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第1話 製造スキル
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「名前は『レイジ・ハークネス』か。唯一の特技はゴミ製造スキルぅ? 帝国兵では何の役にも立たんクソスキルだ。……そうだな、雑兵の枠なら空いているから、トイレ掃除くらいなら任せてもいいぞ」
俺は帝国兵になるべく、志願していた。
長テーブルに足を乗せ、パイプタバコを吹かせる男は帝国のそこそこ偉い分隊長・ユピテルとかいう髭面のオッサンで、面接官だった。
「わ、分かりました。トイレ掃除でも何でもします!」
「そうか。では、さっそく採用してやろう。だが、まずは一ヶ月はトイレ掃除だ。始めろ」
「……へ」
「なにをボサッとしている。私は始めろと言った」
「トイレの場所も分からないんですが……」
「そんなものは自分で判断し、自分で決めろ。嫌なら帰れ」
いかん。秒でクビなんて最悪だ。
俺は踵を返して退室。
フィーリングでトイレを目指したのだが――。
「ぐぁっ……」
部屋を出て早々、足を引っ掛けられた。
激しく転倒し、俺は顔面を打ちつけた。激しい痛みが襲って息苦しい。
「だっせええ! このガキだっせえ!」
「ワハハハハ……止めてやれよ、カイル。そいつは今日入ったばかりの雑兵だぜ。実は、そんな枠もないんだけどな……ワハハハハ!」
「つまり、コイツは無能ってワケだ。精々がんばれよ、新人」
男二人が俺を馬鹿にして、素通りしていった。……くそ、今に見てろ。いつかギャフンと言わせてやる。
なんとか見つけ出したトイレに向かえば、さっきの二人と遭遇した。目つきの悪い茶髪の二人。……なんでココにいるんだよぉ。
「……あ」
「おいおい、ふざけんなよ」
「なに見てんだよ、雑兵」
その瞬間、俺はボコボコに殴られ、蹴られ……汚いトイレの水もぶちまけられ、仕舞いには便器に顔を突っ込まされた。
「…………し、死んでしまう」
「お~~~っと、ここまでにしといてやるか!」
「こいつ白目剥いて、泡噴いてやがるぜ~!」
ガハハハハと高笑いして、二人は消えた。
やっといなくなったか……げぼっ。
◆
俺はそれから一週間、耐え続け……
トイレ掃除を続けては、二人組にボコられた。
そんな無茶な生活を続けていれば、ストレスもマッハで溜まり……俺は意識を失って、倒れた。
「――――」
意識を取り戻すと、誰かが助けてくれていた。どうやら、病室だろうか。そんな薬品の匂いのする空間のベッドにいた。
「……レイジ・ハークネスさんですね」
声がした。
女の子の優しくて、甘い声。
「……俺だけど」
銀髪の少女は、エメラルドグリーンの瞳で優しく微笑み、ハンカチで俺の顔を拭ってくれた。……な、なんて優しくて可憐な人なんだ。
「わたしはルシア。この病室を担当しております、枢機卿です」
少女、ルシアはとんでもない事を口走っていた。俺の耳が腐っていなければ、今この子……『カーディナル』と。それは、プリーストの最上級職。世界で数える程しかいない存在だ。
そうか、帝国は優秀な人材が集中しているから、こんな子もいるんだ。
「よ、よろしく……俺、雑兵だけど」
「ええ、存じております。一週間前、変わった人が入隊したと。ですが、正式なものでもないようですし、試験的な採用だったかもしれませんね」
そうだったのか。
となると、クビも時間の問題か。
父さんの反対を押し切って、やっとここまで来れたのに。やっと兵士になれたと思ったのに……全部見返してやろうと思ったのに……結局、トイレ掃除もままならず、達成出来なかった。
「あぁ……俺はおしまいだ」
「そんな事はありません。わたし、見ていましたよ。あなたの頑張ろうって気持ちを。だから、諦めちゃダメです」
そんな風に笑顔で励まされたのは、人生で初めてだった。……女の子に、こんな美少女に諦めないでって言われたら、そりゃまだ頑張れる気がした。
「そうだな、もうちょっと頑張ってみよう」
「その意気です。では、これはほんの少し、わたしからのささやかなプレゼントですが」
ルシアは、俺の手を握ってくれると――
「あなたに祝福が訪れますように」
青白い光が包み込んで、ふわっとした気持ちになった。……なんだろう、これ。不思議な光だ。なにか変わったところはなさそうだけど。
「いったい……」
「きっとお役に立つと思います」
役に立つ?
俺は気になって、自身のステータスとかスキルを確認した。……スキルだ。スキルに変化があった。
俺のスキルはひとつ。
ゴミ製造スキルだけだった。
それが変化し『経験値製造スキル』となっていた……!
「こ、これは――」
内容を確認すると、とんでもない効果が記されていた。こんなの、レベルアップし放題じゃないか……!
俺は帝国兵になるべく、志願していた。
長テーブルに足を乗せ、パイプタバコを吹かせる男は帝国のそこそこ偉い分隊長・ユピテルとかいう髭面のオッサンで、面接官だった。
「わ、分かりました。トイレ掃除でも何でもします!」
「そうか。では、さっそく採用してやろう。だが、まずは一ヶ月はトイレ掃除だ。始めろ」
「……へ」
「なにをボサッとしている。私は始めろと言った」
「トイレの場所も分からないんですが……」
「そんなものは自分で判断し、自分で決めろ。嫌なら帰れ」
いかん。秒でクビなんて最悪だ。
俺は踵を返して退室。
フィーリングでトイレを目指したのだが――。
「ぐぁっ……」
部屋を出て早々、足を引っ掛けられた。
激しく転倒し、俺は顔面を打ちつけた。激しい痛みが襲って息苦しい。
「だっせええ! このガキだっせえ!」
「ワハハハハ……止めてやれよ、カイル。そいつは今日入ったばかりの雑兵だぜ。実は、そんな枠もないんだけどな……ワハハハハ!」
「つまり、コイツは無能ってワケだ。精々がんばれよ、新人」
男二人が俺を馬鹿にして、素通りしていった。……くそ、今に見てろ。いつかギャフンと言わせてやる。
なんとか見つけ出したトイレに向かえば、さっきの二人と遭遇した。目つきの悪い茶髪の二人。……なんでココにいるんだよぉ。
「……あ」
「おいおい、ふざけんなよ」
「なに見てんだよ、雑兵」
その瞬間、俺はボコボコに殴られ、蹴られ……汚いトイレの水もぶちまけられ、仕舞いには便器に顔を突っ込まされた。
「…………し、死んでしまう」
「お~~~っと、ここまでにしといてやるか!」
「こいつ白目剥いて、泡噴いてやがるぜ~!」
ガハハハハと高笑いして、二人は消えた。
やっといなくなったか……げぼっ。
◆
俺はそれから一週間、耐え続け……
トイレ掃除を続けては、二人組にボコられた。
そんな無茶な生活を続けていれば、ストレスもマッハで溜まり……俺は意識を失って、倒れた。
「――――」
意識を取り戻すと、誰かが助けてくれていた。どうやら、病室だろうか。そんな薬品の匂いのする空間のベッドにいた。
「……レイジ・ハークネスさんですね」
声がした。
女の子の優しくて、甘い声。
「……俺だけど」
銀髪の少女は、エメラルドグリーンの瞳で優しく微笑み、ハンカチで俺の顔を拭ってくれた。……な、なんて優しくて可憐な人なんだ。
「わたしはルシア。この病室を担当しております、枢機卿です」
少女、ルシアはとんでもない事を口走っていた。俺の耳が腐っていなければ、今この子……『カーディナル』と。それは、プリーストの最上級職。世界で数える程しかいない存在だ。
そうか、帝国は優秀な人材が集中しているから、こんな子もいるんだ。
「よ、よろしく……俺、雑兵だけど」
「ええ、存じております。一週間前、変わった人が入隊したと。ですが、正式なものでもないようですし、試験的な採用だったかもしれませんね」
そうだったのか。
となると、クビも時間の問題か。
父さんの反対を押し切って、やっとここまで来れたのに。やっと兵士になれたと思ったのに……全部見返してやろうと思ったのに……結局、トイレ掃除もままならず、達成出来なかった。
「あぁ……俺はおしまいだ」
「そんな事はありません。わたし、見ていましたよ。あなたの頑張ろうって気持ちを。だから、諦めちゃダメです」
そんな風に笑顔で励まされたのは、人生で初めてだった。……女の子に、こんな美少女に諦めないでって言われたら、そりゃまだ頑張れる気がした。
「そうだな、もうちょっと頑張ってみよう」
「その意気です。では、これはほんの少し、わたしからのささやかなプレゼントですが」
ルシアは、俺の手を握ってくれると――
「あなたに祝福が訪れますように」
青白い光が包み込んで、ふわっとした気持ちになった。……なんだろう、これ。不思議な光だ。なにか変わったところはなさそうだけど。
「いったい……」
「きっとお役に立つと思います」
役に立つ?
俺は気になって、自身のステータスとかスキルを確認した。……スキルだ。スキルに変化があった。
俺のスキルはひとつ。
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