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カッペリーニア王国到着
しおりを挟むおじさんの一件があってから2日後、オリト一行はカッペリーニア王国に到着した。
「「うみー!!!」」
カッペリーニアに着いてからというもの、ラーナとキコは初めて見る海に興奮していた。
本来であればこのまま海に行って楽しみたいところではあるのだが、そうはいかない。
「ではオリト殿我が商会にご案内いたしますぞ!」
おじさんの案内でオリトたちは街の中心部に向かった。
カッペリーニアに着くまでの2日間、おじさんとはいろんな話をした。
勇者パーティにいたこと、クビになったこと、勇者装備について…
おじさんも商会のことやカッペリーニアのことを話してくれた。
話をしていく中で、おじさんは奴隷商人をしている以外は至極まっとうな人間であることが分かった。
孤児院の支援や、託児所の設置、商人会の設立などに携わり、カッペリーニアではかなりの有名人らしい。
「私ほど善人な商人はいませんぞ!ヨホホ!!」
自分で言うくらいだから自信があるのだろう。
じゃあ奴隷商人なんかすんなよ!と心の中で突っ込みつつ、しかしかなり信頼の置ける人物なのだということが分かった。
おじさんについて街を歩くと、やはり一大観光地であるカッペリーニア。
観光客であふれ、商人たちが客争いをし、街は活気で溢れている。
こんな国を作った王が奴隷を買っているなんて信じられないくらいに。
そして街の中心部に一際目立つ大きな建物がある。
「さぁ、ここが我が商会『クオリア商会』でございますぞ!」
おじさんが誇らしげに胸を張った。
◇◆◇◆
「あ、キカンさん、お帰りなさいです!そちらの皆さんは?」
クオリア商会の建物に入ると小柄な女の子がおじさんに声をかける。
ちなみにキカンとはおじさんの名前だ。
『キカン クオリア』というらしい。
「ジルネ帰りましたぞ!こちらは私のお客様ですぞ。ザルネに我が商会1番の宿の部屋を確保するように伝えるのですぞ!」
「分かったのです!」
ジルネは商会の奥に走っていった。
「おじさん、僕たちは普通の宿でいいですよ!」
「なに、遠慮なさるなですぞ!オリト殿達には命を救ってもらった恩がありますぞこれは私からのお礼なのですぞ!我ら商会は恩には最大の礼を返すと決まっておりますぞ」
「キカンさんー、海沿いの宿の最上階が空いてるからそこを使ってってザルネお姉ちゃんが言ってたのです!」
「ではそこをしばらくの間押さえておくのですぞ!」
「分かったのです!」
「……いいのかな…?」
「いいじゃない、宿を探す手間も省けたんだし、お金もかからないんだから…それに」
マリーナがラーナの方を見る。
するとそこには海沿いの宿と聞いて目を輝かせているラーナがいた。
「あの顔を見たら断れないわよ」
「だね…」
オリトたちはキカンが用意した宿へと向かった。
◇◆◇◆
「うーん!海からの風が気持ちいい!!潮の香りってこんな感じなのね!」
「うみーー!!!」
「こら、キコちゃん。あんまり身を乗り出すと落ちるわよ」
ラーナたちは部屋に入ってすぐ窓の方に駆け寄り、海を眺めている。
「ねぇ!オリトもこっちに来なよ!いい眺めよ!」
「………」
「どうしたのオリト?」
マリーナがオリトに問いかけた。
「いやさ…僕前にも言ったよね…」
なにを?と首を傾げる女性陣。
「だからなんでまたみんなと同じ部屋なんだよー!」
「「別にいいじゃない、オリトなんだし」」
2人の見事に被ったセリフ。
僕、男と思われてないのかな…
「いや、2人が気にしなくても僕が気にするよ…」
初めは2部屋用意してくれていたキカンであったが、オリトの知らないところで変更があったらしく1部屋になっていた。
おそらくラーナかマリーナか…もしくは両方か。
「まぁ急な変更なんだから文句は言えないわよ。そう、急なね」
そういうマリーナの隣でラーナがウンウンと頷いている。
あ、絶対2人が犯人だ。
「キコちゃんもいるんだし、今回は諦めなさいよオリト」
キコは出会ってからというものオリトにべったりだ。
だからキコを引き合いに出されるとなにも言えない。
「…仕方ないか。キコのだめだもんね」
「そうよ、仕方ないのよ」
今回はキコのためにも折れることにしよう。
オリトはベットに腰を下ろした。
「で、これからのことなんだけど、明日にでも国王に会いにいこうと思うんだけど」
「そう簡単に謁見できるのかしら」
「そこはおそらく大丈夫よ。だって国王は私たちに会わないわけにはいかないから」
「どうして?」
「国王の秘密をしっているのよ?その人の素性やどこで知ったかとかを調べないといけないじゃない。ただ門前払いされる可能性もないことはないけど」
「僕もそこはあんまり心配してなかった。だけどその後かな大変なのは。キカンさんの名前を出さずに、事情を説明しないといけないし、交渉が決裂した場合は最悪僕たち殺されるかもしれないから」
「口封じってわけね」
「そうなった場合、エルフの子を助けるなら僕たちはカッペリーニア王国全体を敵に回さないといけなくなるっていう結構厳しい条件もある」
国民全てが敵に回るのは恐ろしい。
無事王国から逃げられるかも分からない。
「だけど僕たちはやらないといけない。絶対に助けたいから。だから明日国王に会おう」
オリトたちは明日に備えて眠りについた。
一抹の不安を抱えながら……
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