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第二章
訪問者②
しおりを挟む「え? わたしが聖女ってどういうことですか?!」
「アンガス教皇!
娘はまだ13歳です!この歳で教会に入るなど!」
お母様が部屋の入り口で声を上げるが
アンガス教皇様はその言葉を遮った。
「創造神リュミエール様のお告げによって
ヴァイオレット嬢がオプスキュリテ様の闇の能力を
持つ聖女だと判明した。
教会と王家の決まりは絶対。
即刻教会へと迎え入れる」
血の気が引いていく。
わたしが闇の力を持っていると
教会にバレてしまったの?
だから教皇様が迎えに来た?
教会の聖職者となれば
わたしは王都リュミエールで
家族と離れて暮らすことになる。
神に仕える者は2度と家族と会えない。
それが教会の決まりだ。
でも、そんなの絶対嫌です!
わたしはキッとアンガス教皇を睨みつけた。
「……連絡もなく押しかけられて聖女になれと?
そんなのお断りです!
第一わたしは闇の力なんて持っていません!」
アンガス教皇様は嘲るように笑った。
「確か、大公爵家令嬢の誕生パーティーだったか。
貴方は魔力暴発を起こして倒れたことがあると
聞いている。
そして、その溢れた魔力はオプスキュリテ様の象徴の
闇の色だったとか」
……!!
「何かの間違いだ。ヴァイオレットは
闇の力など持っていない。お帰り願いたい。」
「そうですわ。私達の娘、ヴァイオレットは
至って普通の女の子です。
それに、私は風、夫のアルフレッドは水の家系。
風と水から生まれるのが闇ではおかしいでしょう?」
お母様、ナイスフォローです!
でもアンガス教皇様が魔力暴発事件のことを
『聞いた』ということは
あの場にいた誰かがアンガス教皇様に
告げ口をしたの?
「アンガス教皇様。一体誰がそのようなことを?」
「さっきも言ったであろう。リュミエール様の
お告げであると。」
アンガス教皇様は表情を変えず淡々と言う。
でも何だかモヤモヤするのは気のせい?
「もし拒否するのであれば
貴方は大切な人を失うやもしれぬ。
それでもいいのか?」
「大切な人?」
眉を顰めるとアンガス教皇様は楽しそうに笑った。
「そうだ。確か貴方はこの国の王子を
友人に持つとか。他にも下町の娘と
親しいのでしょう?」
カイルとフロルちゃんのことだ!
まさか、断ればこの2人に危害が及ぶと
脅しているの??
そう考えるとゾッとする。
「それに弟妹であるヴェルデ嬢やイリス様
にも何が起こるか……」
「やめてくださいっ!!!!!」
わたしの叫び声が屋敷に響いた。
「どうか、それだけはやめてください……」
頭を下げてアンガス教皇様に懇願する。
涙が一粒床に落ちた。
わたしの大切な人達が傷つく姿は見たくない。
「アンガス教皇!! これは立派な脅しだ!!」
お父様の怒声が遠くに聞こえる。
わたし、この世界に生まれて家族や友人と
一緒に笑い合えてとても幸せだったよ。
お父様もお母様もヴェルデもイリスも
カイルもフロルちゃんも大切な存在で
みんなと過ごす時間が宝物だった。
だからわたしは大切なものを守るために。
わたしはアンガス教皇様を見据える。
「アンガス教皇様。分かりました。
わたし、リュミエール教会へ行きます」
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