「俺の親友がモテ男で俺はその親友で」

晴樹

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第6話 ……続き

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「それでどうして縛られてたんだ?」

といつもと変わらない表情で学人は聞いてきた。首を傾げるくらいしていいと思うんだが。と俺は思った。まぁ、男にそんなことされてもキモいだけだけどな。絶対やらないでほしいです。さて、質問にでも答えてやろうか。俺を助けてくれた訳だし、俺は優しいからな。俺は学人がした質問に答えてやることにした。

「あれだ、昨日のこと覚えてるか? 昨日田中先生が帰るときに起こしてくれって言ってただろ。それを忘れて、帰っちまっただろ? それで怒ってなぜかその場にいた俺だけ罰を受けたってわけだ」

「……そうだったのか。それは大変だったな」

と学人はハッハッハとまるで嘘っぽい笑い方をした。俺は慣れていたから、またか……と思ったが知らんヤツが見たら馬鹿にされてるとしか思わないだろう。残念ながらこれがこいつの笑い方だ。
そんなことよりも俺は完全に他人事のように話している方に怒りを覚えるんだけどな。口にはしないが……

「それよりも暇だな……」

先の話も終えて、暇になった。
俺たちは定位置に座って5時まで暇を潰す。その間いつも通り俺と学人は話をする。そしていつも通りそんな学人を女達は熱い視線で見つめていた。当然そんな視線を向けられていることは学人自身は全く気づいていないわけだが。それもいつも通りなわけで、そうやって過ごすのがこの部活である。

「そう言えば、田中先生はまた奥で寝ているのか?」

「あぁ、そうだな……ちゃんと今日は起こして帰るぞ! そうでなければまた明日俺が縛られちまうからな! 頼むぞ」

「分かっている」

と学人は掛けているメガネを上下させながら答える。
ほんとに分かってるのか不安にさせる。見た目は優秀そうだが、少し抜けてる所があるからな。まぁ、俺よりマシだけどな。頭も悪く、しっかりしていない俺よりかは。

「よし帰るか」

「あ?」

突然学人がそんなことを言うからビックリしてしまった。学人が自ら帰ると言うことはあまり言うことが無いからだ……いつもなら俺が先に言うはずなんだが、先越されちまった。

俺は部室に掛けられた時計を見る。ちょうど5時を指していた。 

「さぁ、帰ろう皆」

そう言うと学人は帰りの支度を始めて部室を出ようとする。それについて行こうとする部活の女達を押しのけて、学人の帰りを妨害する。

「何だ? 帰りたくないのか?」

「違うわ!」

「なら、何だ?」

こいつマジで言ってんのか!
それなら怒りが湧いてきそうだ。

「寝ている先生起こしていくんだろ? 忘れたのか」

「……覚えてるぞ。わすれるわけないだろ」

そう言って学人は部室の奥に引き返して田中先生を起こしに行った。
その間女達は俺に冷たい視線を送っていた。
その目は『お前が行けば?』と訴えていた。
その通りだ。お前達は間違っちゃぁいない。
なら、どうしてそうしたのか? それは……面倒だったからだ。それ以上の理由は持ち合わせていない!

「ふぁぁ~~」

大きなあくびをして田中先生が奥の部屋から出てきた。続いて学人も出てくる。

「「学人君に起こされるなんて羨ましい……」」

ぎゃると武道家はまたハモりながらそう言った。

「へへ、私は毎朝起こしてもらってるけどね」

と2人には聞こえない声でひとり紅羽ちゃんが呟いた。どうしてこうも競いたがるのかね……
俺は静かにその場に立って見守っていた。




「あ、忘れてた!」
突然そう言ったのは紅羽ちゃんだった。
学人の後ろを歩いていた紅羽ちゃんに視線が集中する。
「ちょっと、取りに行ってくる。先に帰ってて」
そう言って走って来た道を引き返していく紅羽ちゃんを見守る。
「帰っててと言われてもな……」
と兄である学人が困った顔をしていた。どうやら心配らしい。
「俺達も引き返すか?」
と俺が提案すると、また困ったようにしながら
「でも先に帰っててと言われたしな~」
と言い始める。めんどくさい奴だな。
「だから、乙樹お前待っててやってくれないか?」
「はぁ?」
突然何を言い出すんだこいつは……
「俺は帰っててくれと言われてしまったからな。だからお前に頼むしか……」
「いやいや、あれはこの場にいたやつ全員に言ったんじゃないのか! 俺も帰っていいだろ」
「本当にそう思うか?」
「え……」

と真面目な顔で学人は俺の顔をみながらそう言った。
考えてみた。紅羽ちゃんが俺に対してそんなことを言うかどうか。あれは学人に向けた言葉だったのではないだろうか。学人と一緒にいる時に発した言葉は学人以外の人物にかかるだろうか……
答えは否。ありえない。恋する乙女がそれ以外の男に向けて言葉を発する訳がないのだ。
だから俺は残らなければ行けないのか……

「分かった……よ……」

「よし、任したぞ」

そう言うと学人は両脇に女を連れて帰って言った。両脇の女は言うまでもなくぎゃると武道家だ。

はぁ……待つのか俺……あれ? よくよく考えたら俺に向けて言ってないと言うことは俺なんてどうでも良かったんじゃね? 帰っても文句を言われないんじゃね?

気づくのが遅かった……

俺はため息を吐いて立ち尽くした。
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