『天翔(あまかけ)る龍』

キユサピ

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第六章:「禁苑の双頭」

第七十七話:「才女の眼差し」

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決死隊と朱雀・白虎門の精鋭は、乱戦の中で雪煙のように舞う強化型科学兵士をかいくぐり、不知火の潜む施設の奥へと突き進んでいた。天翔は青龍刀を振り、リンは剣で隊列を固める。藍峯は冷静に周囲の罠を警戒しつつ、前方の状況を観察していた。

「彼女はまだ奥の部屋にいる……」藍峯が小声で呟く。

不知火は家族のために、魏支国に操られている存在だ。その瞳に宿る葛藤を知りながらも、今は彼女自身が「敵」であることを忘れてはならない。強化兵士たちは、まさにその命令に従い、無言で龍華帝国と烈陽国の混合部隊に立ち塞がる。

扉の向こうに不知火の姿が現れる。背後に控える強化兵士たちが、彼女の指示で隊列を組み直し、攻撃を開始する。

「彼らを……排除するのだ!」不知火の低い声が響き、強化兵士たちは一斉に前進した。

リンは剣を前に突き出し、天翔は斜めからの攻撃を警戒する。朱雀門の精鋭が側面を固め、白虎門は捕らえた研究員を押さえつつ、不知火の動きを注視する。

決死隊は連携を保ちつつ、強化兵士たちの攻撃を受け流す。天翔が鋭く斬り込み、リンは守りを固めながら前進。藍峯は戦況を冷静に分析し、適切な支援ポイントを指示する。

不知火の瞳は冷たく、しかしどこか迷いを含んでいる。家族のために戦わねばならない彼女の立場が、目の前の精鋭たちに対する容赦なき戦意を生んでいた。

施設内に響く剣戟と金属音の中、決死隊は徐々に不知火の周囲を包囲し、次の一手を狙う。強化兵士たちの前線を押し返しながら、目の前の敵――不知火本人――を確実に制圧するための進撃が続いた。

扉の向こうに、禁苑奥の核心が迫る。決死隊の心は引き締まり、誰も後退を考えない。目の前に立ちはだかるのは、強化兵士と不知火――魏支国の命令に縛られた少女――のみだった。

強化型科学兵士たちは、一歩も引かず混合部隊に襲いかかる。肉体に組み込まれた機械が光を帯び、通常兵士を遥かに凌ぐ速度と力で攻撃してくる。決死隊の間にひらりと飛び交う斬撃が閃光となり、金属音が響き渡った。

「ここを突破しないと、不知火を捕らえられない!」リンは声を張り、前線を押し上げる。天翔が斜めから強化兵士を牽制し、朱雀門の精鋭が側面を固める。白虎門の隊員たちは、捕縛した研究員を守りつつ、不知火の所在を探る。

不知火は奥の部屋に佇み、冷たい目で指示を出す。手をかざすたび、強化兵士たちは混合部隊を押し戻す。彼女自身も、戦術的に戦場を支配するような動きを見せ、敵としての厳しさを存分に発揮していた。

藍峯が小声で報告する。
「強化兵士の前線は厚い……迂回して背後に回るしかないかもしれません」

「無理はするな、しかし後退も許されん!」天翔が声を荒げ、決死隊の士気を維持する。リンも剣を握り直し、前に出て攻撃の軌道を探る。

部屋の隅で、金属製の装置や配線に囲まれた強化兵士が、無言のまま反応を示す。潤騎の罠設置が功を奏し、数体が動きを封じられた瞬間、混合部隊は小さな突破口を見出す。

「ここだ……一気に押し込むぞ!」朱雀門の精鋭が声を上げ、リンと天翔がその後に続く。

不知火の目が、初めて恐怖と警戒の入り混じった光を宿す。自らの命令で動く強化兵士たちの足が鈍り始め、捕獲の糸口が見えてきた。しかし、まだ完全に制圧できるわけではない。

施設内に響く金属音と叫声の中、決死隊は慎重に、しかし確実に不知火の周囲を囲み、次の瞬間の捕縛に備える。誰も息を抜くことはできない。戦況は緊迫のまま、まだ終わりを告げてはいなかった。

強化型科学兵士たちの動きが鈍り、混合部隊は一気に包囲網を狭める。潤騎が仕掛けた罠で数体が停止し、戦場に一瞬の静寂が生まれた。リンは剣を構え、天翔は青龍刀を軽く振って威圧する。

「今だ!」朱雀門の指示に従い、白虎門の精鋭が左右から押し込み、リンが正面に立つ。天翔が横合いから制圧し、強化兵士を挟み込む形で動きを封じる。

その瞬間、不知火の瞳に僅かな動揺が走る。普段は冷徹な天才少女も、隊員たちの圧力を前に、身体を小さくして退路を探す。

「家族を守るため……でも、もう抵抗は無意味だぞ」藍峯が低く呟く。彼女の背後に潜む目的を理解した者だけが耳を傾ける。

リンが前に踏み出し、剣の先を不知火の肩元に向ける。天翔も刀の刃先で警告を示す。混合部隊は緊密な隊形を保ち、どの方向からも逃げられないことを知らせる。

「降伏しろ! 抵抗すれば、こちらも容赦はしない」リンの声は冷静だが、決意に満ちていた。

不知火は一瞬の迷いの後、小さく頷く。強化兵士に「やめろ……」と呟くと、制御装置の合図を出す手を止めた。数体の強化兵士は徐々に停止し、抵抗を失う。

天翔が前に出て、不知火の腕を確保する。朱雀門と白虎門の精鋭が周囲を固め、捕縛は完了した。

「これで……一時的には安全だ」藍峯が息をつく。だが、誰も安心した表情を見せず、警戒を解かない。施設内にはまだ不明な要素が残っている。

不知火自身も、まだ冷たい眼差しで隊員たちを見つめる。家族のため、魏支国に操られていた少女の瞳には、わずかに後悔と不安が混ざっていた。

「まずは拘束し、安全な場所へ移す。強化兵士の残党にも警戒だ」天翔が指示を出す。リンも剣を収めながら頷く。決死隊は緊張を解かず、周囲の警戒を固めたまま、不知火の移送準備を始める。

施設内部の静寂の中、捕縛された不知火と、戦闘を制した混合部隊。だが、この戦いはまだ終わりではない。禁苑の奥には、さらに未知の危険が待ち構えている——生物兵器を操る医師との決戦が、次の課題として迫っていた。
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