に仇を取ってお前らを殺すとかはしないけどな。こいつらは自分が弱いから死んだだけだしな」
あれ、意外とドライなタイプなのか?
「ただな…俺の邪魔をしたことについてはきっちりと落とし前つけてもらうがな」
「邪魔ですって!?勝手に村に攻撃するしてきたのはそっちじゃない!」
「ああ、違う違う。そういう意味じゃない。今俺が怒ってるのはな……」
おっさんは少しためて
「俺の夢だった美人エルフに囲まれて楽しく酒を飲んでる時に邪魔しやがって!という意味だ」
………はい?
僕はおっさんが言っている意味が分からない。
ラーナも隣でポカーンとしている。
「ふふ、驚いて声も出ないようだな」
「違うわよ!呆れてものが言えないだけよ!もしかしてそのために攻めてきたとか言わないわよね…?」
「もちろんそれも理由の一つだな」
「……こんなやつに私たち負けたの…?」
ラーナの顔が絶望にそまっていく。
おっさんただの変態じゃないか…
同情するよラーナ…
「だがな、エルフを奴隷として売りさばくことが一番の目的だ。美人エルフは俺のもの、それ以外は商品だ!」
ガハハと笑うおっさん。
「絶対に許さない!!あなたは私が殺す!!」
ラーナが弓を構え、矢を放つ。
「おいおい…いきなり危ないじゃねぇか…」
おっさんは飛んできた矢を片手で掴み捨てる。
「な、なんで!今私強化されてるはずなのに!」
2度、3度と矢を放つが全て掴まれている。
「…俺の部下たちを殺ったやつだからそれなりに強いのかと思ったんだがな…期待外れだわ。お前美人だし俺の部下兼性奴隷にしてやろうかと思ったがやめだ」
「な、なんですって!」
するとおっさんは背負っていた大太刀を抜き、横振りに振った。
「きゃあッ!」
ラーナが吹き飛ばされた。
「安心しろ峰打ちだ。お前は可愛がってから殺す」
ラーナは気絶しているのか、動かない。
「可愛がってる時に邪魔されると萎えるからな…先に男の方殺しとくか」
おっさんが大太刀を肩に担ぎ僕に近寄ってくる。
僕は剣を構える。
「お、いいねぇ!やる気じゃねぇか!少しは楽しませてくれよっと!」
おっさんが大太刀を振る。
大振りの太刀だ。かわせば隙ができるはず!
僕は横振りに振られた太刀を飛んで回避し、おっさんとの距離を詰める。
今なら切り込める!
「いい反応だ。だがなまだ甘い!」
切り込んだ僕の腹部をおっさんは前蹴りで蹴り飛ばした。
「グハァッ!」
僕はそのまま後ろに転がっていく。
「この程度でへばるなよ…坊主。まだ俺は物足りないぜ…」
なんとか立ち上がったものの、今の蹴りがかなり効いている。
立っているのがやっとだ。
「…ふらふらじゃねぇか…つまんね。お前もう死ねよ」
太刀を振るおっさん。
なんとか剣で防ぐも勢いを殺せず森の中まで吹き飛ばされた。
「はっ!ホームランだ!……さて、女の方を楽しむとでもするか」
ーーー
ーー
ー
「カハッ!」
なんとか生きている。
だが立ち上がれない。
体に力が入らない。
あぁ、僕はこのまま死ぬのだろう。
少し頼りにされたくらいで浮かれてた罰かな…
僕の力はただ仲間を強化するだけ。
結局僕は強い人がいないと役に立たない。
僕にもっと力があれば…
仲間を助けられる力があれば…
『ならばあなたが勇者になりなさい』
だれだ…?
どこかから声がした。
『あなたが勇者となり皆を救いなさい』
……無理だよ。
僕は勇者支えることはできても自分が勇者になることはできないよ。
『では諦めるのですか?あなたを頼ってくれた人を見捨てて生きるのですか?』
…だってしょうがないじゃないか…
僕には戦う力がないんだから
『いいえ、あなたは力を持っています。勇者の本当の意味に気づいたあなたならその力を使えます』
勇者の本当の意味…
僕が勇敢に立ち向かえば力が手に入るの?
『それが分かったならば立ち上がるのです。そして叫びなさい』
急に体に力が戻る。
僕は立ち上がり叫ぶ。
「僕を勇者にしてくれ!!」
体が光に包まれた。
◇
「…おい、起きろ。ったく、俺は寝てる女を犯すのは好きじゃねぇんだわ」
おっさんがラーナの腹を蹴った。
「カハッ!ゲホッ!ゲホッ!」
「さぁ、始めようか。しっかり可愛がってやるからせいぜいいい声で鳴けよ」
おっさんがラーナの服を掴む。
助けて…オリト!!
ドオォォオオン
「あ?なんだ?」
音の方を見ると青い光の柱が森から出ている。
「な…に?」
そして森から青い光に包まれたオリトが出てきた。
「おいおい!生きてんじゃねぇか!!いいな!坊主」
おっさんが太刀を持ち立ち上がった。
「俺は図太いやつが大好きなんだ!さぁ第二ラウンドと行こうぜ!」
太刀を構え、攻撃の体制をとる。
「どっからでもかかってきな!」
「うおぉぉぉぉお!!」
剣を構えておっさんに突っ込む。
「っしゃあら!」
太刀を振るおっさん。
僕は太刀を避け懐に入る。
前蹴りが飛んでくるが回転してそれを避け、背後に回り込み背中に剣を振るった。
「ってぇ!いてーな!坊主!!」
再び太刀が飛んでくるが…
「遅いっ!」
縦に振るわれた太刀を右ステップで回避し、右わき腹を斬りつける。
「…クソがっ!さっきまでとは別人じゃねぇか!」
乱雑に太刀が振るわれるようになる。
そうなると隙ができる。
今の僕ならその隙を見逃すことはない!
「うらぁ!」
2度3度とおっさんを斬る。
ついにおっさんが膝をついた。
「はぁ…はぁ…な、なんなんだよ!お前!ふざけんな!俺はこんなところで死ぬ男じゃ、死んでいい男じゃねぇんだ!」
「おっさん、あんたは人の道を踏み外してるんだ。だから…ここで死ぬしかないんだよ!」
ザクッ!
僕の剣がおっさんを貫く。
「ぐはっ!!」
おっさんは倒れこみ動かなくなった。
「…かっ、勝った…のか?」
僕は地面に座り込んだ。
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