25 / 32
第7章「ルルが笑った日」
第25話「ルルが笑った日」
しおりを挟む
森に、あたたかい風が吹きはじめていました。
春の匂いが土から立ちのぼって、木々のあいだから、やさしい光がこぼれています。
ルルは、すこしうつむきながら森の小道を歩いていました。
だけど、その足どりは、前よりもほんの少し、かるくなっているようでした。
ふと、林のむこうに、シカのミオの背中が見えました。
ミオは、いつもはしっかり者で、やさしくて、森の仲間たちからも頼られる存在。
でもその日は、ひとりきりで、しずかに立ちつくしていたのです。
ルルは、少しだけ迷って、それから……そっと、ミオの隣に座りました。
なにも言いません。
ただ、そばに座って、同じ空気をすいこんで、木の葉の音をきいていました。
ミオが、ふとつぶやきました。
「……だいじょうぶ、って言われるの、わたし、ちょっと苦手なんだよね」
ルルは、うなずきました。
自分もそうだったから。
「だいじょうぶじゃないときに、だいじょうぶって言われると……さみしくなるの。ちょっとだけ」
ミオの声は、とても小さくて、まるで風の音にまぎれてしまいそうでした。
ルルは、それでも、ただ聞いていました。
うんうんと、小さくうなずきながら。
やがてミオが、すこしだけ笑って言いました。
「……ルルって、やさしいね。なんにも言わないけど、いてくれる」
そのとき、ルルの顔にも、小さな笑みがこぼれました。
自分の「くろいはこ」が、まだ全部軽くなったわけじゃない。
でも、誰かのそばにいられるようになったことが、なんだか、うれしかったのです。
そのあと、ふたりは木の下に座って、しばらくのあいだ、なにも話さずに空を見ていました。
空には、やわらかな雲がゆっくり流れていって、
ルルの中の「しろいはこ」が、ひとつ、そっとふえたような気がしました。
──ルルが、わらった日。
森に、ちいさな光が差しこみはじめていました。
春の匂いが土から立ちのぼって、木々のあいだから、やさしい光がこぼれています。
ルルは、すこしうつむきながら森の小道を歩いていました。
だけど、その足どりは、前よりもほんの少し、かるくなっているようでした。
ふと、林のむこうに、シカのミオの背中が見えました。
ミオは、いつもはしっかり者で、やさしくて、森の仲間たちからも頼られる存在。
でもその日は、ひとりきりで、しずかに立ちつくしていたのです。
ルルは、少しだけ迷って、それから……そっと、ミオの隣に座りました。
なにも言いません。
ただ、そばに座って、同じ空気をすいこんで、木の葉の音をきいていました。
ミオが、ふとつぶやきました。
「……だいじょうぶ、って言われるの、わたし、ちょっと苦手なんだよね」
ルルは、うなずきました。
自分もそうだったから。
「だいじょうぶじゃないときに、だいじょうぶって言われると……さみしくなるの。ちょっとだけ」
ミオの声は、とても小さくて、まるで風の音にまぎれてしまいそうでした。
ルルは、それでも、ただ聞いていました。
うんうんと、小さくうなずきながら。
やがてミオが、すこしだけ笑って言いました。
「……ルルって、やさしいね。なんにも言わないけど、いてくれる」
そのとき、ルルの顔にも、小さな笑みがこぼれました。
自分の「くろいはこ」が、まだ全部軽くなったわけじゃない。
でも、誰かのそばにいられるようになったことが、なんだか、うれしかったのです。
そのあと、ふたりは木の下に座って、しばらくのあいだ、なにも話さずに空を見ていました。
空には、やわらかな雲がゆっくり流れていって、
ルルの中の「しろいはこ」が、ひとつ、そっとふえたような気がしました。
──ルルが、わらった日。
森に、ちいさな光が差しこみはじめていました。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる