「7人目の勇者」

晴樹

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第14話 勇者VS勇者 後編 その3

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「ぐはぁ!!」
僕のお腹に相手の蹴りが入る。痛みで跪きお腹をおさえる。モロに入った痛みで、動けなくなってしまった。
しかし、絶好のタイミングなのに相手は動こうとはしなかった。普通ならここでトドメを指して来る所だろうが、相手は余裕があるため、動かなくても勝てると踏んでいるようだ。

「そろそろ負けを認めて貰えるかな」
「…それは出来ねぇ」
「どうしてそこまで? 力の差は歴然だろ? もう勝てないと分かっているはずさ」
「ふっ…」
「ん? 何故そこで笑う?」
何故そこで笑うだと…ここまで来ると笑えてくるだけだ。そうだろ…
なら、そろそろ決めるとするか。
この戦いを終わらせるために。
「どうして笑うか、か…それは、僕がお前に勝つからだ!」
「ふ、何を言うかと思ったら、とんだ冗談を」
「冗談じゃないぜ。お前みたいな外面だけいい奴に負けるわけにはいかない」
「…ん? 何のことだ」
「恍けるなよ、淫乱勇者」
「な、何を言っているんだい?」
「あ? 言って欲しいのか。なら言ってやるよ。この場でな、淫乱勇者」
僕は大きく息を吸いこんで、そして吐いた。そしてまた大きく息を吸いこんで、叫んだ。

「テメェが、テメェの国の姫様と寝てるってことをな!」

僕の声はコロシアム内に響いた。観客全てに聞こえただろう大きさだった。少しの間の沈黙。それから場内がザワザワし始めた。どうやら、観客は知らない情報だったらしい。

「な、何を馬鹿なことを言っているんだ! しょ、証拠は、証拠はあるのか」

どうやら動揺を怒りで隠しているらしい。その荒れっぷりはもう認めているのと同じことだぞ、勇者。

「分かった。なら証拠をだそう…」
「何!」

僕の中ではもうこれ以上何かをする必要はなかった。それは、もうこの段階で僕の能力を発動させる事が可能だっだからだ。

「証拠は…お前自身の中にある」
「な、何!」

苦しそうな表情に変わった。そして、次の瞬間には怒りの表情に変わっていた。
剣を構えこちらを威嚇するように吠え始めた。
「貴様ァ!」
怒り狂った虎のように、怒り任せに突撃してきた。能力によって強化された肉体でのスピードは凄まじかった。
本気を出すとこんなに早いのか…だが、もうチェックメイトだ。

「自分の闇に飲まれな」

あの時女騎士に使った能力を発動させる。あの時の女騎士のように、同じく相手は膝から崩れ落ちた。
相手からすれば、目の前が真っ暗になり、意識が遠のいていく感覚に陥っているだろう。そう、例えるなら立ちくらみに近い感覚だろう。
僕はこの隙に相手に近づく。そして剣先を相手首元に近づけてこう言った。

「僕の勝ちだ」

この瞬間、コロシアム内は静寂に包まれた。
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