偏食の吸血鬼は人狼の血を好む

琥狗ハヤテ

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偏食の吸血鬼は人狼の血を好む・45 (R)

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 幸せは時に切なくなる。
 パーティの終わりのような、そんな悲しさが。
 いつか終わりがくるのではという、漠然とした不安を感じるからだろうか。嬉しければ嬉しいほど、それは強くなる。
 けれど、ニグレドの手がそれを癒してもくれる。彼はどんどん優しくなる。私を愚直で武骨な愛で包んでくれる。甘い蜜をこぼす花に蜂が夢中になるように、私もそれに溺れてゆく。
 人狼は凶暴だと聞いていた。戦闘に長け、好戦的だとも。けれどニグレドを知り、それが偽りだとわかった。確かに強靭で戦闘能力は高い。だがそれは誰彼なしに振るわれるものではなく、自分のルールから外れたものに対してのみだ。短気でもない。
 本当の彼は優しく、おおらかだ。そして奥ゆかしい。だからこそ愛をあまり囁かない。吸血鬼のように言葉を尽くして好意を伝えない。それがもどかしく不安に思うときもあるが、だからこそ愛しさが募る。
 ニグレドの愛を感じたい。
 もっともっと。
 時には、貪欲な愛でもいい。私が欲しくてたまらないというような…あの発情期の時味わった否応のないセックスのような。嫉妬心を煽ればあんなふうに求めてくれるだろうかとさえ、時に考えてしまう。
 わがままで、愚かな考えだ。
 嫌われたくないのに。
 大切にしてくれるだけで、充分なはずなのに。
 ダイニングの椅子に座る彼の膝に跨り乗って、キスをしながらそんな罪悪感をひとり抱く。
「愛してる、ニル…」
 そう言っても、ニグレドは微笑むだけなことがほとんどだ。そんな時、私は彼の隻眼に愛を探す。黒いまつ毛に縁取られた瞳はセクシーだ。まっすぐ見つめられる瞳は欲に濡れている。
 けれどそれを隠そうとするように、ニグレドは言う。
「血は?」
「いい。……今は…」
「抱かれたいか」
「…ん…」
 ニグレドの瞳が強く煌めく。
 ああ、綺麗。獰猛な肉欲に光るそれ。理性で押し殺した彼の本心を垣間見る。
 私はぞくりと体が震えた。それを察知したのか、手が私の腰から尻を撫でる。体を持ち上げ、抱っこの様相でバスルームへと向かう。皿は置きっぱなしだが、今はもうどうでもいい。
 脱衣スペースで降ろされ、ニグレドは自分のシャツを脱ぐ。
「ベッドじゃ?」
「……俺にシャワーを浴びさせないつもりか?」
「じゃあベッドで待っ…」
「お前も来るんだよ」
 ニットを剥かれた。裸になるとシャワールームに引き込まれる。熱いシャワーの下で、ニグレドはすぐに私を抱きしめ、唇を重ねる。
 いつもより、ほんの少し性急で。濡れた肌にも構わず唇で愛撫される。彼の雄はすでに立ち上がり、私の腹に擦れていた。
「ニル…」
 背の高い彼の首に腕を絡めて抱きつく。薄い唇に舌を這わせると、捕まえられ吸われた。
「んっ、ん……ン…」
「レオ」
「……、…ニル…もっと」
「…レオ」
 甘い囁き。私を呼ぶ声音は情熱的で。指が尻肉を掴み、割れ目へ指が入り込んでくる。さぐられ、窄まりを擦られると腰が震えた。
「あ…あ…」
「すぐに硬く閉じるな、ここは」
 棚にあったオイルを手に出して、前から手を股座に差し入れられた。ぬるりとした指が再度襞を擦った。
「しょ、うがないだろ…私は女じゃ…」
「責めてるんじゃない……こんな狭いところで、俺をよく咥えられるなと、感心してる」
「アッ…」
 指が入ってくる。爪を立てないようにゆっくり出し入れされ、指の腹がもう知られている性感を擦る。
 膝から力が抜けそうになり、肩に縋った。
「や、だめ……、だ…、立ってられない…っ」
「レオ、ここ好きだな」
「ニル…だめ…っ、…っア…!」
「ダメっていう割には、足開くじゃねえか」
 指が増える。より強く押されて、雄までが跳ねる。揺れてしまう腰を止められない。
「もう糸引いて、零れてんぞ。…そんなイイか?」
「意地悪を…するな…っ」
「…フフ…」
 知られている。少し言葉で煽られるのが好きだと。憎まれ口を叩いても、私の欲に濡れた声音には説得力がない。
 ニグレドがシャワーを止めると、後穴を探るクチクチと濡れた音がガラス張りの中に小さく響く。
「あっ、も…早く…っ」
 私も彼の雄に触れる。
 雄々しく少し反るように立ち上がり、先は濡れ、硬く、熱い。
 その楔の心地よさを知ってしまった身体だ。焦ったさに頑なさは無力だった。
「…ニル、…はやく…はやく、欲し…い…っ」
 彼の背中を引っ掻き、ねだる。隻眼がじっと私を見ていた。熱のこもった瞳に、私は胸が高鳴る。
「ニル…おねがい…」
 彼の前では子供のように甘える。何も隠せない。ニグレドも辛抱しているんだろうか、手の中で雄が震えるのがわかった。
 大理石の壁に身体を押し付けられた。背後から腰を掴まれ、ぬめる後穴に鋒があたる。
「アッ!」
 押し上げられるような力に、踵が浮いた。逃げることもできず、侵入を受け止めた。
 肩口でニグレドがフーっと息を吐いた。熱い胸板が背中に密着して、顎髭が首筋を擦った。
「狭くて、いい…。小さな尻もな…」
 低い、艶のある声が囁く。
「ニル…、は…おっき…」
「お前を欲しがってんだ」
「私…を?」
「ああ…、お前の中に種を植えたいってな…」
 まるで雄を他人事のように言う。
「ニルも…、…私に、植えたい?」
「……」
 馴染むのを待ちながら、たずねる。首を傾けてニグレドの表情を捉えようとしても、難しかった。ドクドクと脈打つ体内の雄を感じながら、欲しい言葉を待った。
 耳に触れたニグレドの唇が短く息を吐きながら言った。
「ああ。1番奥に…種を植えたい」
 その欲通りに、彼の腰が揺れ始める。腰を掴まれ、的確に突き上げてくる。その度、私の踵は浮く。
「アッア…、…あっ!」
 つま先までが持ち上がり、彼の腕が支えてくれてようやく立っていた。私達の乱れた吐息と、濡れた肌がぶつかる音が、室内に満ちる。
「レオ…」
 呻く声と共に呼ばれ、首筋に噛みつかれた。歯を緩くたてられても、今は何もかもが心地よかった。
「……ニル、そこ好き…、そこ…もっと…っ」
 腰を押し付けるような刺激に、私は呻いた。
 甘く悲鳴すればするほど、ニグレドも私の耳元で喘ぐような吐息をつく。
 彼の力だけで、腰を持ち上げられるようにスパートをかけてくる。いよいよニグレドの息も上がり、呻きを混じらせながら高まってゆく。
「ニル…、ニル…っ、一緒に…っ」
「……っ」
 蜜で濡れた私の雄が、彼の手に握り込まれた。
 打ち込まれながら、擦られて。
「ア――…!!」
 体を震わせ果てる。
 ニグレドの放った熱を、体内に感じながら。





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