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辺境伯令嬢と皇帝 - 5

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 馬を降り、堂々と正面へ向かう陛下。
 扉を蹴飛ばして侵入した。
 ……意外とワイルドなのね。

 家の中へ入ると、驚く姿のフラッド伯爵。

「な、なんだ貴様――って……ん? まさか、ジュリアス皇帝陛下……と、クレメンタイン!? 馬鹿な!! なぜ!」

 驚愕する髭面の伯爵は焦りながら後退していく。
 陛下はそんな伯爵を睨みつつ、追い詰めていった。

「フラッド伯爵。お前は辺境伯令嬢クレメンタインを騙し、捨てただけでなく……帝国にダークマーケットを置き、不正なポーションの売買をした。その罪、死に値する」

「ち、違う! 私ではない!!」

「惚けるな。お前はもう終わりだ。クレメンタイン、君の好きにするといい」

 陛下はそうおっしゃってくれた。
 わたしは、無様に震える伯爵を見下した。

「フラッド伯爵……」
「ク、クレメンタイン! なぜ生きている! 私は確かにお前を底なし沼・・・・に落としたはず!!」

「なにを言っているのですか。あそこはただの畑。そんな底なしとかではなかったです。そんなことよりも、わたしは貴方を許せません」

「私をどうする気だ!? 殺すのか!!」

「ええ、殺します。容赦しませんよ」
「くっ、この人殺しが!!」
「伯爵は、なにか勘違いをしていらっしゃる」

「なんだと……」

「殺すと言っても、社会的に殺すだけです。伯爵、貴方は爵位を奪われ、ただの平民となり……お金持も地位も全て奪われて……国外追放されるんです。そうでしょう、陛下」

 わたしは陛下に確認した。
 陛下は、馬で移動中にそう約束してくれた。

「そ、そんな勝手が許されるか!!」
「許される。僕が皇帝だ。しかし、一発ぐらいはぶん殴らないとクレメンタインの心のもやが晴れぬであろう」


「な、なにを――ぐほおおおおおおッッ!!」


 その瞬間、拳が伯爵の頬にめり込んだ。
 伯爵の顔は半分潰れ、更に吹き飛んで壁に激突した。


「一発は一発だ。そうであろう、クレメンタイン」
「ありがとうございます。胸がスッとしました」


 その後、フラッド伯爵――いえ、彼は全てを失った。
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