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21.皆既日食
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ハイジに気が付くと、ピエールは彼女とアデレイドをきょときょとと交互に見ている。おそらく見分けがつかずに困惑しているのだろう。
「ハイジ! いったい、これはどういうことなの?」
アデレイドが詰め寄ってくるので、ハイジはびっくりした顔をする。
「何を言っているの? ハイジはあなたでしょう」
「え?」
アデレイドが戸惑っていると、侯爵夫人がつかつかとそばへ来て、彼女の髪を引っ張った。
「痛い! なにをなさるの? おばあ様」
アデレイドの髪も本物だと確認すると、侯爵夫人はきっとギーゼラをにらみつける。
「これはどういうこと? 忌み子の髪は伸ばしてはいけないと言っておいたでしょう! 」
「は、はい。申し訳ございません。お嬢様のメイドになってから、ハイジはずっとメイドキャップを被っていましたので、髪を伸ばしていることに気が付きませんでした」
ハイジがこっそり髪を伸ばしていたことを知らなかったギーゼラは、責められて小さくなった。
「勝手にアデレイドの服を着て、アデレイドのふりをして私たちを欺こうとしていたのね!」
侯爵夫人にぐいぐいと髪を引っ張られ、アデレイドが泣き叫ぶ。
「やめて、おばあ様! 痛い、痛い!」
「お前に、”おばあ様”だなんて呼ばれたくありません! この忌み子が!」
投げ飛ばすようにアデレイドを放した夫人の指には、金色の髪が数本絡まっていた。
「いったいいつの間に入れ替わっていたんだ? そいつにはまともな服は与えていないのだから、屋敷の中に入ってくればわかるだろう」
侯爵が呆れたように言うと、ギーゼラが恐る恐るいう。
「アデレイド様は、離れにおいていらっしゃる服を、ハイジにも着ていいと許可を出されていらっしゃいました。ハイジがアデレイド様と同じ服を着て、髪をボンネットで隠していたら、私どもでは判断できません」
彼女につられて、ピエールが「そういえば」とハイジを指さす。
「アフタヌーンティーの前に、そちらのお嬢様をハイジの部屋の前で見掛けた時、ボンネットを被っていなかったからアデレイド様だと思って声を掛けました。その時”これから出かける”とおっしゃっていたのに、服装の違うこちらのお嬢さまがアフタヌーンティーのティールームに来られて、不思議に思っていました」
侯爵夫人とのアフタヌーンティーは、”アデレイド”が出かけて十分後くらいだった。それなのにわざわざ着替えて間に合ったことに、彼は違和感を感じていたらしい。
「じゃあ、その時に入れ替わったのね! この忌み子は、そのままアデレイドのふりをして夕食まで私たちと一緒に食べていたんだわ!」
侯爵夫人がアデレイドを指さして怒鳴ると、侯爵は「なんてことだ……」とつぶやくように言って頭を抱えた。
「違うわ! 私は本物のアデレイドよ」
床にへばっていたアデレイドが訴えるように顔を上げる。
「ハイジの部屋の前にいたのなら、その子はハイジよ! きっと部屋から出てきた時にピエールにあったのでしょう。騙されないで! 私は使用人部屋には行ったことがないわ」
侯爵は何か考えるように彼女を見た後、ハイジに顔を向けて質問する。
「――お前はどうして使用人部屋にいたんだ?」
半信半疑の目で見られたが、疑われることは想定内のハイジは、平然と答える。
「ハイジが具合が悪いって、部屋で休んでいたから、様子を見に行ったのよ。そのついでに、”みんなに内緒でジェフリー様と会ってくるから、おばあさまとのアフタヌーンティーはごまかしておいて”って頼んだわ」
「嘘よ! 具合が悪いなんて聞いていないわ!」
「いいえ、ハイジは確かに顔色が悪く具合が悪そうでした。部屋で休んでいたのも知っています」
アデレイドの反論は、ピエールの証言で打ち消された。
「そんなに私になりたかったの?」
ハイジは指輪を見せつけるように口元に手を当てる。指輪に気が付いたアデレイドが目を見開いた。
「その指輪は……?」
「これは、さっきジェフリー様から頂いた婚約指輪よ。高価なものには目ざといのね」
ハイジはあざけるように彼女を見下ろす。
「あなたは、由緒正しいフォールコン侯爵令嬢として、裕福なヒルト子爵家に嫁いで贅沢三昧に暮らしたかったかもしれないけれど、ジェフリー様のことをろくに知らないくせに、彼と結婚できると思っているの?」
わなわなと震えているアデレイドは、何も言えないようだ。
「なんて図々しい! 忌み子のくせにアデレイドに成り代わろうとするなんて!」
侯爵夫人がハイジをかばうようにそばへ来て、アデレイドを罵った。侯爵も嘆かわしそうに頭を振る。
「やはり情けなどかけずに、義務教育が終われば追い出すべきだったんだ。こんな騒動を起こすとは……」
どうやら侯爵夫妻は、アデレイドのほうがハイジだと思い込んだようだ。
「おばあ様、信じてくださらないの? おじい様も、私がわからないの?」
愕然とする彼女を、夫妻は冷たい目で見る。
「言い伝え通り、忌み子は悪しき存在だな」
「本当に、なんて気味の悪い……」
いままで、祖父母からそんな目で見られたことなどなかったのだろう。アデレイドは青ざめた顔をして、言葉を失っていた。
「アデレイドと同じ格好をしてはいけないと、以前に言ったでしょう。ギーゼラ、鋏を持っていらっしゃい!」
侯爵夫人が言うと、ギーゼラは、びくっとした。
「ピエールは、忌み子を椅子に座らせるのよ」
夫人が何をするつもりか、ハイジにも召使たちにもうすうすわかった。ギーゼラとピエールが不安そうに顔を見合わせているが、召使が否やと言えるわけがない。ギーゼラは厨房へ鋏を取りに行き、ピエールは茫然としているアデレイドを気遣うように椅子に座らせた。
「どうして?」
放心状態でつぶやくアデレイドの小さな声がハイジの耳に届く。侯爵夫妻は少し離れたところで、ひそひそと相談していて聞こえていないようだ。アデレイドのそばについているピエールだけが戸惑う表情を見せた。
ハイジはアデレイドのそばへ行くと、ピエールに離れるように目配せをする。彼は少し躊躇したようだが、ハイジの願い通りに距離を取って離れた。
「何か言いたいことがあるの?」
小声でハイジが尋ねると、アデレイドはぼんやりとしたまま問いかける。
「あなたは私の身代わりになるを嫌がっていたじゃない。それなのに、なぜ今更私と入れ替わろうとするの?」
「生まれたときの、たった五分の違いでつけられた格差を目の当たりにしていても、私の気持ちがわからないの?」
ハイジはあきれるように笑う。
「あなたの身代わりで一時的にお嬢様になるだけで満足できるわけないじゃない。一卵性双生児で、誰にも見分けがつかないのなら、私が本物のフォールコン侯爵令嬢になっても構わないでしょう」
心配そうにこちらを見ている召使たちには、聞こえていないようだ。ハイジは、内緒話をするようにアデレイドの耳に口を近づける。
「それに、デニス様と深い関係になっているくせに、のうのうとジェフリー様と結婚するだなんて、あなたってよっぽどの恥知らずなのね」
デニスとの情事をささやくと、アデレイドは驚いたようにハイジを見た。
「彼を裏切るなんて許せないわ。ジェフリー様は、私のものよ!」
きつい目でアデレイドを睨みつけると、彼女は青ざめた顔をしてがっくりと肩を落とした。
「アデレイド、おどきなさい」
ハイジが振り返ると、侯爵夫人がハサミを持ったギーゼラを従えて、そばへやってきた。夫人がさっと手を出すと、ギーゼラは彼女に持っていた鋏を渡す。
「ピエール! 何をしているの? 忌み子を押さえていなさい!」
ピエールが飛んできてアデレイドを押さえつけるが、彼女は抵抗など何もしない。
「この忌み子が!」
侯爵夫人は罵倒しながら、ザクザクと髪を切っていき、侯爵はその様子を黙ってみていた。
「さあ、もうこれで間違えることはないわ」
昔のハイジ以上に無残に、アデレイドをベリーショートにした侯爵夫人は満足そうだ。
「そいつはすぐに追い出して、二度と侯爵家に近づけないようにしておけ!」
侯爵の命令に、召使たちは「かしこまりました」と頭を下げる。
「アデレイド。執務室へ戻るぞ」
侯爵が言うと、夫人がハイジを挟んで、彼の反対側に立つ。
「そうね、ヒルト子爵家の方々が待っているわ」
「はい、おじい様、おばあ様」
ハイジは、左右にたつ侯爵夫妻に微笑みかけた。
食堂のドアのところまで行って、侯爵夫人が振り返る。
「ギーゼラ、あなたもアデレイドの身の回りの物を整えて執務室へきなさい」
「は、はい、大奥様」
「ギーゼラ、ジェフリー様から頂いたものは全部入れておいてね」
ハイジが付け加えると、ギーゼラは「かしこまりました」と言って、アデレイドの部屋へ向かった。
食堂から出る前に、ハイジがちらりとアデレイドのほうを見ると、彼女は椅子に座ってうつむいたまま微動だにしない。
床にしゃがんで黙々と髪の毛の掃除をしているピエールを、ぼんやりと眺めているように見える。
ハイジは、アデレイドに背を向けると、フォールコン侯爵令嬢として、許嫁者の元へ戻っていった。
「ハイジ! いったい、これはどういうことなの?」
アデレイドが詰め寄ってくるので、ハイジはびっくりした顔をする。
「何を言っているの? ハイジはあなたでしょう」
「え?」
アデレイドが戸惑っていると、侯爵夫人がつかつかとそばへ来て、彼女の髪を引っ張った。
「痛い! なにをなさるの? おばあ様」
アデレイドの髪も本物だと確認すると、侯爵夫人はきっとギーゼラをにらみつける。
「これはどういうこと? 忌み子の髪は伸ばしてはいけないと言っておいたでしょう! 」
「は、はい。申し訳ございません。お嬢様のメイドになってから、ハイジはずっとメイドキャップを被っていましたので、髪を伸ばしていることに気が付きませんでした」
ハイジがこっそり髪を伸ばしていたことを知らなかったギーゼラは、責められて小さくなった。
「勝手にアデレイドの服を着て、アデレイドのふりをして私たちを欺こうとしていたのね!」
侯爵夫人にぐいぐいと髪を引っ張られ、アデレイドが泣き叫ぶ。
「やめて、おばあ様! 痛い、痛い!」
「お前に、”おばあ様”だなんて呼ばれたくありません! この忌み子が!」
投げ飛ばすようにアデレイドを放した夫人の指には、金色の髪が数本絡まっていた。
「いったいいつの間に入れ替わっていたんだ? そいつにはまともな服は与えていないのだから、屋敷の中に入ってくればわかるだろう」
侯爵が呆れたように言うと、ギーゼラが恐る恐るいう。
「アデレイド様は、離れにおいていらっしゃる服を、ハイジにも着ていいと許可を出されていらっしゃいました。ハイジがアデレイド様と同じ服を着て、髪をボンネットで隠していたら、私どもでは判断できません」
彼女につられて、ピエールが「そういえば」とハイジを指さす。
「アフタヌーンティーの前に、そちらのお嬢様をハイジの部屋の前で見掛けた時、ボンネットを被っていなかったからアデレイド様だと思って声を掛けました。その時”これから出かける”とおっしゃっていたのに、服装の違うこちらのお嬢さまがアフタヌーンティーのティールームに来られて、不思議に思っていました」
侯爵夫人とのアフタヌーンティーは、”アデレイド”が出かけて十分後くらいだった。それなのにわざわざ着替えて間に合ったことに、彼は違和感を感じていたらしい。
「じゃあ、その時に入れ替わったのね! この忌み子は、そのままアデレイドのふりをして夕食まで私たちと一緒に食べていたんだわ!」
侯爵夫人がアデレイドを指さして怒鳴ると、侯爵は「なんてことだ……」とつぶやくように言って頭を抱えた。
「違うわ! 私は本物のアデレイドよ」
床にへばっていたアデレイドが訴えるように顔を上げる。
「ハイジの部屋の前にいたのなら、その子はハイジよ! きっと部屋から出てきた時にピエールにあったのでしょう。騙されないで! 私は使用人部屋には行ったことがないわ」
侯爵は何か考えるように彼女を見た後、ハイジに顔を向けて質問する。
「――お前はどうして使用人部屋にいたんだ?」
半信半疑の目で見られたが、疑われることは想定内のハイジは、平然と答える。
「ハイジが具合が悪いって、部屋で休んでいたから、様子を見に行ったのよ。そのついでに、”みんなに内緒でジェフリー様と会ってくるから、おばあさまとのアフタヌーンティーはごまかしておいて”って頼んだわ」
「嘘よ! 具合が悪いなんて聞いていないわ!」
「いいえ、ハイジは確かに顔色が悪く具合が悪そうでした。部屋で休んでいたのも知っています」
アデレイドの反論は、ピエールの証言で打ち消された。
「そんなに私になりたかったの?」
ハイジは指輪を見せつけるように口元に手を当てる。指輪に気が付いたアデレイドが目を見開いた。
「その指輪は……?」
「これは、さっきジェフリー様から頂いた婚約指輪よ。高価なものには目ざといのね」
ハイジはあざけるように彼女を見下ろす。
「あなたは、由緒正しいフォールコン侯爵令嬢として、裕福なヒルト子爵家に嫁いで贅沢三昧に暮らしたかったかもしれないけれど、ジェフリー様のことをろくに知らないくせに、彼と結婚できると思っているの?」
わなわなと震えているアデレイドは、何も言えないようだ。
「なんて図々しい! 忌み子のくせにアデレイドに成り代わろうとするなんて!」
侯爵夫人がハイジをかばうようにそばへ来て、アデレイドを罵った。侯爵も嘆かわしそうに頭を振る。
「やはり情けなどかけずに、義務教育が終われば追い出すべきだったんだ。こんな騒動を起こすとは……」
どうやら侯爵夫妻は、アデレイドのほうがハイジだと思い込んだようだ。
「おばあ様、信じてくださらないの? おじい様も、私がわからないの?」
愕然とする彼女を、夫妻は冷たい目で見る。
「言い伝え通り、忌み子は悪しき存在だな」
「本当に、なんて気味の悪い……」
いままで、祖父母からそんな目で見られたことなどなかったのだろう。アデレイドは青ざめた顔をして、言葉を失っていた。
「アデレイドと同じ格好をしてはいけないと、以前に言ったでしょう。ギーゼラ、鋏を持っていらっしゃい!」
侯爵夫人が言うと、ギーゼラは、びくっとした。
「ピエールは、忌み子を椅子に座らせるのよ」
夫人が何をするつもりか、ハイジにも召使たちにもうすうすわかった。ギーゼラとピエールが不安そうに顔を見合わせているが、召使が否やと言えるわけがない。ギーゼラは厨房へ鋏を取りに行き、ピエールは茫然としているアデレイドを気遣うように椅子に座らせた。
「どうして?」
放心状態でつぶやくアデレイドの小さな声がハイジの耳に届く。侯爵夫妻は少し離れたところで、ひそひそと相談していて聞こえていないようだ。アデレイドのそばについているピエールだけが戸惑う表情を見せた。
ハイジはアデレイドのそばへ行くと、ピエールに離れるように目配せをする。彼は少し躊躇したようだが、ハイジの願い通りに距離を取って離れた。
「何か言いたいことがあるの?」
小声でハイジが尋ねると、アデレイドはぼんやりとしたまま問いかける。
「あなたは私の身代わりになるを嫌がっていたじゃない。それなのに、なぜ今更私と入れ替わろうとするの?」
「生まれたときの、たった五分の違いでつけられた格差を目の当たりにしていても、私の気持ちがわからないの?」
ハイジはあきれるように笑う。
「あなたの身代わりで一時的にお嬢様になるだけで満足できるわけないじゃない。一卵性双生児で、誰にも見分けがつかないのなら、私が本物のフォールコン侯爵令嬢になっても構わないでしょう」
心配そうにこちらを見ている召使たちには、聞こえていないようだ。ハイジは、内緒話をするようにアデレイドの耳に口を近づける。
「それに、デニス様と深い関係になっているくせに、のうのうとジェフリー様と結婚するだなんて、あなたってよっぽどの恥知らずなのね」
デニスとの情事をささやくと、アデレイドは驚いたようにハイジを見た。
「彼を裏切るなんて許せないわ。ジェフリー様は、私のものよ!」
きつい目でアデレイドを睨みつけると、彼女は青ざめた顔をしてがっくりと肩を落とした。
「アデレイド、おどきなさい」
ハイジが振り返ると、侯爵夫人がハサミを持ったギーゼラを従えて、そばへやってきた。夫人がさっと手を出すと、ギーゼラは彼女に持っていた鋏を渡す。
「ピエール! 何をしているの? 忌み子を押さえていなさい!」
ピエールが飛んできてアデレイドを押さえつけるが、彼女は抵抗など何もしない。
「この忌み子が!」
侯爵夫人は罵倒しながら、ザクザクと髪を切っていき、侯爵はその様子を黙ってみていた。
「さあ、もうこれで間違えることはないわ」
昔のハイジ以上に無残に、アデレイドをベリーショートにした侯爵夫人は満足そうだ。
「そいつはすぐに追い出して、二度と侯爵家に近づけないようにしておけ!」
侯爵の命令に、召使たちは「かしこまりました」と頭を下げる。
「アデレイド。執務室へ戻るぞ」
侯爵が言うと、夫人がハイジを挟んで、彼の反対側に立つ。
「そうね、ヒルト子爵家の方々が待っているわ」
「はい、おじい様、おばあ様」
ハイジは、左右にたつ侯爵夫妻に微笑みかけた。
食堂のドアのところまで行って、侯爵夫人が振り返る。
「ギーゼラ、あなたもアデレイドの身の回りの物を整えて執務室へきなさい」
「は、はい、大奥様」
「ギーゼラ、ジェフリー様から頂いたものは全部入れておいてね」
ハイジが付け加えると、ギーゼラは「かしこまりました」と言って、アデレイドの部屋へ向かった。
食堂から出る前に、ハイジがちらりとアデレイドのほうを見ると、彼女は椅子に座ってうつむいたまま微動だにしない。
床にしゃがんで黙々と髪の毛の掃除をしているピエールを、ぼんやりと眺めているように見える。
ハイジは、アデレイドに背を向けると、フォールコン侯爵令嬢として、許嫁者の元へ戻っていった。
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