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おじさんと幼女
しおりを挟む「は、ははっ、なにをおっしゃっているのですかな?私はただの商人でございますぞ?」
引きつった笑い顔でおっさんが言った。
「それにしてはおかしな荷馬車だよね?中に誰かいるの?」
「中には誰もいませんぞ!ではこれが助けていただいたお礼ですぞ!それではさいなら!」
腰を抜かしていたはずのおっさんは這いながら荷馬車のところいき、馬車を走らせ始めた。
その時荷馬車の小窓から小さな手がのぞいた。
「中に人がいる!おそらく奴隷商人だ!」
「ヨホホホ!!逃げてしまえばこっちのもんですぞ!追いつけるものなら追いついてみるのですぞ!」
荷馬車は徐々に速度を上げ、オリトたちから離れていく。
「マリーナ!力を貸して!」
「ラーナさん?何をするの?」
「2つの車輪を同時に破壊するのよ!」
「なるほど、それはいいわ。やりましょう。オリト馬車の方に走って!」
「わかったよ!」
オリトは荷馬車に向かって走り出した。
そしてラーナは弓をマリーナは杖を構え、
「じゃあいくよ、マリーナ!」
「ええ、遅れないでねラーナさん!」
「「せーえのっ!」」
放たれた矢と魔法がオリトの脇を通り過ぎていった。
「まだ捕まるわけにはいきませんぞ!今回の商品は高く売れるのですぞ!…ん?何か後ろで音がするので……な、なんですぞーー!?」
放たれた矢と魔法は同時に馬車の車輪に命中した。
車輪を失った車体は真下に落ち、馬で引っ張ってもゴリゴリと地面を引きずる音しかしない。
「くそっ!捕まるわけにはいかないのですぞ!」
荷馬車を捨て、走って逃げようとするおっさんだったが……あまりにも遅過ぎて…オリトはすぐ追いついてしまった。
「もう逃さないぞ!大人しく観念するんだ!」
「くそー!!やめるのですぞ!離すのですぞ!」
おっさんを地面に抑えつけ、オリトはおっさんを捕らえた。
時期にラーナとマリーナがオリトのもとにかけつけ、ラーナが持っていた縄でおっさんをくくった。
「2人とも凄かったね!完璧な連携だよ!」
「上手くいってよかったわ!ありがとうマリーナ!」
「ええ、こちらこそ。いい作戦だったわ」
2人がハイタッチする。
「それはそうと荷馬車の中身はなんなんだろう?」
「とりあえず確認しましょう」
マリーナが荷馬車の鍵を壊し、扉を開ける。
すると中から出てきたのは
「女の子…?」
そこにはピンク髪の女の子がいた。
頭には立派な角が生えている。
「おにーちゃんだれ?」
「お、おにーちゃん!?僕のこと?」
「うん!おにーちゃん」
にぱっと笑う幼女。
か、かわいい…
「ねぇマリーナ。オリトってまさかのロリコン?」
「いや…そんな気配はなかったと思うんだけど…」
「でも、あの顔はやばいよね…」
「ええ、間違いないわね…オリトは私みたいな大人のお姉さんが好みだと思っていたんだけどな…」
2人がヒソヒソとしかしオリトに確実に聞こえるように話している。
「あのね、2人とも。何を勘違いしてるのか分からないけど僕はロリコンでもなんでもないからね?」
「……そういうことにしといてあげるわ」
「オリト、趣味は人それぞれよ。私は否定はしないから大丈夫よ。だだ大人の女性の方が魅力的なのよ」
2人とも話を聞いてくれない。
完全に僕をロリコン認定している。
「おにーちゃん…キー何か悪いことした…?」
涙目になっている幼女。
「「泣かした…」」
「僕のせい!?」
なんて理不尽!!
「えっとキーちゃん?お名前は言えるかな?」
ラーナがそう聞くと
「キーの名前?キーはキコっていうの!おねーちゃんは?」
「はうわ!何かの可愛さ…!おねーちゃんはね、ラーナっていうのよ」
「ラーナおねーちゃん!じゃああのおっぱいのおねーちゃんは?」
「私?私はマリーナよ」
「マリーナおねーちゃん!」
「……これはやばいわね…」
マリーナも悶えている。
非常に珍しい光景だ。
「で、おじさん?この子は?」
「はてさて私は知りませんぞ?」
「あらそう…じゃあ言いたくなるようにしようかしら」
マリーナはおじさんに炎を近づける。
「炎じゃなくて氷がいいなら言ってちょうだいね」
「も、燃えたくありませんぞ!氷漬けも嫌ですぞ!!」
「じゃあ素直に話しなさい。この子はどうしたの?」
「……この娘はボカロ山で1人で歩いていたところを捕まえたのですぞ。頭に生えた角は龍族の証ですぞ。だから高く売れると思ってカッペリーニア王国に向かっていたのですぞ。あそこには希少種を高く買い取ってくれるところがありますからな」
おじさんは観念したのか全てを話し始めた。
ボカロ山は僕たちが火龍を討伐していたところだ。
もしかしたらキコは…
「その高く買い取ってくれる場所っていうのは?」
「顧客の情報は言えないのですぞ……火!炎を近づけないでほしいのですぞ!!」
「だったら言いなさい」
マリーナは笑顔で炎をおじさんに近づけていく。
「い、言えないのですぞ!!言ったら私が殺されるでありますぞ!」
「言わないのね…じゃあ仕方がないわ」
マリーナはおじさんの服に炎を押し付ける。
「あ、熱いですぞ!!燃えているでありますぞ!!消してほしいですぞ!!」
「消してほしい?じゃあ消してあげる」
マリーナはおじさんに水魔法をぶつけた。
たちまち炎は消え去る。
「た、助かったですぞ…」
「そう思うでしょ?実はそうはいかないのよね」
「え?」
マリーナは再び炎をおじさんに押し付けた。
「ぎ、ゃあ、なんでですぞ!!熱いーー!!!」
「あなたが顧客がだれか言うまで、燃やしては消してを繰り返すわ。あなたが死ぬまでね」
おじさんが絶望的な顔をしているのは言うまでもないが、それとは対照的にマリーナの顔は笑っていた。
こうなったマリーナはオリトでも止めることができない。
マリーナはたまにスイッチが入ることがある。
今までも一緒に冒険していて数回こう言うことがあった。
マリーナはこの状態のことは話したがらないので聞いたことはないが、おそらく彼女の過去に関係があるのではないかとオリトは思っている。
「さぁ、苦しみながら死ぬかそれともここで話すかどちらにするのかしら!!」
「分かりました!分かりましたぞ!言います、言いますから助けてくださいですぞ!!」
ここでおじさんが折れた。
流石にこの拷問に耐えることができないと思ったのだろう。
「あら、もう折れたの…面白くないわね。まだたくさん手は残っていたのに…」
笑顔が残念そうな顔に変わった。
「はぁ…はぁ…」
おじさんは炎が消え心底安心した顔をしている。
「で、顧客はだれなの?」
マリーナが炎を見せながらおじさんに問った。
おじさんは後ずさりしたがら
「カッペリーニア王国の国王様ですぞ!!」
とカミングアウトしたのだった。
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