わたしの世界を変えてくれてありがとう

藤川みはな

文字の大きさ
1 / 3

ロボット少女

しおりを挟む


わたしは、藍原ゆかり。

高校2年生です。

クラスメイトからは『ロボット』と呼ばれています。

おそらくわたしが、無表情で喋らないからでしょう。

必要最低限の会話はしますがそれ以外は話しません。

あの日から感情なんて忘れてしまいました。

『気持ち悪い声』
中学の頃、そう言われたのをきっかけにわたしは喋らなくなりました。
親にも無視されるようになり、
感情は枯れていきました。

「ロボットちゃーん、宿題写させて?」

クラスメイトの佐藤さんがニコニコしながら
聞いてきます。

「はい、いいですよ」

わたしはいつものように、宿題をカバンから取り出し
佐藤さんに渡します。

「ありがとー!」

佐藤さんは自分の席に戻り、友達と談笑しています。

「ロボット、これ、職員室に届けておいて」

山積みのノートがわたしの机に置かれます。

「はい、いいですよ」

わたしは山積みのノートを持って教室を
出ていきます。

引き戸を閉めたとき、くすくす笑う声がしました。


わたしは、職員室に入ると担任の山田先生に
声を掛けました。

「山田先生、ノートを持ってきました」

山田先生はチラッとこちらを一瞥すると
また、国語の先生との会話に戻りました。

わたしは、山田先生のデスクにノートを置きました。

「失礼しました」

職員室を出ると、誰かと肩がぶつかりました。

同じクラスの原田くんです。

原田くんは顔に怒りを滲ませ「いってーな、謝れよ」と強い口調で言いました。

「すみません」

わたしはぺこりと頭を下げました。

顔を上げると原田くんはもう、
そこにはいませんでした。

「ロボットって結構使えるよね」
佐藤さんの声が教室から聞こえてきました。

「喋らないし やな感じけどパシリとしては
役に立つよね!」
「この調子でどんどんいじめてやろ」

クラス全体が笑っています。

わたしが教室に入ると笑い声はピタリと止みました。

席に着いて、本を読みます。

今日もまたいつもと変わらない 
日常が過ぎていきます。

◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

「ただいま」

返事はありません。
わたしはリビングの扉を開けました。

電気をつけると、散らばった洗濯物が
目に入りました。

わたしは、床に座り、洗濯物を畳みます。

ちなみに両親は離婚していて、
母はシングルマザーです。

ここ何日か帰ってきていません。
恋人の元へ行っているのでしょう。

洗濯物を畳み終えると、わたしは料理の準備を
始めました。

今日は、肉じゃがにします。

わたしはじゃがいもの皮をピーラーで
剥き始めました。


肉じゃがができると同時にご飯も炊き上がりました。

わたしはお皿に肉じゃがを盛り、ご飯をよそいます。

「いただきます」

誰もいない部屋にわたしの言葉が響きます。

わたしは、じゃがいもを口に入れ咀嚼しました。

ガチャリ

玄関が開いた音がしました。

お母さんが帰ってきたのでしょう。

わたしはお母さんの分の夕食をよそい
食卓に出しました。

けれど、お母さんは料理に見向きもせず、
寝室に行ってしまいました。

わたしは仕方なく肉じゃがをフライパンに戻し、
ご飯にラップをして、冷蔵庫に入れました。

明日もまたこんな一日が過ぎていくのでしょう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...