能力が『勇者をしじする者』の僕なのですが、勇者パーティをクビになりました!

トリノ

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「ほんとに森の中にエルフの村なんてあるのかにゃー?もう疲れたにゃ」

ネコルがそう言った。

「勇者である俺が強くなるためには必要なことなんだ!だから探すしかねぇだろ!」

カイザールもイライラしている。

「…はぁ、めんどくさいわ…」

オリトが抜けてから私ため息がとまらない。

「カイザールさん、あちらに結界があります。もしかすれば何かあるかもしれませんよ」

「なに!?でかしたメイア!」

カイザールがメイアが指さしたほうに走り出した。

「なにもないじゃないか!」

この勇者はバカなのだろうか。

「いえ結界があるのは間違いありません。解除してみます」

メイアが呪文を唱え始めた。

「………ダメですね」

「なんだよ、できないのかよ!」

「見たことがない魔法がかけられています。マリーナさん見てもらえませんか?」

「分かったわ」

私はメイアがいた場所に行く。

そこにはたしかに見えない壁があった。
そしてやはり見たことのない魔法だ。

「…私も無理ね」

「はぁ!ふざけんなよ!なんとかしろよ!」

「あのね…できないものはできないの!何もできないのはあなたも一緒でしょ!」

「俺に口答えするな!俺は勇者だぞ!」

「何もできない勇者のくせして笑わせないで!」

「なんだと!マリーナいい加減にしろよ!お前もパーティから追い出すぞ!」

「ええ、ちょうどいいわ。もうあなたといるのは我慢できなかったから」

私はカイザールに背を向けその場を去ろうとする。

「おい!ちょっと待てよ!」

「なに?もう関わりたくないんだけど?」

「装備は置いて行けよ。それは俺のもんだろ?」

この勇者は頭がおかしいのだろうか。

「装備は私のものだし、置いて行く義理もないわね。それじゃあね」

今度こそ私のその場を去る。

ちょうどその時だった。

結界から人が出てきたのは。





「じゃあラーナそろそろ行こうか」

旅の支度を終え、村長たちにも挨拶を済ませたし、後は旅立つだけだ。

「そうね、行きましょう!」

僕たちはエルフの村の端、結界が張られているところまで来た。

「待って、外に人がいるわ」

確かに外に人がいるのだが…あれは…

「カイザールだ」

勇者が外にいた。

「あれが勇者なのね…なんかパッとしないわね」

ラーナがそう言う。結構厳しいことを言うのね。

「エルフの村がバレるのは良くないよね。少し待とうか」

僕たちは結界の前で少し待つ。

「あれ?あの女の人結界に触れてるわよ?」

メイアが結界に触れている。

「もしかしたら結界はバレてるのかもしれないね」

「ええ、でも絶対に破れないわ。この結界は古代エルフに伝わる魔法でエルフ以外には使えない魔法だから」

しばらく結界に触っていたメイアだったが結界を解除できなかったのか下がっていった。

マリーナも同じように結界に触れ、解除できないと分かると下がっていった。

そしてカイザールとマリーナが喧嘩を始め、マリーナが去って行く。

「ねぇ、少し様子がおかしいよね?」

「ラーナごめん。外に出るね」

僕は結界の外に出た。





「な、なんでお前がそこから出てくるんだオリト!」

カイザールが驚いている。

他の元パーティメンバーも同様に。

「なんでって…特に理由はないけど?」

「はぁ?理由がないだと!?てか、どうやって入ったんだ?」

「どうやってって言われても…」

僕が答えに困っていると

「オリト、大丈夫?」

ラーナが結界の中から出てきた。

「なっ、エ、エルフだと…!?じゃあやっぱりここがエルフの村か!」

とカイザールは言った。

「ところでカイザールたちはこんなところで何してるの?」

「あぁ?お前には関係ないだろ…と言いたいところだが、俺たちはエルフの村に用事があってきたんだが、この結界のせいで中に入れなくて困っていたんだよ。でもお前が出てきて助かったぜ。じゃあ早くエルフの村に入れてくれよ」

カイザールがそう言うと、

「あなたを村には入れないわ」

と、僕の隣にいたラーナがそう言った。

「あ?なんだと?俺は勇者だぞ?お前勇者の指示に従えないのか?」

「私にはあなたが勇者に見えないって言うか…趣味の悪い鎧をつけた残念な人にしか思えないんだけど」

ラーナがそう言うと周りのパーティメンバーが吹き出した。

「な、なんだと…!てめぇ舐めてんのか!?」

「舐めてるも何も…あなた弱そうなんだもの」

カイザールは顔を真っ赤にしている。

「カイザールさん抑えてください。あのエルフの機嫌を取らないと村には入れませんよ?」

メイアがそう言う。

「ねぇ、メイア。カイザールの目的ってなんなの?」

「オリトさんは勇者装備というものはご存知ですか?私たちは偶然街でエルフの村に勇者装備があると聞きましたのでここにきたのです」

「勇者装備…」

おそらく僕がエルフの村でもらった聖剣のことだろう。
ラーナもそのことに気づいたのか

「エルフの聖剣のことね。でもねもうそれは村にはないわ」

と言った。

「なんだと?じゃあ今どこにあるんだ!」

「どこってあなたの目の前にあるわよ?」

「目の前だと…?」

「ええ、エルフの聖剣はエルフの村の勇者であるオリトの物になったのよ」

「な、なんだと…こいつが勇者だと!?笑わせんな!こいつは俺がいないとなんの役にも立たないクズじゃないか!」

「何を言ってるのかしら?オリトはあなたがいなくても強いわよ?私たちの村も救ってくれた勇者をバカにするのは許さないわよ」

「おい!オリト!その剣をよこせ!その剣は俺のものなんだよ!」

ラーナから標的が僕に変わった。

「渡せと言われても…それはできないよ…」

「ふざけんな!お前は俺に従えばいいんだよ!」

「いやだ!僕はもうカイザールには従わない!従う理由がない!この剣は僕がエルフからもらったものなんだ!」

「…分かったよ…どうしてもよこさねーってんなら…」

カイザールが少し間をあけ

「お前を殺して手に入れるわ」

そう言って剣を抜いた。
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