能力が『勇者をしじする者』の僕なのですが、勇者パーティをクビになりました!

トリノ

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交渉

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「で、お前たちはどこでその情報を手に入れたんだ?」

オリトたちの目の前にいるカッペリーニア国王はそう問った。

オリトたちが国王に会うまではトントン拍子で話が進んでいった。
門兵に話しかけると、すぐ中に入れてくれた。
おそらくキコを連れているのでオリトたちを奴隷商人と勘違いしたのだろう。
そのまま門兵に王の部屋に案内され、カッペリーニア国王に会うこととなった。

最初は国王も奴隷商人と思ったのか、どこでキコを手に入れたかなどと聞いてきたが、エルフの子供を返して欲しいという話をした途端、雰囲気が変わった。

「街の噂で聞きました。王宮に耳の長い女の子が入っていくのを見たと。耳が長い種族といえばエルフと思いましたのでこうして参った次第です。私たちは彼女の仲間達を探しているのです。だから少しでもエルフの情報があれば確認しているのです」

オリトが昨日考えていた内容通りの受け答えをしたが、

「少年、嘘はいいぞ。大方どこかの商人から聞いたのだろう?エルフのお嬢さんを連れているところを見ると後半部分はあながち嘘じゃないんだろうがな」

カッペリーニア国王は全てを見通しているかのようだ。

「まぁ、ここにエルフの子供はいる。俺がとして預かっている奴がな。そいつは孤児だでな、俺は可哀想な子供を見るとついつい自分の子供にしてしまうんだ」

カッペリーニア国王は奴隷としてではなくあくまで娘として預かっていると言った。

「ではその子に合わせてはもらえませんか?僕たちが探している子なのか確認させてください」

「いや、だめだ。お前たちが信頼できる人物とは思えない。もしかしたら娘を攫うんじゃないかと不安で仕方がない。その龍族の子供も攫ってきたのだろう?」

キコを指差しニヤリと笑う。

「な!違います!キコは誘拐されているところにたまたま出くわして保護したんです」

「保護ね…じゃあ俺が預かってやってもいいぞ?俺は孤児院を経営しているからな。その子供もそこで幸せに暮らせるんだ。悪い話ではないだろう」

いいように言ってキコを手に入れようとしてくる。
それだけ国王にとってキコは喉から手が出るほどほしいのだろう。
だがこの変態には渡せない。

「お断りします。キコは僕たちから離れることを望んでいませんし…正直あなたは信用できない」

後ろにいる2人も嫌悪感を示している。

「……そうか、なら仕方ねぇな。とっとと帰んな、お前たちとの話はこれでしめーだ。……まぁ無事に帰れればの話だけどな」

国王がそう言うと部屋の入り口の扉が開けられ、兵士が流れ込んでくる。
たちまちオリトたちは四方を兵士に囲まれて槍を向けられる。

「悪く思うなよ。俺は善政をひく国王だから悪い噂を外に漏らすわけにはいかないってわけだ。てわけで、お前たち人間の2人にはここで消えてもらう。エルフの嬢ちゃんと龍族の子は捕らえて可愛がってやるからな」

「できるものならなってみなさいよ…『迅雷』!」

マリーナ得意の高速範囲魔法『迅雷』。
これなら四方を囲まれた状態を打破できるはず…はずなのだが…

「魔法が発動しない!?」

「当たり前だろう!この部屋には魔法無効化の結界が張ってあるのだからな!」

魔法が発動しないのであればマリーナは無力になる。
至近距離で人数が多い状態ではラーナも力を発揮できない。

「さぁ兵士諸君!何もできない可哀想な連中を可愛がってあげるんだ!」

兵士達の声とともに四方から一斉に槍が突き出される。

「みんな!僕に捕まって!!『僕を勇者にしてくれ!!』」

オリトの能力発動とともに生じた光と風圧で一瞬兵士達の動きが止まった。
勇者化したオリトはその隙を逃さない。

『疾風斬!』

素早くエルフの聖剣を抜き、風を纏わせた剣を回転斬りの要領で振るう。
オリトの回転によって生じた風は囲んでいた兵士達を一瞬にして吹き飛ばした。

「……ほぉ、雑兵とはいえ一瞬か。なかなかやるではないか」

国王は風圧を受けながらも全く怯まず仁王立ちのまま佇んでいる。

「仕方ねぇ、俺が相手してやるよ。お前俺が巷でなんて呼ばれてるか知ってるか?天下無双なんて呼ばれてんだぜ。だからまぁ…それなりの覚悟で挑んでこいよ」

国王がそう言った瞬間、空気が重くなった。

殺気

国王から放たれる圧倒的な殺気にオリトは息を飲んだ。

「おいおいこの程度でビビられたんじゃ話になんねぇぞ…ほらいくぞ!!」

金色の剣を正面に構えていた国王がオリトの目の前から瞬時に消えた。

「こっちだ少年!」

消えたように見えた国王はオリトの右側に現れ剣を振りかぶっている。
オリトはなんとか聖剣で防ぐ。

ガキッ!

「その態勢で受けるとはなかなかやるな少年…だが!」

左足を軸にして回転し右足が新たな腹部を捉える。

「ぐふっ…!」

腹部に蹴りをまともに食らったオリトは勢いのまま壁の方に飛ばされる。

「まだ終わらんぞ!」

国王はダン!という足音とともに再び姿を消し、そして飛んでいくオリトに追いつき、その背中にかかと落としを決め、地面に叩きつけられる。

「軟弱だ…嘆かわしい。期待した私がバカであった…ぬ?」

バシッと国王が死角から飛んできた矢を掴む。

「ぬるいわ、エルフの嬢ちゃん。その程度の矢で俺を射抜くことはできぬよ…さて、そろそろトドメといこうか少年!」

金色の剣を両手で握り、地面に倒れるオリトに向かって突き刺すように下ろした。

「次があればもっと楽しませてくれよ…少年」
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