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偏食の吸血鬼は人狼の血を好む・46 (R)
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だが、まだ俺はレオニスの上で腰を振っていた。
まるで盛りがついたようだ。幾度でも抱ける。コイツのフェロモンを嗅ぐたびに。
レオニスも只者じゃない。これだけ抱いてもまだ欲しいとねだってくる。ある意味「強い」。吸血鬼は体力も無尽蔵だし、好色というよりは単に性欲が体力に準じているのかもしれない。
特にレオニスはここ何百年とご無沙汰だったわけだ。力が漲り、相手がいれば、そりゃ欲しいだろう。誰だって気持ちいいことを好む。
人間に無茶をすることはなかった。脆い身体相手だと失神させかねないし、下手をすれば殺しかねない。特に発情時は。
だがレオニスは違う。俺を受け止められる。
遠慮などしなくていい。尻の穴を使う危険なセックスでも、中に出しても、コイツはものともしない。むしろするたびに初心な身体に戻っている。何も知らない無垢な体に。
夢中にならないわけがない。
だが同時に焦りも覚える。
何度俺を刻み込んでも、次の日には真新しい体になっている。いつまで経っても、俺のものになった気がしない。俺もそうだがレオニスも傷がつかない。キスマークひとつ残せないのだ。
唯一、独占欲を満たせるとするなら、レオニスの瞳だ。
俺を見上げる目。誰にも向けないような、甘い視線。この青が氷ではなく炎だとわかる瞬間。それが濡れて俺を愛しげに見る。それは俺しか知らないはずだ。
食ってしまいたい。
そう思う瞬間さえある。
今もそうだ。
ベッドの上でレオニスを貫きながら、その白い喉笛に噛みつきたいと密かに考えている。何もかもを奪いたいと、貪欲に。
「あっ…、…んっ、…ンッ…」
「イきそうか?」
「…やだ、まだ…まだ…、…ンッ!」
懸命に我慢している顔がいい。俺がまだイきそうにないのがわかっている。
「我慢するな、イけばいい」
突き方を変える。小刻みに揺らすと、俺の肩を掴む指に力がこもる。喘ぐ息に唇が開き、小さな可愛い犬歯が見える。
自ら舌を少し噛んでから、口付けをする。
血に濡れた舌を差し入れると、レオニスは鼻にかかったような甘い声をあげて吸い付いてくる。首にしがみつき、俺の舌から血を啜る。そこを素早く突いてやると、レオニスは上擦った悲鳴を上げて呆気なく達した。
「アッ、あ――っ…っ!」
俺の雄をぎゅうぎゅうと締め付けてくる。ビクビクと折り曲げた膝を震わせ、足先まで力む。
「やだ、やだって…言ったのに…っ」
身体を震わせながら、胸で息をしている。立ち上がった淡い色の乳首にまで白濁が飛んでいた。それを舐め吸うと、レオニスは悪態をつきながらも喘いだ。
「俺を待たなくていい」
「一緒が、いいって…いつも言っ…」
「俺が1回イく間に、お前が2回イけばいいだろ?」
「無茶言うなっ、それに…不公平だっ」
「不公平ってお前…」
レオニスが俺の身体を掴んで、反転する。抜けそうになって腰を押し付けたはずみで跨り乗られたから「ウッ」と呻いた。強い収縮にイきそうになった。
それがわかったのか、レオニスはすぐに俺の上で腰を揺らし始める。身体を立てて、滑らかに…強弱をつけながら…。
「ウッ…レ、レオ…っ…」
「はっ、お返しだ……あ…、…アッ…」
手綱を奪われると、コイツも男だ。叶わない。太ももで腰を挟まれながら上で腰を振られると、俺も愉悦で力が抜ける。
「あ…、…っ…、…ウ……」
「ニル、きもちい…? …もっと…か?」
ギッギッとベッドが鳴る。淡いピンクに色づいたしなやかな身体が、俺の上で艶かしく揺れ、視覚的にも興奮が募る。美しい男だ。乳房やくびれた腰がなくても、全く構わない。それよりも、ツンと小さく尖るだけの乳首の方が、いやらしいまである。
惚れた弱みか?
今や、俺の腹に打ちつけて跳ねる雄さえ愛しい。
「はっ…ハッ、…っア……」
見下ろしてくるブルーの双眸を見つめる。その瞳には、俺と同じ感情が見える。
愛と、独占欲。
俺達は似た者同士だ。
お互い、相手を喰いたいと思っている。
それを隠しながら。永遠に満たされないからこそ、惹かれ合うのかもしれない。
(だからこそ、いい…)
俺は笑った。
それを見たレオニスも、笑う。
身体を折って、俺の頭にしがみついてキスをする。最後の主導権は譲ってくれるのだ。もしくはそうされるのが好きなのか。
レオニスの尻を掴んで、突き上げる。
喘ぎながら、俺の唇を吸う。
込み上げてくる愛しさと、暴力的な欲求。指が食い込むほど、俺に腰を引き寄せ、叩きつける。
「!……、っウ、…ぐ…!」
レオニスの中で果てる。射出される滑りを感じながら余韻に突く。身体が弛緩すると、レオニスが慰撫するように俺の潰れた瞼や額にキスをした。
「……良かったか?」
浅い息の中聞かれた。
俺のセリフじゃないかと思ったが…
「ああ」
と返事をした。
シャワーさえせず、抱き合ったまま脱力していた。
レオニスの身体は俺に寄り添い、しっとりとくっついている。滑らかな肩から腰を指で辿り、時に髪を撫でるとうっとりと呻いた。すりすりと猫のように俺の肩に擦り付けてくる。
愛しい仕草で額に頬を押し当てた。
だが、その頭がハッと上がる。
「あ、そうだ」
セックスの心地よい余韻が少し飛ぶ。
「何だ」
「忘れていた、……待って」
2度も「何だ」と問うのもアレで。腕を伸ばしたレオニスを言われた通り待った。何かをチャラチャラ言わせながら、また俺の肩に顎をつけて、冷たいものを俺の胸に乗せた。
「お前に」
何かの鍵だった。可愛いデフォルメされた狼のキーホルダーが付いている。
「……年越しの贈り物? お前、用意してないって言ってなかったか?」
「私がそんな朴念仁だと?」
レオニスはニヤリとするが。リリィの恋心に気づいていない男に言われたくない台詞だ。あの女に聞かせられないなと密かに思う。
「何の鍵だ」
手に取ると、丸いキーレスエントリーのようだ。だが見たことのない形状をしている。
「見に行こう。シャワーしてから。…さ、ほら」
さっきまでの年越し耐久セックスの疲れなど感じさせない身のこなしで、レオニスがベッドから降りる。少年のように軽やかな足取りで俺をシャワールームに引き込み、一緒に身体を洗う。
「何なんだ?」
「見てのお楽しみだ」
本当に千年を生きた吸血鬼かと思うほど、あどけない笑顔。俺のための笑顔だと思うと、胸が暖かくなった。
服を着て、2人でペントハウスを出る。向かったのは私用の車両スペースだ。リムジンや戦車みたいな4WDがある、あのだだっ広い場所。エレベーターから降りると、勝手にライトがつく。
互いの腰を抱いたまま、室内に入る。変わったところは何もないようだが。
俺の腕を離れて、レオニスが先行する。4WDの影に小走りで行き、何かの布を引く。
「! …これは…」
車の影にあったのは、一台のバイク。
真新しい真っ黒のボディ。重厚な車体だが、タンデムは鹿の尻尾のように美しく跳ね上がっていた。
驚いた。
この世界で、久しぶりに見る乗り物だ。小型のバイクはあっても大型二輪は駆逐されていた。
「気に入ったか?」
ほんの少し照れ臭そうで、不安げなレオニスが近づいてくる。片腕で迎えると、奴はまた俺の胸にくっつく。
「どうしたんだ、これ」
「日本から調味料と一緒に取り寄せた。あそこは唯一大型バイクを生産している土地だから」
調味料と一緒にバイクを取り寄せる奴がいるとはな。つまりこれは日本製のバイクか。
驚くほど規格外の男だ。
キーのボタンを押すと、エンジンがかかる。低い排気音が響き、唸るようなアイドリング音が続いた。
「乗ってみて」
俺の背をレオニスが押す。
俺はそれに跨った。真新しいマシンの香りがした。滑らかなボディは顔が映るほどだ。電子制御されているのかメーター類は全てデジタルで、ライトは赤い。
「凄い…」
思わず呟いた。レオニスが微笑んだ。
「走ってくるといい。タイヤはスタッドレスになってるけど初走行は雪道だと怖いだろう。駐車場の中だけでも」
ハンドルに触れる。ふかすと排気の中に電子音が混じる。
「レオニス」
「うん?」
「乗れよ」
「え?」
「タンデム、乗れ」
レオニスはパチクリした後、慌ててバイクに近づき俺の後ろにくっついて跨った。その瞬間、少し頬が昂揚しているのを見た。
俺は昔の記憶を頼りに、マシンをスタートさせた。ぐるりと車両スペースの中でしばらく回転させ、馴染んだところでゲートを開く。そこから螺旋を描く、真夜中ガラガラの立体駐車場を走り回った。バイクの排気音だけが駐車場に響き渡る。フルスロットルはできないにしても、それなりにスピードを出して。
心地いい。
大気は冷たいが、それが今は刺激的だ。
俺の腰にしっかりと腕を回して、身を寄せるレオニスが排気音に負けないよう大声で言う。
「気に入った!?」
俺も大声で返した。
「ああ! 野生に返ったみたいだ!」
言うと、レオニスの腕がさらに強くしがみついてきた。
レオニスが「寒い!」と音を上げるまで、俺はバイクを走らせ続けた。
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