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第37話 戦争勃発
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静かな夜の中、素振りを続けた。
「……一万!」
ついに一万回の素振りを達成した。もう鍛練の必要もないのかもしれない。でも、それは違う。俺は、ルシアを守る為に剣を振るい続ける。
前にサラが話していた『呪い』の話も気になるし……皇剣になればきっと――。
「こんな夜遅くまでご苦労様です、主様」
観念した表情で寄ってくるラティは、いつものようにタオルを寄越してくれた。俺はそれを受け取り、汗を拭き取った。
「いつもすまない」
「もう諦めました。主様を止められる方はいません。あるいはルシア様なら……」
ルシアは疲労で寝てしまっている。だから俺は、こっそり抜け出して素振りを続けていた。
「俺は自分の為じゃない、ルシアの為に力をつける。もちろん、ラティやライトニング家も大事だよ。でも、あの子は俺が必要だし、俺もあの子が必要なんだ」
「主様のお気持ちはよく分かりました。わたくしは、変わらずついていきます」
「いいのか? 俺は……」
「いいんです。桜花を託した時点で、主様は主様なんですから」
そうだな。そうだった。
そろそろ屋敷に戻ろうと思った、その時。
ドカンと大爆発が各地で起こった。
「――――なっ……!?」
「なんです!?」
帝国アイギス中で連鎖爆発が……なんだこれ、何なんだよこれ! あっちこっち爆発を繰り返し、建物が吹っ飛んでいた。
その影響で火災さえ起きて、次第に悲鳴が上がった。
「まるで戦争だぞ、これは! とにかく、エドウィンに報告だ」
「ええ」
◆
屋敷に戻って、エドウィンの部屋をノックした。反応は……直ぐにあった。険しい表情で剣を握り、けれど優しい目で俺を見据えた。
「……ああ、これは芳しくない。トライデントの一環ではあるだろう。だが、いくらなんでも派手すぎる。リジェクトの犯行の可能性は十分にある。家に被害がなかったのは、今日、ルシア様に依頼した『風帝結界』のおかげだろうな」
「風帝結界?」
「そうだ。ルシア様は枢機卿だからな。それくらいの結界を張れる力を持っている。だが、魔力量も多くてね……今は眠っているんじゃないかな」
そうか、今日はなんか眠そうだったし、淋しそうで甘えん坊だったわけだよ。全てはこれの為だったってワケか。
「エドウィン、俺はどうすれば」
「君はこのライトニング家を守護してくれ。それが傭兵としての務めだろう。私は街に繰り出し、この騒ぎを起こした者に鉄槌を下す。頼んだよ」
「分かった。この家は任せてくれ」
微笑むエドウィンは、ラティにも「頼んだ」と短く伝えて去った。……外はどうなってしまうんだ。
俺は心配になって、ルシアの部屋へ向かった。ラティも一緒だ。
「ルシア、入るぞ」
ノックして中へ。
すると、ベッドで眠るルシアの姿。
良かった、無事か。
「主様。どうやら、ルシア様は風帝結界に集中されているようです。ここは邪魔しない方がいいかと」
確かに、激しい魔力の流れを感じていた。魔法使いでない俺でさえ分かるのだから、これが如何に異常が分かる。
「ああ、分かった。ラティ、ルシアを頼む」
「……え、主様は?」
「俺は外の様子を見に行く」
「いけません。エドウィン様にここを守るように言われているではありませんか……。それに、わたくしより主様がルシア様のお傍にいるべきです。今このような状況でも、ルシア様はきっとお喜びになられますから」
ラティ……。
危なかった。俺は自分を見失う所だった。このまま何の考えもなしに飛び出していたのなら、何もかもを失っていたかもしれない。
信じよう。
ルシアを――。
「そうだな」
ベッドの横で腰を下ろし、ルシアの手を握った。苦悶だった彼女の表情が綻んだように見えた。……絶対に守るからな。
「……一万!」
ついに一万回の素振りを達成した。もう鍛練の必要もないのかもしれない。でも、それは違う。俺は、ルシアを守る為に剣を振るい続ける。
前にサラが話していた『呪い』の話も気になるし……皇剣になればきっと――。
「こんな夜遅くまでご苦労様です、主様」
観念した表情で寄ってくるラティは、いつものようにタオルを寄越してくれた。俺はそれを受け取り、汗を拭き取った。
「いつもすまない」
「もう諦めました。主様を止められる方はいません。あるいはルシア様なら……」
ルシアは疲労で寝てしまっている。だから俺は、こっそり抜け出して素振りを続けていた。
「俺は自分の為じゃない、ルシアの為に力をつける。もちろん、ラティやライトニング家も大事だよ。でも、あの子は俺が必要だし、俺もあの子が必要なんだ」
「主様のお気持ちはよく分かりました。わたくしは、変わらずついていきます」
「いいのか? 俺は……」
「いいんです。桜花を託した時点で、主様は主様なんですから」
そうだな。そうだった。
そろそろ屋敷に戻ろうと思った、その時。
ドカンと大爆発が各地で起こった。
「――――なっ……!?」
「なんです!?」
帝国アイギス中で連鎖爆発が……なんだこれ、何なんだよこれ! あっちこっち爆発を繰り返し、建物が吹っ飛んでいた。
その影響で火災さえ起きて、次第に悲鳴が上がった。
「まるで戦争だぞ、これは! とにかく、エドウィンに報告だ」
「ええ」
◆
屋敷に戻って、エドウィンの部屋をノックした。反応は……直ぐにあった。険しい表情で剣を握り、けれど優しい目で俺を見据えた。
「……ああ、これは芳しくない。トライデントの一環ではあるだろう。だが、いくらなんでも派手すぎる。リジェクトの犯行の可能性は十分にある。家に被害がなかったのは、今日、ルシア様に依頼した『風帝結界』のおかげだろうな」
「風帝結界?」
「そうだ。ルシア様は枢機卿だからな。それくらいの結界を張れる力を持っている。だが、魔力量も多くてね……今は眠っているんじゃないかな」
そうか、今日はなんか眠そうだったし、淋しそうで甘えん坊だったわけだよ。全てはこれの為だったってワケか。
「エドウィン、俺はどうすれば」
「君はこのライトニング家を守護してくれ。それが傭兵としての務めだろう。私は街に繰り出し、この騒ぎを起こした者に鉄槌を下す。頼んだよ」
「分かった。この家は任せてくれ」
微笑むエドウィンは、ラティにも「頼んだ」と短く伝えて去った。……外はどうなってしまうんだ。
俺は心配になって、ルシアの部屋へ向かった。ラティも一緒だ。
「ルシア、入るぞ」
ノックして中へ。
すると、ベッドで眠るルシアの姿。
良かった、無事か。
「主様。どうやら、ルシア様は風帝結界に集中されているようです。ここは邪魔しない方がいいかと」
確かに、激しい魔力の流れを感じていた。魔法使いでない俺でさえ分かるのだから、これが如何に異常が分かる。
「ああ、分かった。ラティ、ルシアを頼む」
「……え、主様は?」
「俺は外の様子を見に行く」
「いけません。エドウィン様にここを守るように言われているではありませんか……。それに、わたくしより主様がルシア様のお傍にいるべきです。今このような状況でも、ルシア様はきっとお喜びになられますから」
ラティ……。
危なかった。俺は自分を見失う所だった。このまま何の考えもなしに飛び出していたのなら、何もかもを失っていたかもしれない。
信じよう。
ルシアを――。
「そうだな」
ベッドの横で腰を下ろし、ルシアの手を握った。苦悶だった彼女の表情が綻んだように見えた。……絶対に守るからな。
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