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第一章
恥ずかしい人
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ゆさゆさと…体を揺さぶられている。
「んゔ~~…」
………ねむ……い……………
「起きて~真昼くん~もう夜だよ~?」
よる……よるか……おれいつ、ねたっけ……ゆうがた?…ゆうがたにねて…いま……夜!?
「…っ…!?」
がばっと、くらりとする頭を無視して体を起こす。周りを見渡すと、窓から見える空が紺色に染め上がっていた。
思わず窓を見たまま黄昏てしまう。
俺また…無防備に熟睡し過ぎだろ俺…はぁ…
くあ~っと欠伸をすると、ぐるりと肩を回す。いつもの癖だ。万年肩こりの体を少しでも動かす為の。
あれ…なんだか体が軽い…?
「やっと起きた~よく寝るねぇ真昼くん」
完全に忘れていた存在にビクッと驚いて後ろへ振り返ると、元々くせ毛でありそうな髪が、更にぴょこぴょこと跳ねているのも構わずに、にこにこと緩んだ顔でこちらを見ていた。
「おはよ~というかこんばんは?僕も大分寝ちゃったよ~もうぐっすり!」
なんだ…いつも通りか。良かった、あの雰囲気が続いてたらどうしようかと……。あの茹だるような……って考えるな!
先程の事を思い出して変な音を立て始める心臓を何とか宥めて、顔の熱を必死に逃す為にあちこちに視線をやって気を紛らしていると、ぴょこん、ぴょこ。動く度に揺れる寝癖に自然に目がいった。
「寝癖、またついてますよ」
「あ~また?もう面倒くさいなぁ」
いつも寝起きはこれだけど相変わらず跳ね方が面白いなと観察していると両手を掴まれて、朔夜の両頬を挟むように持っていかれる。
「真昼くんが直してくれる?」
こちらを下から見上げてくるその瞳は熱を含んでいた。
「なっ…んで俺が」
確信犯だろこいつ…!無駄に顔が整ってるせいで様になっているのがムカつく。
「真昼くんに触られると嬉しいから」
「…恥ずかしい人ですね」
まともな答えを期待してた訳じゃないので、大きくため息を付くだけに留める。一度言い始めると譲らないのは知っているのでさっさと終わらせようと、渋々指先に髪を触れさせる。
さらりと、見た目とは裏腹にふわふわとした感触ではなかった。
くせ毛というよりかは細くて柔らかい直毛のような?
さっと抑えるように撫でるとやはり、言う事をよく聞く。
型がつきやすいだけで、素直な髪質なようだ。羨ましい。俺なんか一度跳ねてしまうと時間と整髪剤をふんだんに使わないといけなくなるのに。
「ふふっ」
そうして髪を捏ねくり回していると控えめな笑い声が降ってくる。
「…?」
こそばかっただろうかと首を傾けて、視線を朔夜の顔に移すと、柔らかな笑みを向けてくる。
「僕の髪、随分気に入ってくれたみたいだね?」
「っ!べ、別にそんなんじゃ!俺は頼まれたからやっただけで夢中になってたわけじゃ…!」
ぐ~~~~っと間抜けな音が鳴る。
口を開いたまま固まる俺に、朔夜はきょと、と目を丸くすると我慢できないといった感じで笑い声を漏らす。
「………くっ!はははっ!お腹減っちゃった?もう夕方だもんね」
ひとしきり笑い、俺の頭を撫でると、悪戯っぽい笑みを作る。
「せっかくだし今日は一階のテラスで食べようか。腕によりをかけて作るね」
「テラス…?」
この家テラスまであるのかよ…。いや待て今とても重要な事をサラッと言わなかったか。
「部屋から出て良いんですか…?その…風呂以外で」
「いいよ?でも外は絶対に駄目だし、鎖はつけたままだけどね」
さも当然みたいに言う目の前の人物に唖然とする。
「なんだ…」
俺、出られるんだ…。いやこの家限定だから出られると言っていいのか分からないけど、けど少しは状況が良くなったような気がして気が軽くなった。
「真昼くん考え事?大丈夫?」
「…大丈夫です」
「そっか、なら、遅くなる前に早く行こ!」
「…………」
差し伸べられた手に、少し躊躇してから、おずおずと自分の手を重ねた。
……こいつはちょっと、いや大分おかしい奴だけど、今のところ俺に友好的…では、ある…はず。
と、とにかく!怒らせる前に従っておくのが、今の状況では一番良いはず。この男、いや朔夜を刺激しないように。そうすれば少しはまともに話だって…
そう打算とほんのちょっとの同情、そしてぼんやりとした何かで重ねた手を朔夜は宝物を触るかのように撫ぜては、自分の手と絡める。
その柔らかさとは反対に強引に引っ張ってくる朔夜の後を渋々追いかけて歩く。
だが、俺はこの時、この手を取るべきではなかった。まして心を少しでも許すような真似はするべきじゃなかった。
それを思い知ったのは一ヶ月後のことだった。
「んゔ~~…」
………ねむ……い……………
「起きて~真昼くん~もう夜だよ~?」
よる……よるか……おれいつ、ねたっけ……ゆうがた?…ゆうがたにねて…いま……夜!?
「…っ…!?」
がばっと、くらりとする頭を無視して体を起こす。周りを見渡すと、窓から見える空が紺色に染め上がっていた。
思わず窓を見たまま黄昏てしまう。
俺また…無防備に熟睡し過ぎだろ俺…はぁ…
くあ~っと欠伸をすると、ぐるりと肩を回す。いつもの癖だ。万年肩こりの体を少しでも動かす為の。
あれ…なんだか体が軽い…?
「やっと起きた~よく寝るねぇ真昼くん」
完全に忘れていた存在にビクッと驚いて後ろへ振り返ると、元々くせ毛でありそうな髪が、更にぴょこぴょこと跳ねているのも構わずに、にこにこと緩んだ顔でこちらを見ていた。
「おはよ~というかこんばんは?僕も大分寝ちゃったよ~もうぐっすり!」
なんだ…いつも通りか。良かった、あの雰囲気が続いてたらどうしようかと……。あの茹だるような……って考えるな!
先程の事を思い出して変な音を立て始める心臓を何とか宥めて、顔の熱を必死に逃す為にあちこちに視線をやって気を紛らしていると、ぴょこん、ぴょこ。動く度に揺れる寝癖に自然に目がいった。
「寝癖、またついてますよ」
「あ~また?もう面倒くさいなぁ」
いつも寝起きはこれだけど相変わらず跳ね方が面白いなと観察していると両手を掴まれて、朔夜の両頬を挟むように持っていかれる。
「真昼くんが直してくれる?」
こちらを下から見上げてくるその瞳は熱を含んでいた。
「なっ…んで俺が」
確信犯だろこいつ…!無駄に顔が整ってるせいで様になっているのがムカつく。
「真昼くんに触られると嬉しいから」
「…恥ずかしい人ですね」
まともな答えを期待してた訳じゃないので、大きくため息を付くだけに留める。一度言い始めると譲らないのは知っているのでさっさと終わらせようと、渋々指先に髪を触れさせる。
さらりと、見た目とは裏腹にふわふわとした感触ではなかった。
くせ毛というよりかは細くて柔らかい直毛のような?
さっと抑えるように撫でるとやはり、言う事をよく聞く。
型がつきやすいだけで、素直な髪質なようだ。羨ましい。俺なんか一度跳ねてしまうと時間と整髪剤をふんだんに使わないといけなくなるのに。
「ふふっ」
そうして髪を捏ねくり回していると控えめな笑い声が降ってくる。
「…?」
こそばかっただろうかと首を傾けて、視線を朔夜の顔に移すと、柔らかな笑みを向けてくる。
「僕の髪、随分気に入ってくれたみたいだね?」
「っ!べ、別にそんなんじゃ!俺は頼まれたからやっただけで夢中になってたわけじゃ…!」
ぐ~~~~っと間抜けな音が鳴る。
口を開いたまま固まる俺に、朔夜はきょと、と目を丸くすると我慢できないといった感じで笑い声を漏らす。
「………くっ!はははっ!お腹減っちゃった?もう夕方だもんね」
ひとしきり笑い、俺の頭を撫でると、悪戯っぽい笑みを作る。
「せっかくだし今日は一階のテラスで食べようか。腕によりをかけて作るね」
「テラス…?」
この家テラスまであるのかよ…。いや待て今とても重要な事をサラッと言わなかったか。
「部屋から出て良いんですか…?その…風呂以外で」
「いいよ?でも外は絶対に駄目だし、鎖はつけたままだけどね」
さも当然みたいに言う目の前の人物に唖然とする。
「なんだ…」
俺、出られるんだ…。いやこの家限定だから出られると言っていいのか分からないけど、けど少しは状況が良くなったような気がして気が軽くなった。
「真昼くん考え事?大丈夫?」
「…大丈夫です」
「そっか、なら、遅くなる前に早く行こ!」
「…………」
差し伸べられた手に、少し躊躇してから、おずおずと自分の手を重ねた。
……こいつはちょっと、いや大分おかしい奴だけど、今のところ俺に友好的…では、ある…はず。
と、とにかく!怒らせる前に従っておくのが、今の状況では一番良いはず。この男、いや朔夜を刺激しないように。そうすれば少しはまともに話だって…
そう打算とほんのちょっとの同情、そしてぼんやりとした何かで重ねた手を朔夜は宝物を触るかのように撫ぜては、自分の手と絡める。
その柔らかさとは反対に強引に引っ張ってくる朔夜の後を渋々追いかけて歩く。
だが、俺はこの時、この手を取るべきではなかった。まして心を少しでも許すような真似はするべきじゃなかった。
それを思い知ったのは一ヶ月後のことだった。
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