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第5話 勇者 VS 女騎士
しおりを挟む「どうした、勇者反撃しないのか」
「くっ…」
僕は防戦一方だった。女騎士の剣の扱いは僕以上だ。攻撃を裁くので精一杯で攻撃する隙がなかった。
ここまで一方的になるとは予想外だった。僕は必死に捌き、致命傷を受けないように頑張った。
しかし、一瞬の隙を作ってしまい、横腹を切られた。そこから血が流れる。思った以上に、深く切ってしまって、血がドバドバ出ている。
まずい。このままでは殺される。
僕は命の危険を感じた。今まで、元いた世界ではこんなことはなかった。なんたって、相手とこうも接近戦で戦うことは今までなかったからだ。今までなかった?
僕は思い出した。こんな戦い方は僕はしてこなかったじゃないか。僕の戦い方はこうだったはずだ。僕は右手で持っていた剣を左手に持ち替えて、剣を下ろした。そして右の手のひらを相手の方にむけた。まるで手から何かを放つかのような体制だ。
その動きを見て、女騎士は攻撃をやめて身構える。普通だったら、そんなはったりのような僕の行動は現実的に考えると、何も右手からは出ないと思い、攻撃してくるものだと思った。しかし、女騎士は攻撃どころか、何かが放たれると本気で思っているようだ。その何かがわからないからむやみに動けないといったところだろう。この国では本当に右手から何か放つ人間がいるのだろうか。
でも、動かないのはありがたい。僕はこのタイミングで女騎士に問いかけた。
「なぁ、あんたは姫様のこと好きだろ」
とまるで女騎士の動揺を誘うかのような切り口で話し始めた。
「ふ、何を言い出すかと思えば、そんなことか…当たり前だろ、姫様のことが好きなくらい。私は姫様に使える騎士だぞ!」
「いや、お前の好きは少し違う。お前の好きというのは、姫様の体が好きなんだろ」
「な、何を言い出すんだお前は」
僕は女騎士が否定するのも無視して話を続ける。
「簡単に言えば独占欲、そして、性欲だ」
「!?」
「お前は、姫様のそばにいながら、そんな不純なことを考えている変態だろ?」
「な、何を根拠にそんなことを言うんだ貴様!」
「だって、お前、今日も姫様の下着を嗅いでいただろ」
「…ど、どうしてそれを…」
僕は今日そんなことをしていたなんて知らないが、さっきの男に女騎士の日課だと教えてくれた。それはピタリと当てはまっているようで、本当にやっているらしい。
「お前は、姫様を不純な目で見ている変態女騎士というわけだ」
僕が言った言葉を聞いていた、姫様は少し驚いていた。
女騎士の黒い部分を追求し、女騎士は少し…いや、結構動揺していた。
僕は、このタイミングを待っていた。それは、女騎士の黒い部分がはっきりしたことで、僕の能力が使えるからだ。
僕は右手に力を入れる。そして
「自分の闇に飲まれな…」
そう言葉を放った瞬間、女騎士の目から光は消え、膝から崩れ落ちる。僕は、その女騎士の首元に剣先を向けて、こう言った。
「僕の勝ちだな」
とキザなセリフを吐いた。
意識を取り戻した女騎士は、自分の首元に剣先が向けられていることを知ると、負けを認めた。
その光景を見ていた姫様が女騎士の元に来た。姫様の前で負けて上、変態なことをしていることまでばらされてしまった女騎士は、姫様に顔向けできない様子だった。
姫様は、女騎士に向かって、こう言った。
「大丈夫ですよ、少し驚きましたが、あなたは私の騎士です。ですから、これからも私のそばで頑張っていただけますか」
その言葉に女騎士は驚いた。てっきり、破門にされると思っていたからだろう。
「こんな私でも、まだ姫様のお側に居てよろしいのですか」
「ええ、もちろん」
と天使のような顔で、そう言った。こんな変態騎士をまだ身近に置くとか、どんだけ懐が広いんだと思ったが、被害者である本人がこう言っているのだから、不思議である。
女騎士は泣きながら、姫様に抱きついた。
なぜか、感動シーンを目の目で見せられる。よくよく見ると、女騎士は泣きながら、それでいて口元がにやけていた。このにやけは姫様に必要とされているからなのか、それとも抱きつけて嬉しいのか、どっちなんだろう。
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