「7人目の勇者」

晴樹

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第10話 火蓋が切って落とされる話

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「おはようございます」
広間に出ると姫様が待っていてくれた。その横には女騎士も立っている。
「ああ、おはよ」
何食わぬ顔で挨拶を交わす。言われていた時間に遅れてはいないようだったので、安心する。
「では、行きましょうか」
そう言って姫様と共に目的地に向かった。


数時間後…

無事勇者としての紹介が国民に対して終わった。あまり肉体的に疲れるようなことでは無かったが、気疲れしてしまった。なぜあんなに人の多い所を何時間もいなくてはいけないのだ。もう、勇者辞めたいと思うほどだ。

僕と姫様たちは広間の方に集まっていた。この後色々説明を受ける所なのだ。
席に着き、話を始める体制にへと変わっていく。

……
ドンッ!!

突如、広間に大きな音がなった。
何事だ!
静かだった広間は一瞬で騒がしくなる。
僕はその音の発信元を目をやった。その視線の先には両開きの扉が、壊されている。そして、そこには数人の人が立っている。
「な、なんだ」
僕はその人物達を見ながら、そう答えた。しかし、姫様たちは予想以上に落ち着いていた。あの騒がしい女騎士ですら、姫様を守るように立ってはいるが、特に騒いではいなかった。まるで、こんな事が初めてではないような様子だ。
すると、姫様が謎の人物に言葉をかけた。
「また、騒がしい登場ですね」
姫様の言葉を聞く限り、知り合いのようだ。目の前には3人の姿があった。当然、僕は知らない人物達だ。
扉を壊した3人組は城の中に入ってくると姫様の前で止まった。
「お久しぶりね、ちっちゃなお姫様」
どう聞いても、姫様を侮辱していた。
これには、女騎士も黙っていなかった。
「失礼です! 姫様を侮辱は私が許さない!」
女騎士は姫様と侮辱していた女の間に立った。女騎士は怒りをあらわにしていた。しかし、姫様はそんな女騎士を止める。
「どうして止めるんですか!」
「私のことはいいんです。だから…」
「しかし…」
姫様が女騎士を冷静にさせる。しかし、侮辱した女は、女騎士が鎮火しかけた所に油をかけてきた。
「あら、そんな事で怒ってらしたのその程度のことで」
「黙れ」
「お止めなさい」
「そうよ、私が誰だか分かってないようね! 私はモーガン国の姫、エリザベス王女ですのよ!」
モーガン国の姫だったのか。
どこの国知らないが、偉い奴であることは間違いないだろう。
「なぁ」
「は、はい?」
僕の隣で立っていたメイドに話しかけた。
「あのさぁ、モーガン国って、この国とどんな関係なの?」
「あ、はい。わが国とモーガン国は向かい合うような形であります。それで、わが国とモーガン国とは先代からライバル関係にあります」
なるほど、ライバル国なのか。
一歩間違えば戦争になったりするのだろうか…

僕が、メイドから話を聞いていた隙に姫様たちは険悪な雰囲気の状態となっていた。
「それで、今回はどう言った理由でこちらへ?」
冷静な姫様がエリザベス姫に問いかけた。女騎士はまだ機嫌が直ってはいないようだが…
「それは決まっているでしょ。あなたの国も勇者召喚したんでしょ。なら、いつものアレよ」
とエリザベス姫は言う。
いつものアレとは、なんだろう。
疑問はすぐに解決した。
「勇者対決ですか」
「ええ、そうよ」
ん? 勇者対決とはなんだ。まるで、僕が何か戦わなければいけないものに聞こえるんだが。
「…分かりました。それで、今からですか?」
と姫様は話を進めていく。
「いえ、今日はもう日が暮れるようだし、明日のしましょ! 明日の昼頃なんてどう? 決まりね」
特に姫様は何も言っていないが、どんどん話が進んでいく。ワガママな姫なんだろうな。僕の苦手なタイプだ。

「では、明日」
「それよりさぁ」
と姫様の話を聞かないまま、話題が変わる。
「あんたの所の勇者って、どこにいるの?」
どうやら僕のことを探しているようだ。
なら、期待に応えて、前に出ようではないか!
「呼んだか?」
僕は前に出る。
エリザベス姫と目が合う。
「あなたが勇者?」
「そうだが」
「弱そうね」
エリザベス姫はなんてことを言うんだ。
僕が弱そうだと…
「正解だ! 凄いなあんた」
僕はエリザベス姫を褒める。やっぱり、子どもは褒めると伸びるっていうし、大人な対応をしないとな。
すると、なぜかエリザベス姫の横にいた、1人の男が近づいてくる。
そして、僕に向かって剣先を向けてきた。
「エリザベス様に無礼だぞ!」
どうやら、エリザベス姫を褒めたことがこの男の癇に障ったらしい。
「悪い悪い。冗談だから…」
一切思っていないことを口にする。そのおかげか、男も引き下がってくれた。
それと同時くらいのタイミングで、姫様と女騎士が近づいてきた。
「それで、あなたの勇者はどちらの方ですか?」
姫様はエリザベス姫に問うた。
クスッと笑いながら、エリザベス姫は僕に先程剣を突きつけた男を指さす。どうやら、ソイツが勇者だったらしい。
よく見ると、若いうえに誠実そうな奴だった。僕よりも全然勇者らしい。
「それでは、明日が楽しみですわね」
エリザベス姫はそう言って帰っていった。
「あ、忘れてましたわ」
だが、城を出ようとしたところで立ち止まりこちらに振り返る。
「この扉を壊したのは、こちらの勇者だから。それじゃ~」
何とも要らないことを教えてくれる。
僕たちは他国の3人を目で、追いながら見えなくなるのを待った。それと同時に姫様が僕に話しかけてきた。
「あなたはこの扉壊せますか?」
となんでそんなことを聞いてくるのか…答えは決まってるだろうに。姫様は僕の答えを分かっていながらそんな質問をしているのだ。僕が勇者だと言うことを知っていて聞いているのだろう。
なら、答えてやろう。
僕は姫様に向かってこう言った。
「無理ですね」
その後は言うまでもなく、城内に不穏な空気が流れたのだった。
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