『天翔(あまかけ)る龍』

キユサピ

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第十一章:「異星からの来訪者」

第百四十四話:「石碑と天空の呼応」

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 四人が言葉を失い、ただ石碑の前に立ち尽くす。
 大地は静まり返り、風すらも止んだように感じられた。
 そのとき――空が唸るように震えた。

 雲が渦を巻き、稲光が幾筋も交錯する。
 やがて闇の帳を裂くように、巨大な飛行物体が姿を現した。
 それはこれまでの来訪者のものよりもはるかに大きく、まるで空そのものを覆うほどの艦影だった。

 玲霞が息を呑む。
「……あれは……今までの船と違う。大きさも、形も……まるでこの地を見下ろしているようだわ」

 星華が両手を握りしめる。
「威圧……? それとも、呼びかけ?」

 天翔が即座に刀へと手を伸ばすが、リンが制する。
「待て。石碑の光を見ろ」

 四人の足元にある石碑が、再び光を放ち始めた。
 今度の光は天へと伸び、まるで天空の艦と交信するかのように結びつく。
 すると――艦体の表面にも応えるように文様のような光が走り、その光が波紋のように広がっていった。

 景嵐が低く呟く。
「……まるで、彼らが初代武神と同じ起源を持つと言わんばかりだな」

 玲霞の瞳が揺れた。
「もしそうなら……この星そのものの歴史が、根本から覆るかもしれない……」

 轟音が大地を震わせる。
 飛行物体は静かに石碑の上空へと移動し、その巨体を揺るがせることなく静止した。
 四武神の心に再び声が流れ込む。

『選びし者たちよ――汝らの答えを聞こう』

 空と地が呼応する中で、物語は次なる段階へ踏み出していく。

 声が、心の奥底に直接響く。
 威圧でも脅威でもなく、ただ「応えよ」と促す穏やかな響きだった。

 最初に口を開いたのは 天翔 だった。
「我らの力は、この星の民を護るためにある。お前たちが来た理由がなんであれ、我らの民を害するつもりならば剣を執る。それが我が答えだ」
 その声は固く、揺るぎない防衛の意思を示していた。

 続いて 星華 が一歩前に出る。
「けれど、私たちは恐怖だけで判断してはいけないわ。あなたたちが敵かどうか、まだ何も知らない。もし初代があなたたちの同胞だったのなら……まずは対話を求める。それが私の答えです」
 その眼差しは迷いなく、しかし慈悲を帯びていた。

 景嵐 はしばし黙し、石碑に手を当ててから低く言葉を紡ぐ。
「歴史は常に、真実と虚構の狭間で揺らいできた。初代の足跡すら、我らの中で完全には解き明かされていない。だからこそ、今ここで新たな虚構を作るわけにはいかぬ。真実を見極める。それが我が答えだ」
 その声は冷静でありながら、誰よりも熱を帯びていた。

 最後に リン が石碑の光を受け止めるように両手を広げた。
「四人それぞれの思いは違うけれど、根は同じ。この星を守り、未来を紡ぐためにある。ならば我ら四武神は、この問いに一つの答えを示そう。――“我らは戦うためにではなく、理解するためにここに立つ”。それが、この星の意思だ」

 四人の声が重なるようにして天空へと響いた。
 すると、石碑と艦の光が一層強まり、周囲の空気が震える。
 やがて、再び声が届いた。

『……承知した。我らは汝らの覚悟を受け入れる。ならば、共に記憶を紡ごう――初代の真実を』

 次の瞬間、光が四人を包み、遠い時代の記憶が奔流のように流れ込んでいった。
 四人の答えが天へと届いたその瞬間、石碑から迸る光はさらに強さを増し、天空に浮かぶ巨大な飛行艦と共鳴するかのように脈打った。

 ――そして。

 彼らの意識の奥底に、言葉ではない“記憶”が流れ込んできた。

 焼けただれた大地。
 夜空を裂くように降り注ぐ無数の炎。
 人の姿をした者たちが、見知らぬ金属の鎧をまとい、光の槍を振るう。
 その背後には、翼を持つ巨大な影――まぎれもなくドラゴンが飛んでいた。

 「これは……」
 リンが思わず息を呑む。

 さらに映像は断片的に移り変わる。
 墜ちた光の舟、そこから現れる一人の人物。
 彼の瞳は澄み切り、だがどこか哀しみを湛えていた。
 その人物こそ、後に「初代武神」と呼ばれる存在であった。

 だが映像はここで途切れる。
 まるで「真実の全てをまだ知るには早い」と告げるかのように。

 四人は同時に目を見開き、荒い息を吐いた。
 光は静まり、艦も石碑も沈黙を取り戻していた。

「……今、見たものは……初代の記憶……なのか?」
 景嵐が低く呟く。

「けれど、あれは……戦火。血と、絶望の光景」
 星華の声は震えていた。

「真実を知ることが、我らの宿命なのだろう」
 天翔が拳を握りしめる。

 リンは胸の奥に残る強烈な感覚を押し殺すように、石碑を見据えた。
「まだ全てを見せてはくれない……。けれど、答えを探せと告げられた。これは始まりに過ぎない」

 静寂の中、天空の艦はなお漂い続けていた。
 その姿は、まるで人々に「選択を迫る使者」のように映っていた。
 重苦しい沈黙が石碑の広場を覆っていた。
 四人はまだ胸の奥に焼き付いた映像――炎に包まれる大地と、異界の存在、そして「初代武神」の姿――を思い返していた。

 最初に口を開いたのは景嵐だった。
「……あれは明白だ。異星の存在がこの地に干渉し、戦火を広げた。もし天空の艦も同じ種族のものなら、再び我らを蹂躙する危険がある。すぐに迎撃の準備を整えるべきだ」

 その言葉に星華は首を振った。
「待って。確かに戦の光景は恐ろしかった。でも、最後に現れた初代武神の眼差し……あれは救おうとする意思だったはず。彼ら全てが敵だとは限らないわ。話を聞く道を閉ざすべきじゃない」

 「だが、国を危険にさらすわけにはいかぬ!」
 景嵐は声を荒げる。

 天翔が二人の間に割って入った。
「……おそらく、あの記憶は一方の断片にすぎない。真実はまだ隠されている。だが、放置すれば各国は必ず動く。強硬派と穏健派の争いでこの世界自体が割れるやもしれん」

 リンは深く息をつき、石碑に手を触れた。
「私たちに託されたのは“選択”だと思う。
 ――迎撃の構えを取りながら、彼らの意思を探る。
 どちらか一方に偏れば、初代が遺した想いを踏みにじることになる」

 景嵐は眉を寄せたまま、しかしすぐに拳を握り直した。
「……ふん。だがリン、お前がそう言うのなら従おう。ただし、警戒は怠らん。あの光景を忘れるわけにはいかんからな」

 星華は安堵の表情を浮かべ、天翔は小さく頷いた。

 四人の間で結論はまだ完全に一致してはいない。
 だがそれぞれの「正義」と「恐れ」が交錯しながら、新たな局面へと舵が切られていった。

 その頭上では、なお天空の艦が静かに漂い、彼らを見下ろしていた。
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