「バカな男子高校生が女子校に入学しました！」

第八十一話 過去の出来事

｢痛い｣
私は足に鋭い痛みを感じた。
これは帰り道の出来事である。私はまだまだ、家に着くまでには距離があった。そして、私を助けてくれる人もいない。それは私がこの町で嫌われている、佐奈家の人間だからだ。通り過ぎる人たちは、この私を横目で見て、そして過ぎていく。こんなことは分かっていた。私の親がやっている事はひどい事だと自分でも分かっている。そのため、私がこのような扱いを受けるのは、当たり前のことだとおもっている。
｢痛いけど、無理やりにでも帰ってやる…私だけの力で…｣
私は壁をを使って、痛みを我慢しながら歩いた。
しかし、それは限界がすぐに来た。
足は腫れ上がり、壁を使って立っているのも不可能になった。
｢くっ… これまでかしら…｣
でも、私は諦めるつもりはなかった。
｢立って歩けないのならば、這って帰るまでよ｣
私は道を這って、進み始めた。道を歩く人たちは私の姿を見て、笑っていた。どうしてかというのはすぐに理解できた。私が歩いている人たちの気持ちになれば、簡単に分かることだった。彼らは、惨めな私の姿を見て、『ざまぁみろ！』と思っているのだ。そして、見て面白いのだ。だから、私を助けてくれる人間なんて、この地域に住んでいる人たちの中には存在しないのだ。
私は道行く人に笑われているのも気にせず、這って進み続けた。私はの足は進むたび、ズキズキと痛みが走り続ける。たぶん、足は折れているのだと思う。別に変な方向に、曲がっているわけではない。それでも、折れていると思えるほど痛い。私はワンピースの裾を汚しながら進んでいたが、もう疲れてしまった。壁に持たれて休憩する。
｢全然、進んでないな…｣
そう先程から進んでいるが家まで、まだまだ距離があった。
私は、休憩をやめて進み始めた。このままでは、日が暮れる前までに帰れないからだ。暗くなってしまったら、私はもう終わりだ… たぶんもう家には帰れなくなるだろう。
私は、急いだ。
すると、後ろから声をかけられる。
｢大丈夫？｣
｢え！｣
驚いてしまった。まさか、私に声をかけてくる人が、この町にいるとは思っていなかったからだ。
｢足痛めてるの？｣
｢は、はい…｣
｢そっか｣
そう言って、私をおんぶした。
｢あわわ！｣
私はその行動にまたも驚いてしまった。
｢で、家はどこ？ それとも、病院の方がいいのかな？｣
｢え、えっと…｣
私は迷っていた。それは、家か、病院かという二択ではなく、ほんとにこの人に助けてもらっていいのかという事だった。だって、もしこの状態をこの町の人に見られでもしたら、私を助けてくれようとしている、この人を迷惑がかかってしまう。それは、私が困る。
｢あの…私のこと知らないんですか？｣
｢ん、ごめん分からない。もしかして、有名人？｣
｢いや…この町では、有名人だと思います｣
そして、私は彼に自分のことを話した。
そう嫌われるように… でも、私のことを下ろしてはくれなかった。
｢そうなんだ… でも、今は関係ない。困ってる君を今は、助けるよ僕は！｣
なんてカッコイイことを言うんだと思った。こんなにイケメンなことを言う人がいるなんて、知らなかった。
｢では、どこへ行きましょうか！ お嬢様｣
｢…家に｣
｢わかりました。では、しっかり捕まっていてくださいね｣
そして、私を背負って走り出した。私は嬉しかった。私のことを助けてくれる人が、いることがすごくすごく嬉しかった。

そして、私を家まで運んでくれた、優しい人は｢門限があるので｣と言ってすぐに帰っていってしまった。その人の名前すら分からずじまいだった。私は家に着いたすぐその後に、病院に行って入院した。全治3ヶ月だった。そして退院して、私は私を助けてくれた人を探した。時間はかかったが、それが誰だか分かった。そして、私はその人のようになりたいと思った。私はそんな人に恩返しができる機会を、伺いながら、追いかけることにしたのだった…