能力が『勇者をしじする者』の僕なのですが、勇者パーティをクビになりました!

トリノ

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エルフの聖剣

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オリトがエルフの村で目覚めた頃、勇者パーティは街の宿屋にいた。

「クソッ!なんで火龍程度に苦戦するんだよ!」

カイザールが机をバンッと叩く。

「お前らがもっとちゃんと働かないからこうなるんだ!」

「そんなことないニャ!私たちはちゃんといつも通りに動いてたニャ!」

と勇者パーティの一員で、猫人族の武闘家ネコルは言った。

「じゃあどうして苦戦するんだよ!?」

「……オリトがいないから…」

私はそう言う。

「そんなはずがあるかマリーナ!あんな雑魚いてもいなくても変わらないだろう!あいつはもともと強い俺の能力を少し強くするだけの能力だろうが!」

「……はぁ」

私はため息をつく。
もともと強い?カイザールは勇者の能力を持っているだけの男だ。
戦う力なんてそんなに強くない。
今明らかにパーティの足を引っ張っているのはカイザールだ。

「でもマリーナの言うことも一理あると思います。オリトはあなただけではなく、私たちも強化されていましたから」

プリーストのメイアがそう言った。

「メイア!お前までもがそんなことを言うのか!?じゃあ何か?俺の判断が間違っていたとでも言うのか?勇者であるこの俺の!」

「そうとまでは言いませんが…」

メイアが困った顔をしている。
そしてしばらく沈黙が続いていた時、近くにいた老人が声をかけてきた。

「お前さんたち勇者様御一行なのかい?」

「その通りだがなんだよじーさん」

「少し話は聞かせてもらったんだがね…お前さんたち勇者装備のことは知らんのかな?」

「勇者装備だと!?詳しく話せ!」

「先代の勇者が魔王を討伐した後、自分の装備をお世話になった人たちの元に預けたという話があってだね、実はこの近くにも1つあるのじゃよ」

「どこだ!?教えてくれ!」

カイザールはお祖父さんの肩を掴む。

「エルフの村じゃよ。噂じゃと、この街の北側にある森の中にエルフの村があるそうなのじゃが、そこに勇者の装備の1つが預けられているそうなのじゃ。あくまで噂なのじゃがな」

「エルフの村…ね。にわかに信じがたいが?」

「街の人間は誰も信じてはおらぬのじゃがな、わしは昔一度だけ森でエルフにあったことがあるのじゃよ」

「北の森だな?おいお前ら!明日から北の森を探索してエルフの村を見つけるぞ」

「…まぁ、仕方ないかニャー。それでカイザールが強くなるなら良いことだし」

ネコルがそう言う。
私とメイアは無言で頷く。

「じゃあ決まりだな!強い俺がさらに強くなるとか!楽しみだな!!ガハハッ!」

高笑いするカイザール。
私は再びため息が出た。

「もうこのパーティ抜けたいわ…オリト…」





「オリトは式典の後はどうするの?」

目覚めた次の日の朝ラーナが僕にそう聞いた。

「そうだな…ひとまずは冒険者になろうと思うよ。お金を稼がないと生きていけないし」

「そうなんだ…ねぇ、私もついて行ってもいい?」

ラーナがそう言った。

「僕は構わないけど…でも村のことは大丈夫なの?復興とか」

「そうなんだけど…私オリトと一緒にいたいの!」

「えっ…それはどういう…」

「か、勘違いしないでよね!オリトと一緒に旅をしたいって言う意味だから!」

顔を真っ赤にしてラーナが言った。
なんだ…やっぱりそういうことか…
ちょっと期待してしまったよ…

「じゃあ一緒に行こう!でも村長に許可はもらいに行こうね」

「そうね!じゃあ改めてよろしくねオリト!」

笑顔で手を差し出すラーナ。

「こちらこそよろしくラーナ!」

ラーナの手を取り握手をした。

こうして僕とラーナは仮のパーティから本当のパーティになった。





式典の日、僕は村の中央部に建てられたステージの上にいた。
その前には村人が集まっている。そしてみんな僕を見ている。恥ずかしい…
しばらくすると村長がステージに上がり話を始めた。

「みな、今日はよく集まってくれた。今回のことは我らエルフの村できて以来初めての災厄であった。勇敢に戦った我らの同胞も多くの者が犠牲となってしまった。しかし、我々は生き残れた。村も滅ぼされなかった。そう村に駆けつけてくださったオリト殿のおかげでな!」

僕は座っていた椅子から立ち上がって一礼する。
すると拍手とともに僕を賞賛する声が上がった。

「そして今ここに我らエルフに先代の勇者様から預けられ、代々受け継がれているエルフの聖剣がある。これは勇者様から次の勇者が現れた際に渡すよう言われたものである」

あれ?一昨日そんなことを言ってなかったよな…

「この聖剣は村を救ってくれた勇者であるオリト殿に渡そうと思うが、どうだろう!」

うぉー!と声が上がる。

「うむ!ならばオリト殿こちらへ」

「はい!」

「この度は村を救ってくれてありがとう。真の勇者様これを受け取ってくだされ」

「ありがたく頂戴します!」

僕は剣を受け取りそして空に掲げた。

村人から歓声が上がる。

「では、オリト殿。何か一言お願いしますぞ」

「…皆さん!僕はこの剣に恥じないように強くなろうと思います!そして再びエルフの村に危機が訪れた時にはすぐに駆けつけます!」

「うむ!では、これで式典を終了する!」

村長がそういうと村人は解散していく。
そして剣を受け取った僕はエルフの村の勇者になったのだった。





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