12 / 23
12.ドライブ
しおりを挟む
ヒルト子爵家へ行ってから一か月が過ぎたころ、交代で学院に通うハイジが放課後に出てくると、正門の前に止まっていた車がクラクションを鳴らす。
「おーい!」
運転席の窓からジェフリーが顔を出して手を振っていた。
驚くハイジに、隣にいるデニスが声をかける。
「どなたかご存じですか?」
ジェフリーを見るデニスの目が厳しい。迷惑な相手なら追い払ってやるとでもいうように、にらみつけていた。
「ヒルト子爵家のジェフリー様。許婚者よ」
ハイジが言うと、デニスは「え?」というように目を丸くする。アデレイドに許婚者がいることを知らなかったようだ。
ハイジはデニスから離れてジェフリーのそばへ行く。
「どうなさったのですか? ジェフリー様」
「これからドライブに行こうぜ!」
笑顔で誘うジェフリーに、ハイジは困惑する。アデレイドの身代わりで彼とドライブへ行く気はない。だが、ここで断れば侯爵夫妻が怒るだろう。そして、その怒りがアデレイドを通して、ハイジにとって面倒なことになるかもしれない。
「それは……あの、制服ですし、一度家へ帰って、着替えてからでもよろしいですか?」
着替えを口実にアデレイドと入れ替わろうと思ったのだが、ジェフリーは車から降りてくると、ハイジの肩を抱きながら助手席に回る。
「着替えならあとで俺が買ってやる。時間がないんだ、早くいこう!」
助手席に座らされたハイジは、抵抗する暇もなくシートベルトを装着された。運転席に戻ったジェフリーは、茫然としているデニスの前を横切るように車を発進させる。
「一緒にいた彼は、アデレイドのボーイフレンドか?」
ジェフリーに尋ねられて、どきっとした。
「え? ええ、そうですね。お友達です」
アデレイドの恋人だというわけにもいかず、ハイジは誤魔化す。
「そ、それより、何も言わずに寄り道をするとおばあ様たちが心配します。ちょっとだけでいいですから、家へ寄ってください」
「ああ、大丈夫だ。侯爵家の許可は、もうもらっている。侯爵夫人には、夕食も一緒に食べるから遅くなると伝えてもらっている」
ここへ来る前に、ジェフリーはフォールコン侯爵家に電話をして、アデレイドを連れ出すと召使い伝いに侯爵夫人に連絡したそうだ。夕食も一緒にとなると長時間だが、ジェフリーに誘われればどこへでもついて行けと、侯爵夫妻はアデレイドを彼に差し出している。彼女の身代わりをしているのだから、ハイジは逃げ出すわけにいかない。
(もう……。仕方がないなあ)
ハイジはアデレイドと交代することをあきらめて、ジェフリーとドライブすることにした。
着替えを買ってくれるという約束だったのに、彼の車は繁華街を通り過ぎていく。
「どちらへ行かれるのですか?」
「それは、着いてからのお楽しみ」
信号で止まったジェフリーが無邪気に笑った。再び信号が変わったので、彼が車を発進させようとした時、歩道から子供が飛び出す。
「危ない!」
進みかけたのにブレーキを掛けられ、その反動でハイジの体が前のめりになった。だが、それを止めるように、ジェフリーの腕が彼女の目の前に伸ばされる。
「悪い、大丈夫か?」
「は、はい」
とっさにハイジは彼の腕にしがみつく。がっしりとしたたくましい腕が、彼女を支えた。
飛び出した子供は、母親が飛んできて抱え上げていた。申し訳なさそうに頭を下げながら歩道へ戻っていく母親に、ジェフリーは笑顔で頷いている。
ハイジは彼の腕をつかんでいることに気が付くと、恥ずかしくなって、ぱっと手を離した。
ジェフリーは、まったく気にしていないようで、ちらりと車の時計を見る。
「おっと、ぐずぐずしていられない」
そういって車を走らせた。やがて彼の車は、町を抜けて山のほうへ向かう。
山の頂上に差し掛かると、木々の間から水面がちらちらと見える。
「おー! 海が見えてきたぞ!」
ジェフリーがはしゃいだように言う。テレビや写真で見たことはあるが、ハイジは海を見るのは初めてだ。太陽の光がきらきらと反射する海は壮大で、水平線を見ると胸が高鳴った。
「もう少ししたら展望台につく。どうやら間に合ったようだ」
安堵するジェフリーに、ハイジは展望台の入場時間が決まっているのかと思った。だが、駐車場は無料で誘導する警備員もおらず、吹きさらしの展望台にも自動販売機があるだけだ。
見物客は結構いるが、管理人らしき人は見当たらない。
車から降りたハイジは、ジェフリーと一緒に展望台の上階に上がる。見物人が等間隔で並んでいて、空いている場所に二人で立った。
「ほら、アデレイド。見ていてご覧」
ジェフリーが海のほうを指す。そこには徐々に夕日として赤く染まり沈んでいく太陽が見える。そして水平線に近づいた瞬間、水面に映っていた太陽と夕日がくっついた。
二つの夕日は、まるで赤い雪だるまのように見える。
「えっ!」
アデレイドが驚いていると、周囲からも「おおっ」という感嘆の声が聞こえた。
「”だるま夕日”っていうんだ。この季節に、時々現れるんだけど、見られて幸運だ!」
ハイジの後ろに立っていたジェフリーが、彼女の肩を抱いていう。水面に蜃気楼ができたときにおこる自然現象で、気温に左右されるからたまにしか見られないらしい。
きれいなだるまの形だったのはわずかな時間で、やがて蜃気楼も見えなくなり太陽は通常の夕日になった。
太陽が沈むと、あっという間にあたりは暗くなっていき、見物人たちは展望台から駐車場へ向かう。
「さあ、夕日も沈んだし、そろそろ戻ろうか」
ジェフリーが後ろから覗き込んできた。だが、ハイジの顔を見た途端、彼は急におろおろと慌てだす。
「え! え? どうしたんだ? アデレイド!」
両手でハイジの頬を包んだジェフリーが、指で目元をぬぐったとき、彼女は自分が涙を流していることに気が付いた。
「どこか痛いのか?」
心配そうに見つめるジェフリーを見て、ハイジは「いいえ」と首を振る。
「……感動してしまって……」
すると、彼はほっと安どした。
「よかった。泣くほど感動してくれるなんて、ここに連れてきたかいがあったよ」
ハイジの涙をぬぐった後、ジェフリーは照れくさそうに微笑む。
「本当に、あんたは可愛いな」
頬に手を添えたまま彼がぽつりと言う。
「アデレイドが許婚者でよかった。話をまとめてくれた両親と侯爵夫妻には、感謝しているよ!」
「え?」
ジェフリーは、恋愛結婚がしたいのだと思っていたのに、アデレイドとの政略結婚を受け入れているようで驚いた。
「あんたのことをもっと知りたいし、あんたにも俺のことを知ってもらいたい。アデレイド、これからも、こうやって俺と会ってくれるか?」
まっすぐ見つめてくる彼の瞳が熱く感じて、ハイジの胸がどきどきと高鳴ってくる。
「あ、あの、私……」
ジェフリーの本当の許婚者はアデレイドだ。ハイジは、ただの身代わりでしかなく、今日のことを話して、次はアデレイドが彼と会うようにしなければいけない。
けれど、ハイジは自分がジェフリーに会いたいと望んでしまう。
「いや……か?」
ジェフリーが不安そうな顔をするので、ハイジは思わず首を振る。
「いいえ! 私も、ジェフリー様とお会いしたいです」
そういうと、彼は「やった!」と嬉しそうに笑った。
言ってしまってから、ハイジはどうやってジェフリーと会おうかと頭を悩ませた。
「おーい!」
運転席の窓からジェフリーが顔を出して手を振っていた。
驚くハイジに、隣にいるデニスが声をかける。
「どなたかご存じですか?」
ジェフリーを見るデニスの目が厳しい。迷惑な相手なら追い払ってやるとでもいうように、にらみつけていた。
「ヒルト子爵家のジェフリー様。許婚者よ」
ハイジが言うと、デニスは「え?」というように目を丸くする。アデレイドに許婚者がいることを知らなかったようだ。
ハイジはデニスから離れてジェフリーのそばへ行く。
「どうなさったのですか? ジェフリー様」
「これからドライブに行こうぜ!」
笑顔で誘うジェフリーに、ハイジは困惑する。アデレイドの身代わりで彼とドライブへ行く気はない。だが、ここで断れば侯爵夫妻が怒るだろう。そして、その怒りがアデレイドを通して、ハイジにとって面倒なことになるかもしれない。
「それは……あの、制服ですし、一度家へ帰って、着替えてからでもよろしいですか?」
着替えを口実にアデレイドと入れ替わろうと思ったのだが、ジェフリーは車から降りてくると、ハイジの肩を抱きながら助手席に回る。
「着替えならあとで俺が買ってやる。時間がないんだ、早くいこう!」
助手席に座らされたハイジは、抵抗する暇もなくシートベルトを装着された。運転席に戻ったジェフリーは、茫然としているデニスの前を横切るように車を発進させる。
「一緒にいた彼は、アデレイドのボーイフレンドか?」
ジェフリーに尋ねられて、どきっとした。
「え? ええ、そうですね。お友達です」
アデレイドの恋人だというわけにもいかず、ハイジは誤魔化す。
「そ、それより、何も言わずに寄り道をするとおばあ様たちが心配します。ちょっとだけでいいですから、家へ寄ってください」
「ああ、大丈夫だ。侯爵家の許可は、もうもらっている。侯爵夫人には、夕食も一緒に食べるから遅くなると伝えてもらっている」
ここへ来る前に、ジェフリーはフォールコン侯爵家に電話をして、アデレイドを連れ出すと召使い伝いに侯爵夫人に連絡したそうだ。夕食も一緒にとなると長時間だが、ジェフリーに誘われればどこへでもついて行けと、侯爵夫妻はアデレイドを彼に差し出している。彼女の身代わりをしているのだから、ハイジは逃げ出すわけにいかない。
(もう……。仕方がないなあ)
ハイジはアデレイドと交代することをあきらめて、ジェフリーとドライブすることにした。
着替えを買ってくれるという約束だったのに、彼の車は繁華街を通り過ぎていく。
「どちらへ行かれるのですか?」
「それは、着いてからのお楽しみ」
信号で止まったジェフリーが無邪気に笑った。再び信号が変わったので、彼が車を発進させようとした時、歩道から子供が飛び出す。
「危ない!」
進みかけたのにブレーキを掛けられ、その反動でハイジの体が前のめりになった。だが、それを止めるように、ジェフリーの腕が彼女の目の前に伸ばされる。
「悪い、大丈夫か?」
「は、はい」
とっさにハイジは彼の腕にしがみつく。がっしりとしたたくましい腕が、彼女を支えた。
飛び出した子供は、母親が飛んできて抱え上げていた。申し訳なさそうに頭を下げながら歩道へ戻っていく母親に、ジェフリーは笑顔で頷いている。
ハイジは彼の腕をつかんでいることに気が付くと、恥ずかしくなって、ぱっと手を離した。
ジェフリーは、まったく気にしていないようで、ちらりと車の時計を見る。
「おっと、ぐずぐずしていられない」
そういって車を走らせた。やがて彼の車は、町を抜けて山のほうへ向かう。
山の頂上に差し掛かると、木々の間から水面がちらちらと見える。
「おー! 海が見えてきたぞ!」
ジェフリーがはしゃいだように言う。テレビや写真で見たことはあるが、ハイジは海を見るのは初めてだ。太陽の光がきらきらと反射する海は壮大で、水平線を見ると胸が高鳴った。
「もう少ししたら展望台につく。どうやら間に合ったようだ」
安堵するジェフリーに、ハイジは展望台の入場時間が決まっているのかと思った。だが、駐車場は無料で誘導する警備員もおらず、吹きさらしの展望台にも自動販売機があるだけだ。
見物客は結構いるが、管理人らしき人は見当たらない。
車から降りたハイジは、ジェフリーと一緒に展望台の上階に上がる。見物人が等間隔で並んでいて、空いている場所に二人で立った。
「ほら、アデレイド。見ていてご覧」
ジェフリーが海のほうを指す。そこには徐々に夕日として赤く染まり沈んでいく太陽が見える。そして水平線に近づいた瞬間、水面に映っていた太陽と夕日がくっついた。
二つの夕日は、まるで赤い雪だるまのように見える。
「えっ!」
アデレイドが驚いていると、周囲からも「おおっ」という感嘆の声が聞こえた。
「”だるま夕日”っていうんだ。この季節に、時々現れるんだけど、見られて幸運だ!」
ハイジの後ろに立っていたジェフリーが、彼女の肩を抱いていう。水面に蜃気楼ができたときにおこる自然現象で、気温に左右されるからたまにしか見られないらしい。
きれいなだるまの形だったのはわずかな時間で、やがて蜃気楼も見えなくなり太陽は通常の夕日になった。
太陽が沈むと、あっという間にあたりは暗くなっていき、見物人たちは展望台から駐車場へ向かう。
「さあ、夕日も沈んだし、そろそろ戻ろうか」
ジェフリーが後ろから覗き込んできた。だが、ハイジの顔を見た途端、彼は急におろおろと慌てだす。
「え! え? どうしたんだ? アデレイド!」
両手でハイジの頬を包んだジェフリーが、指で目元をぬぐったとき、彼女は自分が涙を流していることに気が付いた。
「どこか痛いのか?」
心配そうに見つめるジェフリーを見て、ハイジは「いいえ」と首を振る。
「……感動してしまって……」
すると、彼はほっと安どした。
「よかった。泣くほど感動してくれるなんて、ここに連れてきたかいがあったよ」
ハイジの涙をぬぐった後、ジェフリーは照れくさそうに微笑む。
「本当に、あんたは可愛いな」
頬に手を添えたまま彼がぽつりと言う。
「アデレイドが許婚者でよかった。話をまとめてくれた両親と侯爵夫妻には、感謝しているよ!」
「え?」
ジェフリーは、恋愛結婚がしたいのだと思っていたのに、アデレイドとの政略結婚を受け入れているようで驚いた。
「あんたのことをもっと知りたいし、あんたにも俺のことを知ってもらいたい。アデレイド、これからも、こうやって俺と会ってくれるか?」
まっすぐ見つめてくる彼の瞳が熱く感じて、ハイジの胸がどきどきと高鳴ってくる。
「あ、あの、私……」
ジェフリーの本当の許婚者はアデレイドだ。ハイジは、ただの身代わりでしかなく、今日のことを話して、次はアデレイドが彼と会うようにしなければいけない。
けれど、ハイジは自分がジェフリーに会いたいと望んでしまう。
「いや……か?」
ジェフリーが不安そうな顔をするので、ハイジは思わず首を振る。
「いいえ! 私も、ジェフリー様とお会いしたいです」
そういうと、彼は「やった!」と嬉しそうに笑った。
言ってしまってから、ハイジはどうやってジェフリーと会おうかと頭を悩ませた。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
【完結】指先が触れる距離
山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。
必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。
「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。
手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。
近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる