黒い箱と白い箱

キユサピ

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第8章:つづいていくもの

第32話「『またあした』の約束」

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森に、夕暮れのやさしい風が吹いています。
ひかりは、葉っぱのあいだから金色のリボンのように降りそそぎ、
その中を、ルルたちはゆっくりと歩いていました。

今日は、森のみんなで集まって、小さな「おわかれ会」を開いていました。
といっても、だれかがいなくなるわけじゃありません。

それは、「ひとつの時間」が終わって、「新しい時間」がはじまる、そんな日。

「ねぇ、ルル」
ソラがふいに言いました。
「ぼく、あのとき“だいじょうぶ?”って聞けなかったこと、ずっと気になってたんだ」

「うん……でも、それでよかったんだと思う」
ルルは、やさしくしっぽを揺らして答えました。

「すぐに言葉をかけるより、そばにいてくれたことが、あたしにはいちばん、あたたかかったから」

モコはハチミツの瓶を抱えながら、笑いました。
「ルルの“くろいはこ”、少しだけ軽くなったかな?」

ルルは自分の胸に手を当て、そっと目を閉じます。

「うん……まだ全部じゃない。でも、きっと、少しずつ」

チクチクが、はずかしそうに言いました。
「ぼくの“くろいはこ”もね、ルルに話してから、ちょっと楽になったよ」

「そうかぁ」
ルルは、小さくうなずいてから、みんなの顔を見渡しました。

「しろいはこも、くろいはこも、ぜんぶ、わたしの一部なんだね。
どちらかだけじゃなくて、どちらも大事にしていけたらいいなって、今は思える」

夕日が沈むころ、空に「またあした」と言うような雲が浮かびました。

「きもちって、変わるけど……なくならないね」
ソラが空を見上げながらつぶやきました。

「だから、これからも──“またあした”って、言いあおう」
ルルがにっこりと笑いました。

その笑顔は、まるで森のひかりそのもののように、あたたかくて、やわらかで。

そしてみんなは、小さくうなずきました。

「うん、またあした。」

それは、これからも続いていく、たいせつな約束。

くろいはこも、しろいはこも、
いっしょに抱えながら歩いていく、森のみんなの物語が、
ここからまた、すこしずつはじまっていきます。
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