ひょうたん神社におまかせを

だわ

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第二章

三話

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 『ご飯できたわよー。』
 素敵なエプロンを着けながら境内の掃き掃除をしていると、食欲をそそるいい匂いとともにチスイのお母さん的な言葉が聞こえてきた。
 居間に戻るとテーブルの上にはカセットコンロに鉄鍋が置かれ中の具がグツグツと良い感じに煮だっている。この匂い…これが噂の…!
 『そうよ、今日は新たな出会いを祝して豪華にすき焼きよ!』
 自慢げにチスイがドヤ顔をする。私なんかのためにジャパニーズスキヤキを作ってくれるなんて…一生ついていきますお嬢様ぁ!
 『お嬢様の大好物ですので週一でお作りしております。』
 食器を運んできた風美さんがこう言った。これが週一で食べられるなんて!日本の神官は質素な暮らしをしていると思ってたけどそうでもなかったのね!
 私が感動しているとその表情を読み取ったチスイが握りこぶしを震わせながら、
 『そうよ!節約して節約してやっと週一なのよ!これを楽しみに一週間生きてる感じ!』
 と興奮気味に力説していた。
 『ではご飯も用意してありますので、冷めないうちにお召し上がりください。』
 風美さんの言葉で私は臨戦態勢に入る。私はお客様だからって自重しないゾ!あのいい感じに火が通ったお肉は私が戴く!
 チスイの方もヤル気のようだ。やはり大好物。客に譲ろうという姿勢は一切ない。ただならぬオーラを纏っているのがわかる。一触即発、そんな空気が漂っていた。
 『それではいただきます。』
 『『いただきます!』』
 風美さんの合図と同時に箸を肉に突き刺す。テーブルマナーは故郷に置いてきた。風美も同じ肉を狙っていたらしいがリーチの差が出たようだ。戦利品を溶き卵に投入しほおばる、あぁ~この口いっぱいに広がる肉の油のうま味と甘じょっぱいたれのハーモニー、吸血とは違った幸福感が脳を支配する。
 ご飯をかき込み幸福感に浸りながらチスイの方を見るとちょっと生焼けのお肉をご飯の上にのせて丼ぶりスタイルで食べていた。なるほどご飯にはそういう食べ方もあるのか!日本に来てから口内調味も悪くないと思ってきたけどやはりたれがしみ込んだライスが性に合う!
 風美さんが追加のお肉を投入してくれている。
 『風美、あんたも畏まってないで一緒に食べましょう?こいつの動きは最早お客様ではないわ。』
 お客様じゃなくて悪うござんした。育ちが悪いんで仕方がないのです。
 『そうっすよ~。一緒に食べたほうが楽しいしおいしいっすよ~。』
 私もチスイに賛成だ。これからお世話になる妖怪仲間なんだから無礼講っすよ~。
 『では私も失礼して…』
 シュババババッ!!風美さんが物凄い箸捌きで鍋の中で手つかずの野菜をチスイの小皿に乗せていく。
 『お嬢様、野菜も食べないと大きくなれませんよ?』
 『子ども扱いするなー!』
  …こんなにぎやかな食卓なんて久しぶりだなぁ。
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