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第16話 裏切者
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赤い光は浮遊し、どこかへ向かっていた。
この方角は……ケラウノス騎士団?
どうして、そっちへ?
「む?」
光は騎士団の中へ……嘘だろ。
まさか、この中に裏切者が?
仕方ない、このまま追い掛けよう。
特定しないと!
こっそり騎士団へ侵入し、赤い光を追っていく。
「おいおい……」
懐かしい通路を通っていく。
かつて俺が雑用をして、モップ掛けやらしまくっていた……この通りは、騎士達の部屋に繋がっている。……騎士の誰かが殺人鬼って事か。
やがて、赤い光はある部屋に。
「……ジョンか」
亡霊騎士の正体は、ジョンだった。
だが、これだけじゃ証拠にはならない。
この日は撤退し、俺はルシアとラティと合流し、ライトニング家へ戻った。
「――というわけだ。ケラウノス騎士団のジョンが犯人だ」
「うそ……」
「そうでしたか」
ルシアはショックを、ラティは意外そうでもない感じに納得していた。
「ラティ、その反応は何か思う所が?」
「彼はああ見えてかなり危険人物とされていたのです。あのユピテル様でさえ、彼を危険視していた。けれど、殺人を犯していたとは……」
「だが、まだ決定的な証拠がない。そこでだ、俺は経験値クリスタルでヤツを釣る。味方だと思わせて証拠を掴むんだ」
このプランでいくしかない。
多少のリスクは承知の上だ。
◆
――翌日。
ケラウノス騎士団へ向かい、俺はジョンを訪ねた。
「……誰だ――って、お前! なぜ此処に!」
「まてまて、そう警戒するな。今日は話があってな」
「は、話だと!? ふざけるな! この前は逃げたクセに」
「落ち着けって。これ、なんだか分かるか?」
赤いクリスタルを差し出す。
ジョンは物珍しそうに見つめた。
「なんだこれは」
「これは経験値クリスタル。使うと経験値が手に入る優れものだ。本当だぜ、一個試しに使ってみるといい」
「……バカバカしい」
「本当だって」
「…………」
渋々、ジョンはクリスタルを手にして使用した。
「なっ……本当に経験値が入りやがった! 本物かよ。なんだこのクリスタル。こんなアイテムは聞いた事がないが」
「ああ、俺しか知らない。そこでだ、俺と組め。そしたら、この経験値クリスタルをもっと分けてやる。そうすれば、お前は一気にレベルアップできて、出世も出来るぞ」
「……まじかよ」
唖然となるジョンの顔は迷っていた。
さあ、選ぶがいい。
「どうする?」
「……て、てめぇの力なんて……いや、だがこれはすげぇ。で……見返りは何だ?」
来た。これを待っていた。
「カイルの事を教えてくれ、ヤツはどうなった?」
「それだけでいいのか? まあいい……ヤツは病棟だよ。精神をかなり病んでしまってね、プライドもズタズタさ。お前との決闘で敗北したのが相当効いたらしい」
やれやれとジョンは呆れていた。
「そうか」
「あの分だと除隊になるだろうな。使い物にならなきゃ捨てられる、それが世の常だろう」
「かもな」
適当に相槌し、俺は機会を伺った。
◆
俺はそれから、一週間ほど掛けてジョンと信頼関係を構築。部屋の出入りも出来るようになっていた。
ある日。
「ユピテル分隊長……」
「なんだレイジ・ハークネスではないか。貴様、こんな所で何をしている。貴様は追放処分になって、この騎士団には二度と出入りできないはずだ」
「ジョンと友達なんです、俺。だから、友達として来ているだけっす」
そう返すと、ユピテルは眉をぴくっと吊り上げていた。
「レイジ・ハークネス……何を企んでいる」
「なにも。ただ遊びに来てるだけですが」
「お前は私を恨んでいるだろう」
「恨んでいません」
「恨んでいるだろう!」
「いません」
根気よく返事を返すと、分隊長は諦めた。
「そうか、レイジ・ハークネスよ。お前の所にいるルシア様だが、彼女はいつかお前を裏切るぞ」
さすがにカチンときた。
「ルシアの名前を出すな。あの子は、大切な仲間だ。裏切るなんて言うな」
「さてどうかな。そういえば、メイド騎士もお前の所に……ライトニング家へ上がり込んだらしいな。まったく、レイジ・ハークネス、お前はというヤツはどこまでクズなのだ。我が騎士団を潰す気じゃあるまいな?」
話にならんなと、俺は背を向けた。
「分隊長。俺は仲間を信じています。この騎士団以上にね」
――あと少し。
もう少しで証拠を押さえられる。
この方角は……ケラウノス騎士団?
どうして、そっちへ?
「む?」
光は騎士団の中へ……嘘だろ。
まさか、この中に裏切者が?
仕方ない、このまま追い掛けよう。
特定しないと!
こっそり騎士団へ侵入し、赤い光を追っていく。
「おいおい……」
懐かしい通路を通っていく。
かつて俺が雑用をして、モップ掛けやらしまくっていた……この通りは、騎士達の部屋に繋がっている。……騎士の誰かが殺人鬼って事か。
やがて、赤い光はある部屋に。
「……ジョンか」
亡霊騎士の正体は、ジョンだった。
だが、これだけじゃ証拠にはならない。
この日は撤退し、俺はルシアとラティと合流し、ライトニング家へ戻った。
「――というわけだ。ケラウノス騎士団のジョンが犯人だ」
「うそ……」
「そうでしたか」
ルシアはショックを、ラティは意外そうでもない感じに納得していた。
「ラティ、その反応は何か思う所が?」
「彼はああ見えてかなり危険人物とされていたのです。あのユピテル様でさえ、彼を危険視していた。けれど、殺人を犯していたとは……」
「だが、まだ決定的な証拠がない。そこでだ、俺は経験値クリスタルでヤツを釣る。味方だと思わせて証拠を掴むんだ」
このプランでいくしかない。
多少のリスクは承知の上だ。
◆
――翌日。
ケラウノス騎士団へ向かい、俺はジョンを訪ねた。
「……誰だ――って、お前! なぜ此処に!」
「まてまて、そう警戒するな。今日は話があってな」
「は、話だと!? ふざけるな! この前は逃げたクセに」
「落ち着けって。これ、なんだか分かるか?」
赤いクリスタルを差し出す。
ジョンは物珍しそうに見つめた。
「なんだこれは」
「これは経験値クリスタル。使うと経験値が手に入る優れものだ。本当だぜ、一個試しに使ってみるといい」
「……バカバカしい」
「本当だって」
「…………」
渋々、ジョンはクリスタルを手にして使用した。
「なっ……本当に経験値が入りやがった! 本物かよ。なんだこのクリスタル。こんなアイテムは聞いた事がないが」
「ああ、俺しか知らない。そこでだ、俺と組め。そしたら、この経験値クリスタルをもっと分けてやる。そうすれば、お前は一気にレベルアップできて、出世も出来るぞ」
「……まじかよ」
唖然となるジョンの顔は迷っていた。
さあ、選ぶがいい。
「どうする?」
「……て、てめぇの力なんて……いや、だがこれはすげぇ。で……見返りは何だ?」
来た。これを待っていた。
「カイルの事を教えてくれ、ヤツはどうなった?」
「それだけでいいのか? まあいい……ヤツは病棟だよ。精神をかなり病んでしまってね、プライドもズタズタさ。お前との決闘で敗北したのが相当効いたらしい」
やれやれとジョンは呆れていた。
「そうか」
「あの分だと除隊になるだろうな。使い物にならなきゃ捨てられる、それが世の常だろう」
「かもな」
適当に相槌し、俺は機会を伺った。
◆
俺はそれから、一週間ほど掛けてジョンと信頼関係を構築。部屋の出入りも出来るようになっていた。
ある日。
「ユピテル分隊長……」
「なんだレイジ・ハークネスではないか。貴様、こんな所で何をしている。貴様は追放処分になって、この騎士団には二度と出入りできないはずだ」
「ジョンと友達なんです、俺。だから、友達として来ているだけっす」
そう返すと、ユピテルは眉をぴくっと吊り上げていた。
「レイジ・ハークネス……何を企んでいる」
「なにも。ただ遊びに来てるだけですが」
「お前は私を恨んでいるだろう」
「恨んでいません」
「恨んでいるだろう!」
「いません」
根気よく返事を返すと、分隊長は諦めた。
「そうか、レイジ・ハークネスよ。お前の所にいるルシア様だが、彼女はいつかお前を裏切るぞ」
さすがにカチンときた。
「ルシアの名前を出すな。あの子は、大切な仲間だ。裏切るなんて言うな」
「さてどうかな。そういえば、メイド騎士もお前の所に……ライトニング家へ上がり込んだらしいな。まったく、レイジ・ハークネス、お前はというヤツはどこまでクズなのだ。我が騎士団を潰す気じゃあるまいな?」
話にならんなと、俺は背を向けた。
「分隊長。俺は仲間を信じています。この騎士団以上にね」
――あと少し。
もう少しで証拠を押さえられる。
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