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いざ新たな街に!
しおりを挟むオリト一行はカナリア山脈から下山し、街に戻っていた。ちなみに帰り道出くわしたゴブリンはちゃんと狩ってクエストは達成している。
ギルドに着くと、ボロボロのオリトたちを見て、ラライが驚いた顔で
「何があったんですか!?」
と言いながらカウンターから身を乗り出してきた。
「いやー、ほんと偶然キングオークと遭遇してしまいまして……あ、これ討伐の証です」
そう言ってキングオークの角をカウンターに置いた。
「……たしかにキングオークの角ですが…元勇者パーティのお二人なら倒すのもありえない話ではないですけど………わざとじゃないですか?」
「え…?違いますよ!!ほんと偶然です!偶然!」
「……怪しい…まぁいいですけど、あまんり無茶してはダメですよ」
ため息をつくラライ。
「ではこちらがゴブリン討伐の報酬です。で、キングオーク討伐により、オリトさんたちオリト会のメンバーはBランクにランクアップします」
オリトたちは無事Bランクに上がることができた。
これで報酬のいいクエストが受けられる。
オリトたちがギルドから帰ろうとすると
「あ、そういえば」
とラライが何かを思い出し、オリトたちを止めた。
「どうかしましたか、ラライさん?」
「はい、カイザールさんがオリトさんたちを探しているらしいですよ。どうもいろんなところで聞いて回っているとか」
「そうなんですか?まぁ探している理由はなんとなくわかるけど…」
カイザールは間違いなくオリトが持つ勇者装備を奪うために探しているのだろう。
見つかったら面倒だ。
「ねぇ、オリト。カイザールに見つかると面倒になりそうだし、ホームタウン変える?」
「そうだね…変えるにしてもどこがいいかな?」
「ここから南に行ったところにあるカッぺリーニアなんてどうかしら。海と山に囲まれた街だし、いい場所よ」
「海!?私海に行ってみたいわ!!」
ラーナのテンションが上がる。
ずっと山の中でひっそりと暮らしていたラーナにとっては海を見るなど夢の話だった。
ラーナがオリトにキラキラした目を向けている。
「じゃあカッペリーニアに行こうか」
「やったー!!」
ラーナが飛び跳ねて喜んでいる。
「オリトさんたちホーム変えちゃうんですね…」
ラライが受付で少し残念そうにしている。
実はラライはマリーナの大ファンで、こうしてギルドでマリーナに会えることが楽しみだったりしていたのだ。
「また会いに来るからそう言わないで、ラライ」
マリーナがそっとラライの頭を撫でる。
「ほあー!!元気出ました!!これからも頑張れそうです!」
「じゃあラライさん、お世話になりました」
「ええ!皆さんお気をつけて!!」
ラライが手を振って見送ってくれた。
◇◆◇◆
街を出てからカッペリーニアへの道を進んでいると、荷馬車が盗賊に襲われていた。
「僕たちって本当によくこういう場面に遭遇するよね…ラーナと出会った時もそうだったけど」
「オリトはそういう運命のもとに生まれたのかもしれないね」
盗賊の数は少なくとも20人はいるだろう。
囲まれた荷馬車の護衛であっただろう甲冑を付けた男たちはすでに地面に血を流した状態で横たわっている。
生きているのは、おそらくこの荷馬車の持ち主であろう恰幅のいい男だけだった。
「あん?お前らなに見たんだよ?」
盗賊の1人がオリトたちに気づいた。
「死にたくなかったら、さっさと行きな!俺たちは奪う以外で人を殺さない善人な盗賊団だからな!」
奪ってる時点で善人ではないし、盗賊と名乗ってるのもおかしいだろ!というツッコミが喉元まで出ていたがぐっと飲み込み、そそくさと過ぎ去ろうとする。
荷馬車の形状を見たとき少し面倒ごとに巻き込まれそうな気がしたからだ。
その荷馬車は、どうやら荷物を運んでいるものではないと思われる。
「お、おい!君たち冒険者なんだろう?困っている人がいたら助けてくれるんじゃないのか!?」
過ぎ去ろうとしたオリトたちをおじさんが呼び止めた。
「れ、礼はする!だから助けてくれ!」
「お前ら、行くならさっさと行け!そしておっさんはいらんこと喋るんじゃねーよ!」
「ブヘラッ!」
盗賊がおっさんの腹部を思いっきり蹴った。
ゴロゴロと転がっていく。
「オリト…私このまま見過ごすのはちょっと後味悪いんだけど」
「僕もそうだけど…」
「私は関わらないのが吉だと思うわ。思うけど…ラーナさんの気持ちも分からなくないわ。礼はするって言ってるし、オリトのしたいようにすればいいと思うわよ」
「じゃあ一応助けますか…」
オリトたちは盗賊の方に向き、武器を構える。
「せっかく見逃してやるって言ってるのに、俺たちに武器を向けるとは、よほどのバカだな!たった3人でなにができる!?お前らやっちまえ!!」
盗賊たちの叫び声とともに戦闘が始まる。
「じゃあいくよ2人とも!!」
「「ええ!」」
「勇者よ!僕を守ってくれ!!そして僕を勇者にしてくれ!」
いつものようにオリトが能力を発動する。
それによりラーナとマリーナは強化され、オリト自身も勇者化すると、エルフの聖剣と勇者の腕輪が呼応し、オリト自身をさらに強化する。
オリトが能力を発動し終わると同時に、目の前には3人の盗賊が斬りかかってきていた。
上下横と3方向から見事な連携によって繰り出された剣をオリトはバックステップで回避し、足の踏ん張りを利用して前に飛び出て、3人のうちの1人に剣を突き出した。
剣を突き刺した男はすぐにその場に倒れたが、他の2人が再び剣をオリトな向けて振るおうとしていた。
しかし、その剣が振り下ろされることはなかった。
2人の頭には見事に矢が刺さっている。
もちろんラーナの弓術だ。
基本的に矢は一本ずつしか射ることはできない。
しかしラーナは一本射てから次の1射までの速さが尋常じゃない。
まるで2本同時に放ったかのような速さだった。
「ナイス!ラーナ!」
「ええ!フォローは任せて!」
そこからもオリトが斬り、背後から来る敵をラーナが仕留めるという見事な連携のもと次々と盗賊を倒していく。
「オリト!準備できたわ!一旦下がって」
マリーナから声がかかり、オリトは盗賊たちと距離をとる。
「警告するわ。私の炎は火傷じゃ済まないわよ?逃げるなら今のうちよ?」
「しゃらっくせー!!」
「そう、なら…『爆裂熱波』!!」
盗賊たちの足元に魔法陣が浮かび上がる。
さして次の瞬間には猛烈な熱と爆風が発生し、魔法陣内にいた盗賊たちは一瞬で灰となった。
「な、なんなんだよお前ら!!めちゃくちゃ過ぎんだろ!!」
盗賊の親方らしき人物が腰を抜かしたのか、地面を這いながら逃げようとしていた。
「逃さないわよ?『炎獄』」
「ぎゃあああついいぎゃー!!」
盗賊の親方は黒焦げになり、そのまま動かなくなった。
「これで終わりかな?おじさん大丈夫?」
「あ、あ、ああ、だだ大丈夫だよ…。き、君たちはいったい…」
オリトたちの戦いに圧倒されこちらも腰を抜かしているおじさん。
「僕たちはただの冒険者ですよ?ところでおじさん…もしかして悪い人?」
オリトは荷馬車の方を見てそう聞いた。
なぜなら確信したからだ。
荷馬車の…あの檻のような荷馬車の中身を。
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