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第三章
三話
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『どうも~はじめまして~。』
玄関を出るとそこには金髪の私より二、三歳年上の美人なお姉さんが怪しげなエプロンと竹ぼうき装備のいで立ちで現れ、元気に挨拶してくれた。明らかに私よりお姉さんだけどどこか幼さも残る可愛らしさだ。それでいて笑顔が明るい。今まであくどい連中やら吸血鬼やらばかり見てきて荒んだ私の心を優しく包み込んでくれるような包容力のある…って初対面の人に何考えてるんだ私は?
『あら、エイミィじゃないの。バイトは?』
私の混乱を余所に後ろからチスイがお姉さんに話しかける。チスイの知り合いか?
『今日は午後からっすよー。さっきまで掃き掃除してたっす。』
『ちょうどいいわエイミィ、こちらここいら担当のエクソシストの神父さまと新人のKちゃんよ。あなたも挨拶しなさいな。』
チスイの言葉を聞いた瞬間、エイミィと呼ばれたお姉さんの顔が強張ったように見えた。
『え、エクソシストっすか…わ、私はエイミィといいます…。ひ、ひょうたん神社に居候させてもらってます。ど、どうぞよろしく。』
さっきまで元気だったお姉さんはいきなりたどたどしくなり、そそくさとこの場から逃げ出そうとしていた。
…やはり。このエイミィとやらからは微弱ながらも妖気を感じる。さっきの不思議な第一印象は彼女の妖気に中てられたからだろうか?私もまだまだなのかもしれない。
本来妖怪の類がエクソシストと遭遇すると真っ先に逃げ出すかごく稀にだが逆に襲い掛かってくるかである。彼女の反応はまさに前者のそれであり、違和感があるとすれば戸籍持ちとはいえチスイ達が堂々としすぎていたのだ。…というかカソック(神父服)と戦闘修道服の私たちを見ればエクソシストって分かるだろうに。
『で、では私はこれで…』
エイミィが逃げようとする。この妖怪から不思議な感じがする。かなり怪しい。妖怪だから怪しいのは当然だがそうではない。チスイが「しまった!」的な顔しているのだ。まさか不法労働妖怪か?
『…エイミィさんといいましたか?あなたはこの国の妖怪じゃありませんね?念のためパスポートを拝見してもよろしいでしょうか?』
神父様もチスイの怪しげな気配を感じたのか、彼女を引き止める。我々日本支部のエクソシストは日本に訪れた海外の妖怪の監査業務も同時に請け負っている。海外の妖怪が日本国内で犯罪を犯しているならばそれを取り締まる業務の一部を国から委託されているのだ。
エイミィの顔が青ざめる。やはり何か犯罪に手を染めているようだ。私も逃げられないようとっさに彼女の手を掴む。すると彼女は観念したのか泣きながらパスポートを差し出してきた。
『じゅみばぜんん。ゆるじでぐだざいいぃ。』
泣きじゃくる彼女をしり目に神父様はパスポートを受け取り確認する。やはり偽造パスポートで入国した大物か?それとも極悪指名手配犯?
『やはりそうでしたか…』
神父様がため息交じりに呟いた。やっぱりこいつ犯罪妖怪なのね!?
『何も問題ありませんよ。ちゃんと妖怪用の就労ビザで入国してますし。』
『『はえ?』』
神父様の言葉に彼女と私が拍子抜けして情けない声を上げる。こいつ犯罪者じゃないの?
『いやはや、チスイ様も人が悪い。』
『ふふふ。ちょっとからかっただけよ。でももしかしたらエイミィのビザが観光ビザだったとしたらバイトそそのかした私も犯罪者ね。危なかったわ。』
神父様とチスイが笑っているがチスイは確認しないでバイト斡旋なんてしてたのか…でも妖怪の不法労働も裏社会では問題になってるし…というかなんで余裕なのこの二人?
『うわあぁぁん。よがっだぁぁ。』
エイミィの方を見ると腰が抜けたのかその場に座り込んでいる。きれいな顔も涙でぐちゃぐちゃになって若干哀れだ。チスイって案外ドSなのかも。
まぁなんにせよひょうたん神社に監視対象が増えていたというのがわかった。エイミィも吸血鬼ではないが外来種だし一応監視しておかねばならない。ただでさえこんな下っ端業務なのに面倒事が増えたようでやる気が削がれる。
『では私たちはこれで。』
未だ半泣きのエイミィと余裕の笑みを崩さないチスイ達を後にして神社を出る。ただの顔合わせだというのに疲れた。今後こんな連中と付き合っていかなければならないなんて…。
ただあのエイミィという妖怪、なぜか気になる。そんな強そうな奴にも見えなかった、が何かが引っかかる。普通妖怪や悪霊といった神に仇なすモノの妖気に中てられた場合、あんな温かな感情を抱くなんてありえない。妖気に中てられたものは恐怖や不安、絶望感といった負の感情が呼び起こされるものである。もしかしたら新手の魅了(チャーム)なのかもしれない。一度本部のデータベースからエイミィの情報を調べてみなければならない。
可愛いけど情けないエイミィの泣き顔を思い出しながら教会への帰路に就いた。
玄関を出るとそこには金髪の私より二、三歳年上の美人なお姉さんが怪しげなエプロンと竹ぼうき装備のいで立ちで現れ、元気に挨拶してくれた。明らかに私よりお姉さんだけどどこか幼さも残る可愛らしさだ。それでいて笑顔が明るい。今まであくどい連中やら吸血鬼やらばかり見てきて荒んだ私の心を優しく包み込んでくれるような包容力のある…って初対面の人に何考えてるんだ私は?
『あら、エイミィじゃないの。バイトは?』
私の混乱を余所に後ろからチスイがお姉さんに話しかける。チスイの知り合いか?
『今日は午後からっすよー。さっきまで掃き掃除してたっす。』
『ちょうどいいわエイミィ、こちらここいら担当のエクソシストの神父さまと新人のKちゃんよ。あなたも挨拶しなさいな。』
チスイの言葉を聞いた瞬間、エイミィと呼ばれたお姉さんの顔が強張ったように見えた。
『え、エクソシストっすか…わ、私はエイミィといいます…。ひ、ひょうたん神社に居候させてもらってます。ど、どうぞよろしく。』
さっきまで元気だったお姉さんはいきなりたどたどしくなり、そそくさとこの場から逃げ出そうとしていた。
…やはり。このエイミィとやらからは微弱ながらも妖気を感じる。さっきの不思議な第一印象は彼女の妖気に中てられたからだろうか?私もまだまだなのかもしれない。
本来妖怪の類がエクソシストと遭遇すると真っ先に逃げ出すかごく稀にだが逆に襲い掛かってくるかである。彼女の反応はまさに前者のそれであり、違和感があるとすれば戸籍持ちとはいえチスイ達が堂々としすぎていたのだ。…というかカソック(神父服)と戦闘修道服の私たちを見ればエクソシストって分かるだろうに。
『で、では私はこれで…』
エイミィが逃げようとする。この妖怪から不思議な感じがする。かなり怪しい。妖怪だから怪しいのは当然だがそうではない。チスイが「しまった!」的な顔しているのだ。まさか不法労働妖怪か?
『…エイミィさんといいましたか?あなたはこの国の妖怪じゃありませんね?念のためパスポートを拝見してもよろしいでしょうか?』
神父様もチスイの怪しげな気配を感じたのか、彼女を引き止める。我々日本支部のエクソシストは日本に訪れた海外の妖怪の監査業務も同時に請け負っている。海外の妖怪が日本国内で犯罪を犯しているならばそれを取り締まる業務の一部を国から委託されているのだ。
エイミィの顔が青ざめる。やはり何か犯罪に手を染めているようだ。私も逃げられないようとっさに彼女の手を掴む。すると彼女は観念したのか泣きながらパスポートを差し出してきた。
『じゅみばぜんん。ゆるじでぐだざいいぃ。』
泣きじゃくる彼女をしり目に神父様はパスポートを受け取り確認する。やはり偽造パスポートで入国した大物か?それとも極悪指名手配犯?
『やはりそうでしたか…』
神父様がため息交じりに呟いた。やっぱりこいつ犯罪妖怪なのね!?
『何も問題ありませんよ。ちゃんと妖怪用の就労ビザで入国してますし。』
『『はえ?』』
神父様の言葉に彼女と私が拍子抜けして情けない声を上げる。こいつ犯罪者じゃないの?
『いやはや、チスイ様も人が悪い。』
『ふふふ。ちょっとからかっただけよ。でももしかしたらエイミィのビザが観光ビザだったとしたらバイトそそのかした私も犯罪者ね。危なかったわ。』
神父様とチスイが笑っているがチスイは確認しないでバイト斡旋なんてしてたのか…でも妖怪の不法労働も裏社会では問題になってるし…というかなんで余裕なのこの二人?
『うわあぁぁん。よがっだぁぁ。』
エイミィの方を見ると腰が抜けたのかその場に座り込んでいる。きれいな顔も涙でぐちゃぐちゃになって若干哀れだ。チスイって案外ドSなのかも。
まぁなんにせよひょうたん神社に監視対象が増えていたというのがわかった。エイミィも吸血鬼ではないが外来種だし一応監視しておかねばならない。ただでさえこんな下っ端業務なのに面倒事が増えたようでやる気が削がれる。
『では私たちはこれで。』
未だ半泣きのエイミィと余裕の笑みを崩さないチスイ達を後にして神社を出る。ただの顔合わせだというのに疲れた。今後こんな連中と付き合っていかなければならないなんて…。
ただあのエイミィという妖怪、なぜか気になる。そんな強そうな奴にも見えなかった、が何かが引っかかる。普通妖怪や悪霊といった神に仇なすモノの妖気に中てられた場合、あんな温かな感情を抱くなんてありえない。妖気に中てられたものは恐怖や不安、絶望感といった負の感情が呼び起こされるものである。もしかしたら新手の魅了(チャーム)なのかもしれない。一度本部のデータベースからエイミィの情報を調べてみなければならない。
可愛いけど情けないエイミィの泣き顔を思い出しながら教会への帰路に就いた。
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