「7人目の勇者」

晴樹

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第18話 勇者特訓を開始する話 パート2

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「着いたぞ!」

 女騎士に連れてこられた場所は、城から少し離れた建物だった。城よりも小さいかったが、それでもなかなかの大きさの建物だった。強いていうなら、学校に近いものを感じる建物だ。

「ここは?」

と僕は女騎士に問いかける。
 しかし、女騎士はここでは説明せずに、「入れば分かる」と言って中に入っていく。僕はその後を追いかけて建物の中に入った。

「あ、カレン隊長!」「ほんとだ、カレン隊長だ!」

と建物の中に入った瞬間、女騎士の周りに女の子達が群がってきた。年齢で言うところ14歳くらいの女の子たちだ。
かく言う僕の年齢は20歳だ。どうでもいいか…

 そんなこんなしていると、女騎士が来たことで、女の子達がどんどん数を増して集まっていた。
そろそろ収拾がつかなくなってきていた。

「おい、女騎士!」
と女の子達の渦の真ん中にいる、女騎士を呼んだ。
 その声で、女騎士を囲んでいた女の子達の視線が僕に集中する。
僕に向けられられるその目は、「誰アレ?」みたいな目だった。
 この国の勇者なのに、知られていないのは少し悲しいな…

「すまない、勇者! ちょっと待ってくれ」
と大変そうに女騎士は返事をした。
 すると、さっきまで僕を見ていた子達が、女騎士の発言により僕のことに気付いた。

「あれが今年の勇者なんだ…」
とか、
「そう言えば、見たことある」
と言った発言が聞こえてきた。
…見たことあるなら気付けよ! と思わないでもないがまぁ、いいだろう。
 僕はそこで静かに女騎士の到着を待つことになった。
 
 その間、周りの子どもたちを観察することにした。
そして、観察してまずあることに気がついた。
男の子の姿がないのだ。たまたまかもしれないが女の子の姿しか確認出来なかった。
 それに、皆同じ服を着ている。肩と胸には鉄でできた鎧らしきものが付いていて服を着て、足元はスカートと、まるで女騎士が着るような格好をしているのだ。それに加えて、腰には物騒だが、剣が携えてある。
 その子達を見て思うのは、そう、学校…女騎士を育てる学校の生徒達と言った所だろうか。

 次に僕は、女の子達が話している会話に着目してみた。待っているのが暇と言うのもあるが、どんな話しをしているのかと気になったからだ。この国の若い子の流行りを知っておくのも悪くないだろう。
 僕は女騎士の周りではなく、それとは少し距離を取っている女の子達の会話を盗み聞きする。

すると聞こえてきたのは
「次って、模擬戦だったよね!」
「そうだよ。でも、めんどくさいよね~」
「そうそう、汗だくになっちゃうし、ちょっと間違えたら大怪我だもんね~」
と言うような会話だった。
やはり、ここは学校のようなものなのだろう。やっぱり、好き嫌いする授業って誰でもあるよな…
何て、昔の自分と照らし合わせながら、話を聞いていた。

するとまた別の場所からきた女の子2人組の会話が聞こえてきた。

「あれが勇者? 」
ん? 僕の話か! これは聞かないといけないな。
「弱そうだね」
僕を見るやいなや、弱そうとは失礼だな。実際弱いけど。
「ほんとそれ、私たちでも勝てるんじゃない」
「そうだよね! あ、でも、勇者って何か特殊能力みたいなの使うんでしょ。もしかしたら、強い能力なのかもしれないよ」
「例えば?」
「例えば…何だろう?」

と言う会話を静かに聞いていた。少し微笑ましい。それに僕の会話で楽しそうにしてくれるのも、嬉しかった。
だが、そんな会話は不気味な会話に変わっていった。

「でも、どんなに強い能力使えても、どうせ死んじゃうでしょ!」
「まぁね…毎年だもんね。毎年殺されてるもんね」
聞き捨てならない会話だった。
毎年死んでいるのか? しかも殺されているだと? そんな話聞いてないぞ。

僕はその話を聞きたかったので、その2人の女の子に話しかけた。

「なぁ? 今の話ってどういう事? 詳しく教えて欲しいんだけど」

「「え?」」
突然話しかけられたことに、2人はビックリしてしまう。
そして「えっと…」と、戸惑っていた。それは話していいのか、悪いのかというのがあるのかもしれない。
すると返答に困っている2人組の所にもう1人女の子が近づいてきた。
そしてその子はこう言った。
「殺されたのよ」
腕を組み近づいてきた子はそう言った。
「殺された? 誰に」
と僕は質問を返す。
「ヴェロニカさん言わない方が…」
と2人組の1人が言うと、ヴェロニカと呼ばれた女の子がその子のことを睨んだ。
そして、「うるさい! 私に命令するな」と同級生らしい子に怒鳴った。すると、その怒鳴られた子は「ごめんなさい…」と謝った。そして離れていった。その子に付き添う形でもう1人の女の子も居なくなった。
空気が悪くなってしまった。一瞬僕のせいかも…と思ってしまった。少なからず罪悪感が生まれてしまった。
しかし、ヴェロニカと呼ばれていた女の子はお構い無しに、話の続きを話始めた。
「殺された、勇者殺しに…」
「勇者殺し?」
「そうよ」
そんな奴がいるのかこの国には…まさかこんな形で知ることになろうとは。
「勇者!」
 勇者殺しについて考えていると、女騎士が女の子たちの囲いから抜け出して、こちらに向かってきていた。突然大声で呼ばれたので、僕はビックリしてしまった。恥ずかしいことに…
 
 僕は女騎士に呼ばれたので、勇者殺しについて教えてくれた女の子に別れを言おうと、視線を向けると、さきほどまでいた女の子は既にそこから姿を消していた…
 まるで、さっきの女の子が幽霊だったかのように…
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