能力が『勇者をしじする者』の僕なのですが、勇者パーティをクビになりました!

トリノ

文字の大きさ
15 / 18

国王

しおりを挟む

「国王だって!?」

おじさんの言ったことにオリトたちは驚きの声をあげた。

「カッペリーニア王国の国王って国民思いな国王としてかなり有名だったよね?」

「そのはずよ。税もかなり低く設定してあるし、商人たちにも自由に商売をさせてる。カッペリーニア王国をいちだい観光地にしたのも彼の手腕だって言われてるくらいだし。奴隷制にも厳しくなかったかしら…」

今までのオリトたちが知っている評判だけだと、カッペリーニア王国の国王に悪い噂はない。
このおじさんが嘘を言っている可能性もあるが、この状況で嘘は言わないだろうし、国王が顧客だとすればおじさんが言ったら殺されるというのにも合点がいく。

「国王は表向きは皆さんが知っている評判通りの方ですぞ。しかし、本当の国王は嘘にまみれたお方なのですぞ。国民には奴隷制を否定している姿を見せているのですが、その実自分は希少種を私たち奴隷商人から買い集めているのですぞ」

観念したおじさんはカッペリーニア王国のことについて話し始めた。

「国王は希少種を集めているのですぞ。それも国王が集めるのは女のしかも子供だけなのですぞ」

「その理由は?」

「国王は自分で彼女達を育てるのですぞ。そして育てていい歳になったところで……」

おじさんは少し間を置き

「自分の子を産ませるのですぞ」

おじさんが言った言葉にオリト達は再び衝撃を受ける。

「とんだ変態ね」

「ええ…気持ち悪い」

女性陣が完全に引いている。

「ところでそちらのお嬢さんはエルフですぞ?」

「そうだけど…なに?」

おじさんがそう聞くとラーナは嫌そうな顔で答えた。

「国王の奴隷の中にもエルフがいた気がしますぞ。ちょうど2週間ほど前にエルフ族が手に入ったらしいと同業者が言っていましたぞ」

「ラーナ、もしかしたら…」

「ええ、おそらく連れ去られたエルフ族の1人で間違いないでしょうね」

エルフの村で助けたエルフは第二陣だったらしく、数人のエルフはすでに出荷されたあとだった。

「エルフ族の娘を取り戻すつもりですぞ?」

「当たり前じゃない!同族の仲間をそんな変態のところに置いておくなんてできないわ!」

「それは分かっているのですぞ。しかし、カッペリーニア国王から取り戻すのは不可能に近いと思いますぞ?」

「どうして?」

「まず国王は悪政を引いていないので国民の協力は得られないですぞ。次に国王は天下無双の武と言われるほどの実力を持っていますぞ」

たしかにカッペリーニア王国の国王が悪政を引いていたならば国民の協力も得られただろう。だが国民の協力を得られなくても協力を得られそうな人たちをオリトは思いついた。

「国王が奴隷にしている人たちに協力は得られないかな?彼女達なら協力してくれそうな気がするんだけど」

「それは無理でございますぞ」

オリトの意見をおじさんはすぐに否定した。

「どうして?彼女達は無理矢理子供を産ませてるんじゃないの?」

「…違いますぞ。彼女達は自ら進んで国王の子を授かりたいと思っているのです。奴隷として売られた自分を不自由なく育ててくれた国王のことを好きになるってしまうのですぞ」

「たしかにそうかもしれないわね…どれだけ不当に扱われたとしてもなにも言えないのが奴隷だから」

その話を聞いてオリトはふと思った。

「そんな国王なら話せばエルフの子を返してくれるんじゃないかな?」

「甘いですぞ、オリト殿」

しかしおじさんはすぐに否定する。

「国王は絶対に希少種を手放しませんぞ。オリト殿は国王が子を産ませる理由はなんだと思うですぞ?」

オリト少し考える。
希少種に子供を産ませて国王は何の得があるか。
ただ珍しい子供がほしい?
それとも何かに利用できる?
例えば…

「産ませた子供を売り払うとか…?」

「確かにその考えもありえない話ではないですが、違いますぞ。国王の最大の目的は……希少種の力を持った兵隊をつくることなのですぞ」

「兵隊………」

希少種はそれぞれ何かしらの秀でた能力を持っている。
国王はその能力を子供に引き継がせ兵隊にしているというのか。

「でもなんの目的で国王は兵隊を作っているのかしら?」

「これは私の仮定の話ですが、国王は近い将来戦争を起こそうとしているのではないかと考えますぞ。国民の評判を得て、希少種の能力を持った兵隊を作り、軍の調練のレベルも上げているのですぞ。そこから導き出されるのはおそらく戦争ということですぞ」

「あながち外れた話ではなさそうね」

「だから身体能力に秀でたエルフ族の子供は絶対に手放しはしないですぞ」

そう言ったおじさんの言葉はオリト達にはかなり厳しい言葉となった。
エルフの子を村に帰してあげたいのはやまやまだが、状況が悪すぎるのだ。

「でも、やっぱり諦められないよ。だからとりあえず国王に会って返してもらえないか交渉してみよう」

「そうね…ラーナさんのためでもあるしね…危険かもしれないけど行きましょうか」

「2人ともありがとう!」

オリト達は王宮に行くことに決めた。

「ところでおじさんはどうするの?」

「あー、それなんだけど…縄解いてあげてもいいんじゃないかな?もう逃げられても大丈夫だし」

「私はもう逃げませんし、オリト殿達に反抗もしませんぞ。その代わりと言ってはなんですが私もカッペリーニアまで同行してもいいですぞ?我が商会は裏向きは奴隷商会ではありますが、表向きは結構繁盛している商会なのですぞ。同行を許可してくださるならお迎えしますぞ?」

「どうする?僕は別にいいけど」

オリトがそういうと、2人とも構わないと返答した。

「じゃあおじさん、カッペリーニアまでよろしくね」

「こちらこそお願いするですぞ」

カッペリーニアまでおじさんが仲間になった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...