義妹と旅する車中泊生活

桜井正宗

文字の大きさ
6 / 24

キスが良い?

しおりを挟む
 駅から歩いて家を目指す。
 こんな時はマイカーなら駐車場に止めて直ぐに帰宅できるのになぁと、少し不便を感じた。それでも安い料金で乗り回せるのだから、これ以上の贅沢は言えないか。

 閑静かんせいな住宅街に差し掛かろうとした――その時。

 歩花が足を止め、ぼうっとしていた。

「ん? どうした、歩花」
「お兄ちゃん……あれ」
「あれ?」

 歩花の指さす方向へ視線を移すと、そこには『宝くじ屋』があった。外装がイエローで目立つ。あれって金運上昇を意味しているのだろうか。

 ――って、宝くじ?

「ねえねえ、お兄ちゃん。宝くじ買ってみようよ!」
「宝くじね。俺、ネットで“宝くじシミュレーション”をやった事があるけど、全然当たらなかったぞ」
「そうなの? でも、買わなきゃ当たらないじゃん~」

 それもそうだな。歩花の言っている事も正しい。しかし、確率が確率だ。何千万、何億分の一を引くだなんて強運の持ち主でないとなぁ。俺自身に運があるとは思えない。あまりお金を無駄にもしたくないのだが――。

「う~ん……でもなあ」
「じゃあ、じゃあ、歩花のおっぱい触らせてあげるから、お願いっ」


「――なッ」


 歩花は、神頼みするかのように俺を拝む。なにその魅力的すぎる好条件。いやだが、歩花は大切な妹だ。血の繋がりのない義理の妹だけど、宝くじを買うくらいで妹のおっぱいを揉みしだくとか……。
 悩んでいると、歩花はうるんだ瞳を向け、俺のそばでこう言った。


「それともキスが良い?」
「ば、馬鹿。甘えた声で言うな……興奮しちゃうだろうがっ。わ、分かった。可愛い妹の頼みだ。宝くじくらい買ってやるって」
「わーい! お兄ちゃん、大好き♡」


 こんな天使の笑顔エンジェルスマイルを向けられると、俺はもう何でも許せちゃった。


 ルンルン気分で宝くじ売り場へ向かう。幸い、行列もなく貸し切り状態。さてと、宝くじの種類は――えっ、こんなにあるの?

 ビッグジャンボ宝くじ、ミニミニ宝くじ、スクラッチ、ロム7、ロム6、ミニロム、ビンゴ10、ナンバーズ44、ナンバーズ33……と、分類されていた。


「歩花、どれにする?」
「自選ができるロム6かなあ」


 ロム6は、自分で数字を六個選んでマークシートに記入する。その数字が六つ一致すれば、一等となり最大で六億円・・・・・・らしい。


「ろ、六億円!? 一等当たったら、一生遊んで暮らせるじゃん」
「夢があるよねー! ロム7なんか十億円だよ」

 マジだ。ただし、ロム7はかなり確率が低いらしく、滅多に当たらないようだ。一口の購入金額三百円となり、高額。一方、ロム6は一口が二百円と安い。ただし、当選金額が異なってくるので高額当選を狙うなら、ビッグジャンボ宝くじとかロム7だ。


「それで、どれにするんだ?」
「う~ん……じゃあ、フィーリングでロム6にしておく」


 フィーリング、つまり己の直観を信じる――と。そうだな、結局は自分の運を信じるしかない。運否うんぷ天賦てんぷだ。

 歩花は、鉛筆えんぴつを手に取りマークシートを記入していくが、手を止めた。


「どうした、歩花」
「あのね、数字の他に『クイックピック』というのがあるの。これ、なんだろう」
「――今、調べた。略称は“QP”と言って、自動で数字を選んでくれるんだってさ。つまり、ランダムだな」

「へぇ、そういう選択もあるんだね。でも、自選にしよっと」
「分かった。千円までだからな」
「うん!」

 購入を任せ、俺は待った。
 歩花は、どうやら自身と俺の『誕生日』を混ぜて数字を買ったらしい。誕生日買いかぁ。戦略としてはアリらしいな。それで一等や三等を当てた事例もあるようだ。

 マークシートに記入を終えた歩花は、お金を受付窓口で支払い『宝くじ券』を手にした。これでもう返金は出来ないし、抽選日を待つだけ。

「お疲れ、歩花。抽選日は今日の十八時からだってさ。もうあと一時間もないな。ギリギリだった」
「ありがとね、お兄ちゃん。うん、楽しみ!」

 これでようやく家に帰れるな。
 帰り道を再び歩きだし、自宅へ向かった。すると、ちょうど両親が家から出てくるところだった。


「親父、母さん。どうしたん?」
「おぉ、かいと歩花。おかえり。うん、父さんと母さんは、これからドバイへ海外旅行だ! 楽しんでくるから、しばらく二人で過ごしなさい」

 ――と、親父はさも当然のように言った。いやいや! いきなり海外旅行とか、いつの間にそんな計画をしていたんだ。

「ちょっと待ってくれ。歩花と二人きりで過ごせってか?」
「回はもう大学生だろう。良い大人なんだ、歩花の面倒を見てあげなさい。ほら、お前は免許も取れたし、ちょうど二人とも夏休みなんだから、旅行でも行くといい」

「んなムチャな。足もないし、お金もないよ。どうやって生活すればいい」
「車も金も貸してはやれんが、なんとかせい。回、お前の強靭きょうじんな生活能力なら何とかなるだろう」

 相変わらずドケチな親父だ。
 まあ、親父が厳しいのは今に始まった事ではない。“甘えるな”が親父の教育方針だったのは理解しているし、だから今まで自分で何とかしてきた。それに、俺を評価して認めてくれるのは単純シンプルに嬉しかった。


「分かったよ。人生は山あり谷ありだよな。酷道こくどうを乗り越えてみせるよ」
「さすが我が息子だ。歩花、回の面倒をよぉ~く見てやってくれ」

 って、言ったそばからそれかよ!

「お任せ下さい、お義父とうさん」
「うむ、歩花は良い子だなぁ! 回も見習えよ、フハハハハ!」


 馬鹿笑いして親父は、母さんを連れて行ってしまった。馬鹿夫婦め……ラブ度だけは高めだから、仲睦なかむつまじく微笑ましいけど。

「歩花、しばらく二人きりだってさ」
「うんうん! お兄ちゃんと二人きり……やばぁ、ドキドキしてきた。勝負下着買っておかなきゃ」

 ――え?

 語尾ごびが極端に小声だったのでよく聞こえなかった。とにかく、嬉しそうだな。あの感じなら、歩花も不満はなさそうだ。歩花との仲を深める良い機会チャンスではあるか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~

桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。 高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。 見知らずの後輩である自分になぜと思った。 でも、ふりならいいかと快諾する。 すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

処理中です...