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20.光を侵食する影
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近くのレストランで食事を終えてからフォールコン侯爵家に行くと、子爵夫妻はまだついていない。ハイジは呼び鈴を押して、応対したウルリヒに告げる。
「私よ。ジェフリー様がおじい様たちに会いにいらしたの。取り次いでちょうだい」
インターフォンにはカメラが付いているので、ウルリヒにはアデレイドとジェフリーの姿が見えているだろう。
「お、お嬢様? え?」
本物のアデレイドが中にいるのだから、ウルリヒは驚いて混乱しているようだ。けれど、ジェフリーのほうは、アデレイドがこっそり屋敷から抜け出したことに戸惑っていると思ったのか、「急にアデレイドを連れ出して悪かった」と、ハイジに代わって謝ってくれる。
「これから両親が結納金を持ってくると、フォールコン侯爵夫妻に伝えてくれ」
ジェフリーが言うと、ウルリヒは慌てたように「少々お待ちください」と言ってインターホンを切った。
しばらくして、ウルリヒが侯爵夫人を連れて出てきた。ウルリヒが門を開けるや否や、侯爵夫人はハイジの髪をつかむ。
「お前は、何をしているの!」
思い切り髪を引っ張られて、ハイジは悲鳴を上げる。
「きゃっ。痛いわ、おばあ様」
ハイジがアデレイドのふりをしているとは思わず、夫人はびっくりしたように手を離す。
「え……?」
引っ張っている髪が本物だとわかると愕然としたようだ。
ジェフリーがハイジをかばうように侯爵夫人の前に出て謝る。
「フォールコン侯爵夫人、申し訳ない。今日のことは、すべて俺の責任ですから、アデレイドを怒らないでください」
夫人は信じられないというように茫然としていた。
そこへフォールコン侯爵家よりもランクが上のリムジンがやってくる。車が止まると、助手席に乗っていたヒルト子爵家の執事が後部座席のドアを開けた。
「こんばんは、フォールコン侯爵夫人」
ヒルト子爵夫妻が車から降りてきて挨拶をすると、にこにこと笑いながら子爵が言う。
「いやあ、アデレイド様が息子のプロポーズを受けてくれたと聞いて、早速結納金を持ってきました」
「プロポーズ? 結納金?」
きょとんとする侯爵夫人に、ハイジはピンクダイヤの指輪を見せる。
「さっき、ジェフリー様から正式に結婚を申し込まれて、この指輪を頂きました」
婚約指輪だとわかると、夫人は息をのんで言葉を失った。
「アデレイドには、今すぐにでも子爵家に来てもらいたい。急なことだから、両親には、提示された倍の結納金を持ってきてもらうように頼んだ」
「倍!?」
侯爵家は、一般よりも高額の結納金を提示していた。その倍の金額を持ってきたとジェフリーが言うので、侯爵夫人は目を見開いた。
夫人がちらりとウルリヒをみると、彼は気が付いたように一礼をして屋敷に戻る。おそらく、侯爵に伝えに行ったのだろう。
侯爵夫人は居住まいを正して、子爵夫妻に向き合う。
「わかりました。どうぞ、お入りください」
子爵夫妻は嬉しそうに顔を輝かせると、執事に結納金の入った鞄をおろすように命令した。
侯爵夫人がハイジに近づいて、彼女の髪をなでる。
「悪かったわね、アデレイド」
どうやら夫人は、ハイジをアデレイドだと思い、勘違いして髪を引っ張ったことを謝っているようだった。
「いいえ、おばあ様。私もごめんなさい」
ハイジが内緒でジェフリーと会っていたことや、帰りが遅くなったことを謝ると、侯爵夫人は「いいのよ」と笑顔で許した。
侯爵夫人に連れられて、ハイジがヒルト子爵家の人々と屋敷の中に入ると、玄関ホールに侯爵が待ち構えている。
「一体全体、どういうことですか?」
侯爵は、機嫌の悪そうな表情でハイジとジェフリーをじろりと見た。
「フォールコン侯爵様、申し訳ない」
子爵が前に出て説明する。
「息子がどうしても、今夜からアデレイド様を我が家に連れていきたいと言いまして、急なことですが、結納金を持ってきました」
侯爵夫人が何か補足するように耳打ちすると、侯爵は、仕方なさそうに肩をすくめる。
「まあ、せっかくだから話を伺おう」
侯爵夫妻の先導で、応接室へ通された。
ギーゼラがお茶を入れてくれたが、彼女はちらちらとハイジを見て神妙な表情をする。おそらく、見分けがつかなくて不安なのだろう。本物のアデレイドがどうしているのか気になるが、ハイジは彼女になりきることにする。
「どうかしたの?」
不思議そうに尋ねると、ギーゼラは、「いいえ、なんでもありません」と言う。ウルリヒと一緒に部屋の隅に控えているが、時折彼と何かささやいているようだった。
「何の前触れもなく、今夜急に結納金を納めるとは、何かあったのか?」
侯爵が聞くと、子爵が促すようにジェフリーを見た。
「急なことはお詫びする。けれど、俺はアデレイドの承諾を得たから、すぐにでも彼女を自分のものにしたい。由緒正しいフォールコン侯爵家の良識を考えて、手を出す前に結納金を納めることにしたんだ」
婚前交渉を宣言したようなものなので、侯爵夫人が「まあ!」と言って頬を染める。しかし、結納が済めばほとんどの貴族の内で黙認されていることだ。
「本当にアデレイドが承諾をしたのか?」
侯爵がハイジを見定めるように見た。ハイジは、照れながら指輪を見せる。
「この指輪をジェフリー様からいただきました。私は、喜んでジェフリー様のもとへ嫁ぎたいと思います」
「ふむ。なかなかりっぱな婚約指輪だな」
見ただけで、侯爵に指輪の価値がわかるようだ。急なことでも、きちんと手順を踏んでいることで、侯爵の態度は軟化する。
「いささか驚いたが、覚悟はしていたことだ。だが、あまりに急なことで、こちらの準備は中途半端にしかできていない」
「今日は、アデレイド様だけでも我が家に来ていただいて、お嫁入りの荷物は後日召使いに取りにこさせましょう。足りないものは、こちらで用意させてもらいます」
子爵夫人が提案すると、侯爵夫妻は顔を突き合わせて小声で相談をし始める。やがて意見がまとまったのか、夫妻はうなずきあった。
「子爵家がそういうのなら、仕方がないな。嫁入り道具については、準備できているものはいつでも取りに来てくれて構わん。これから用意しようと思っていたものはリストにするから、うちが指定する品物を子爵家で準備してくれ」
譲歩したように侯爵が言うが、侯爵夫人の表情を見ると、フォールコン侯爵家で予定していた以上のものをヒルト子爵家に用意させようと、かかる費用も手間も押し付けているように見えた。
「わかりました」
子爵が了承すると、執事が結納の書面を出した。書類をちらりと見て、侯爵はウルリヒに目配せをする。
「申し訳ないが、少し家族だけではなしたいので、事務的な手続きは、うちの執事に任せてもいいだろうか?」
侯爵が言うと、ウルリヒが前に出てきて子爵に一礼をした。
急に”花嫁修業”で手放すことになったから、別れを惜しむのだろうと子爵は理解したように頷く。
「はい、かまいません」
子爵夫妻に了承されて侯爵夫妻が椅子から立ち上がった。ドアのほうへ向かってから、侯爵がハイジを振り返る。
「何をしている? アデレイドも来なさい」
ジェフリーのそばにぴったり座っているハイジを不審そうに見た。侯爵夫妻は、応接室から出て別室で話そうとしている。ハイジは、ジェフリーと離れることに不安が募ったが、下手に逆らって、アデレイドではないとばれるわけにもいかない。
「……はい」
アデレイドのことも気になっているので、彼女は、素直に返事をして立ち上がった。
「ギーゼラ。アデレイドの身の回りのものを準備するために、お前もいらっしゃい」
侯爵夫人に言われ、ギーゼラも一緒に部屋を出る。侯爵夫妻は黙って廊下を歩いた。彼らは、階段には向かわず、食堂へ行く。
ハイジが食堂へ入ると、そこには、アデレイドとピエールが待っていた。
「私よ。ジェフリー様がおじい様たちに会いにいらしたの。取り次いでちょうだい」
インターフォンにはカメラが付いているので、ウルリヒにはアデレイドとジェフリーの姿が見えているだろう。
「お、お嬢様? え?」
本物のアデレイドが中にいるのだから、ウルリヒは驚いて混乱しているようだ。けれど、ジェフリーのほうは、アデレイドがこっそり屋敷から抜け出したことに戸惑っていると思ったのか、「急にアデレイドを連れ出して悪かった」と、ハイジに代わって謝ってくれる。
「これから両親が結納金を持ってくると、フォールコン侯爵夫妻に伝えてくれ」
ジェフリーが言うと、ウルリヒは慌てたように「少々お待ちください」と言ってインターホンを切った。
しばらくして、ウルリヒが侯爵夫人を連れて出てきた。ウルリヒが門を開けるや否や、侯爵夫人はハイジの髪をつかむ。
「お前は、何をしているの!」
思い切り髪を引っ張られて、ハイジは悲鳴を上げる。
「きゃっ。痛いわ、おばあ様」
ハイジがアデレイドのふりをしているとは思わず、夫人はびっくりしたように手を離す。
「え……?」
引っ張っている髪が本物だとわかると愕然としたようだ。
ジェフリーがハイジをかばうように侯爵夫人の前に出て謝る。
「フォールコン侯爵夫人、申し訳ない。今日のことは、すべて俺の責任ですから、アデレイドを怒らないでください」
夫人は信じられないというように茫然としていた。
そこへフォールコン侯爵家よりもランクが上のリムジンがやってくる。車が止まると、助手席に乗っていたヒルト子爵家の執事が後部座席のドアを開けた。
「こんばんは、フォールコン侯爵夫人」
ヒルト子爵夫妻が車から降りてきて挨拶をすると、にこにこと笑いながら子爵が言う。
「いやあ、アデレイド様が息子のプロポーズを受けてくれたと聞いて、早速結納金を持ってきました」
「プロポーズ? 結納金?」
きょとんとする侯爵夫人に、ハイジはピンクダイヤの指輪を見せる。
「さっき、ジェフリー様から正式に結婚を申し込まれて、この指輪を頂きました」
婚約指輪だとわかると、夫人は息をのんで言葉を失った。
「アデレイドには、今すぐにでも子爵家に来てもらいたい。急なことだから、両親には、提示された倍の結納金を持ってきてもらうように頼んだ」
「倍!?」
侯爵家は、一般よりも高額の結納金を提示していた。その倍の金額を持ってきたとジェフリーが言うので、侯爵夫人は目を見開いた。
夫人がちらりとウルリヒをみると、彼は気が付いたように一礼をして屋敷に戻る。おそらく、侯爵に伝えに行ったのだろう。
侯爵夫人は居住まいを正して、子爵夫妻に向き合う。
「わかりました。どうぞ、お入りください」
子爵夫妻は嬉しそうに顔を輝かせると、執事に結納金の入った鞄をおろすように命令した。
侯爵夫人がハイジに近づいて、彼女の髪をなでる。
「悪かったわね、アデレイド」
どうやら夫人は、ハイジをアデレイドだと思い、勘違いして髪を引っ張ったことを謝っているようだった。
「いいえ、おばあ様。私もごめんなさい」
ハイジが内緒でジェフリーと会っていたことや、帰りが遅くなったことを謝ると、侯爵夫人は「いいのよ」と笑顔で許した。
侯爵夫人に連れられて、ハイジがヒルト子爵家の人々と屋敷の中に入ると、玄関ホールに侯爵が待ち構えている。
「一体全体、どういうことですか?」
侯爵は、機嫌の悪そうな表情でハイジとジェフリーをじろりと見た。
「フォールコン侯爵様、申し訳ない」
子爵が前に出て説明する。
「息子がどうしても、今夜からアデレイド様を我が家に連れていきたいと言いまして、急なことですが、結納金を持ってきました」
侯爵夫人が何か補足するように耳打ちすると、侯爵は、仕方なさそうに肩をすくめる。
「まあ、せっかくだから話を伺おう」
侯爵夫妻の先導で、応接室へ通された。
ギーゼラがお茶を入れてくれたが、彼女はちらちらとハイジを見て神妙な表情をする。おそらく、見分けがつかなくて不安なのだろう。本物のアデレイドがどうしているのか気になるが、ハイジは彼女になりきることにする。
「どうかしたの?」
不思議そうに尋ねると、ギーゼラは、「いいえ、なんでもありません」と言う。ウルリヒと一緒に部屋の隅に控えているが、時折彼と何かささやいているようだった。
「何の前触れもなく、今夜急に結納金を納めるとは、何かあったのか?」
侯爵が聞くと、子爵が促すようにジェフリーを見た。
「急なことはお詫びする。けれど、俺はアデレイドの承諾を得たから、すぐにでも彼女を自分のものにしたい。由緒正しいフォールコン侯爵家の良識を考えて、手を出す前に結納金を納めることにしたんだ」
婚前交渉を宣言したようなものなので、侯爵夫人が「まあ!」と言って頬を染める。しかし、結納が済めばほとんどの貴族の内で黙認されていることだ。
「本当にアデレイドが承諾をしたのか?」
侯爵がハイジを見定めるように見た。ハイジは、照れながら指輪を見せる。
「この指輪をジェフリー様からいただきました。私は、喜んでジェフリー様のもとへ嫁ぎたいと思います」
「ふむ。なかなかりっぱな婚約指輪だな」
見ただけで、侯爵に指輪の価値がわかるようだ。急なことでも、きちんと手順を踏んでいることで、侯爵の態度は軟化する。
「いささか驚いたが、覚悟はしていたことだ。だが、あまりに急なことで、こちらの準備は中途半端にしかできていない」
「今日は、アデレイド様だけでも我が家に来ていただいて、お嫁入りの荷物は後日召使いに取りにこさせましょう。足りないものは、こちらで用意させてもらいます」
子爵夫人が提案すると、侯爵夫妻は顔を突き合わせて小声で相談をし始める。やがて意見がまとまったのか、夫妻はうなずきあった。
「子爵家がそういうのなら、仕方がないな。嫁入り道具については、準備できているものはいつでも取りに来てくれて構わん。これから用意しようと思っていたものはリストにするから、うちが指定する品物を子爵家で準備してくれ」
譲歩したように侯爵が言うが、侯爵夫人の表情を見ると、フォールコン侯爵家で予定していた以上のものをヒルト子爵家に用意させようと、かかる費用も手間も押し付けているように見えた。
「わかりました」
子爵が了承すると、執事が結納の書面を出した。書類をちらりと見て、侯爵はウルリヒに目配せをする。
「申し訳ないが、少し家族だけではなしたいので、事務的な手続きは、うちの執事に任せてもいいだろうか?」
侯爵が言うと、ウルリヒが前に出てきて子爵に一礼をした。
急に”花嫁修業”で手放すことになったから、別れを惜しむのだろうと子爵は理解したように頷く。
「はい、かまいません」
子爵夫妻に了承されて侯爵夫妻が椅子から立ち上がった。ドアのほうへ向かってから、侯爵がハイジを振り返る。
「何をしている? アデレイドも来なさい」
ジェフリーのそばにぴったり座っているハイジを不審そうに見た。侯爵夫妻は、応接室から出て別室で話そうとしている。ハイジは、ジェフリーと離れることに不安が募ったが、下手に逆らって、アデレイドではないとばれるわけにもいかない。
「……はい」
アデレイドのことも気になっているので、彼女は、素直に返事をして立ち上がった。
「ギーゼラ。アデレイドの身の回りのものを準備するために、お前もいらっしゃい」
侯爵夫人に言われ、ギーゼラも一緒に部屋を出る。侯爵夫妻は黙って廊下を歩いた。彼らは、階段には向かわず、食堂へ行く。
ハイジが食堂へ入ると、そこには、アデレイドとピエールが待っていた。
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