命をちょうだい【第一章完結】

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第一章

死んじゃうよ?





一歩、一歩と近づく度春日さんは激しく暴れた。

 「ん゙っーー!ン゙んっ!」 

何かを訴えようとしているのを見て、思い出したかのようにうっそりと笑い、猿轡を取り払った。

「ふふっ良かったぁようやく猿轡外せるね。悲鳴、存分に楽しんで」

その狂言を聞いた瞬間、春日さんは堰を切ったように喋りだした。

「真昼っ!聞いてくれっ!!俺は嵌められたんだっ!全部こいつのッ」

 その瞬間鈍い音が鳴った。
春日さんの顔は弾かれたように横を向いていた。

「余計なこと言わないって契約のはずだけど?」 

俺には向けない剣呑な視線を向ける。

俯いたまま視線を受ける春日さんは、それ以上口に出す勇気はなかったようだ。

「朔夜。俺が、やるから」

策略、暗躍、きっと裏に何かある。 

だけど

俺にとってはどうでもよかった。

「……そっかごめんね邪魔して」

朔夜は満足げな笑みを作ると横にずれる。

「ま、まひるっ…?え、おまう、うそだよなぁ…!ひっ…!く、くるなっ!たすけ」

一歩、一歩。

もう進めない。

ごめんなさい春日さん.。

でも許してほしいんだ。



だって、こうしないと俺が抱きしめてもらえなくなるだろ?


俺はナイフを振り上げた。




そこからはあっという間だった。

朔夜は俺が怖気づく度、後から抱きしめては、優しくやり方を教えてくれた。

そうして何度も、何度も、何度も苦痛を与えて

断末魔が消え入りそうな小さなうめき声に変わる頃には、ガタガタ震えてた手が嘘みたいにしっかりとナイフを持てた。

ある時からふわふわとした夢の中にいるような感覚で、罪悪感を感じることもなくなった。まともに頭が動かなくなっただけかも知れないが。

ただ思ったのは、人間ってこんなに脆いんだってこと。最初は苦労したけど関節や皮膚の弱い所を狙えば簡単に壊れる。

なんだ、こんなに簡単なら駄々をこねる必要なかったじゃないか。

そしたら朔夜を怒らせずにすんだし、なんならいい子だねって、褒めてくれたかも。そう考えると胸がきゅうと甘く疼いた。こんなどうでもいい人より、今すぐ現実でもそうしてもらいたかった。  

朔夜、見て。俺こんなに頑張ったぞ。

朔夜がやれって言うならどんなに嫌なことでもやれるんだ。だって朔夜に褒めてもらいたいから。

朔夜は俺のこと好き?ハグしてくれる?キスしてくれる?こんな俺でも?

『真昼くんじゃないとダメなんだ』

言った。お前は確かにそう言った。

あははっふわふわする。キラキラしてて、花びらが舞ってるみたいだ。

赤い、花びら。

そうだ!こんなにきれいなら!いまは……えんぴつしかないからこれでおえかきしよう。

ほら、こうやって、おはなをかく。


じょうずにできた!

さくや、さくやも見てよ、朔夜?




「真昼くん。それ以上したら死んじゃうよ?」



あれ?



「…………えぁ?」


花びらが舞ってて

綺麗で

楽しくて




血の匂いがする。


「う、ぅあああああっ!!?」


腰を思いっきり地面に打ちつける。

ガシャン。

何かが落ちる。俺の手から。俺の手に持ってたのはナイフ。ナイフで俺は何を。赤く染まったナイフが、ナイフ?俺じゃなくて?




「真昼くん」

あ?

にこりと笑う悪魔がそこにはいた。


その足に必死に縋り付く。ズタズタになった肉の塊に背を向けて。


やだやだやだ怖い怖い怖い怖い


「たすけてっ…!たすけてさくやっ…!」

助けて助けて助けて助けろお前のせいだろ全部お前のせいだ俺は悪くない俺は


「大丈夫だよ真昼くんは僕が守るから。よく頑張ったね。とってもいい子。よしよし」





朔夜♡

ぎゅっと包み込んでくれる熱。

いい子だねって褒めてくれる優しい声。

頭を撫でる甘い手つき。

ごめん朔夜♡俺が間違ってた八つ当たりしてごめん。あいつだ。春日さんが悪いんだ。全部。そうだ。だって朔夜が言ってた。俺に愚図って言ったり、殴ったりするからこうなるんだ。俺は悪くないし、朔夜のせいでもない。そうだ。そうなんだ。間違いない。

「朔夜♡キスして?」

赤い指で朔夜の背中を掻き抱く。

朔夜がどこかに行かないように。

「ダメなんじゃなかったの?」

なのに朔夜は楽しそうで、のらりくらりで

「いい!いいから!これからだめって言わないから!!はやく」

許さない許さない許さない

はやく俺のこと朔夜でいっぱいにしろよ。

どろどろになった俺を見て、朔夜はこれ以上ないくらい綺麗に笑った。

「君が望むなら」

唇が重なる。

朔夜と深く触れ合う。温かくて柔らかい。

舌が絡んで唾液が混ざり合うほど心臓は脈打って、生きてるって実感させられる。

これだ。これが欲しかったんだ。

息ができないくらいに求め合ってようやく心が温かくなる。

何度も角度を変えて互いの境界が溶け合うまで。

「はっ……はぁっ…さくや」

息が上がった俺の声は上擦っていた。甘えるように体を押し付けると、ピクリと朔夜は反応した。


「っ……なあに?」











「おふろ……はりたい」






















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