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22.入れ替わった結婚
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応接室に戻ると、手続きを終えたジェフリーたちは、お茶を飲みながら談笑していた。
彼らは会話を中断して笑顔で出迎え、ハイジは、フォールコン侯爵夫妻と並んで長椅子に腰かけた。
侯爵は、ウルリヒに渡された書類に目を通す。
「不備がなければ、アデレイドは今からでも俺の家のほうに入ってもらいます」
ジェフリーが言うと、侯爵はきょとんとする。
「そなたの家とは?」
「俺は騎士団に入った時から、親から独立している。まあ、垣根で隔てただけで、同じ敷地に立っているから子爵家の別棟ともいうかな」
アデレイドの離れと似たようなものだが、侯爵夫妻に説明するのを聞いていると、ジェフリーの家は侯爵家より一回りくらい小さな屋敷で、身の回りの世話をする召使は子爵家から派遣してもらっているそうだ。
「ふむ。まあ、いいだろう」
家の大きさや召使について、侯爵はあまり気にした様子もなく了承した。
ギーゼラがアデレイドの身の回りの物を持ってくると、全員で応接室を出た。玄関ホールで別れの挨拶をしていると、侯爵夫人がそっとハイジに耳打ちする。
「わかっているわね、アデレイド。子爵家に行っても、あなたはフォールコン侯爵令嬢だということを忘れないのよ」
おそらく、格下の子爵家の言いなりにならずに、侯爵家のプライドを持てということなのだろう。ハイジはあきれながらも、表面上は微笑を返すだけで何も答えなかった。
子爵家のリムジンに、ハイジはジェフリーと一緒に乗り込み、子爵夫妻と向かい合わせに座る。侯爵夫妻と召使たちに見送られて車は発進し、フォールコン侯爵家はすぐに見えなくなっていった。
「ジェフリー、アデレイド様と結婚するにあたって、言っておくことがある」
街並みを走る車の中で、子爵がジェフリーに改まって言う。
「一人前に伴侶を得るのだから、これからは親に頼るようなことはするな。わしたちはお前の家庭に干渉も援助もしないと思え」
「ああ、わかっている。俺だけの力でアデレイドを幸せにするようにするよ」
ジェフリーも真面目な顔をして頷いた。
「ごめんなさいね、アデレイド様」
子爵夫人が謝りながらハイジに説明する。
「ジェフリーに、独立した世帯主としての責任を持ってほしいから、こんな厳しいことを言うんですよ」
「いいえ、ご立派なお考えだと思います」
彼らのしっかりとした考えにハイジが賛同すると、みんなほっとした表情をした。
「だけど、本当に困ったときはいつでも相談してほしい。フォールコン侯爵家には及ばんが、子爵家としてそれなりの人脈も資産もあります」
いざとなったら助けるつもりでいると子爵が胸を張る。親身で頼りがいのある子爵に感謝して、ハイジは「ありがとうございます」とお礼を言った。
「これから家族になるんだから、仲よくしましょう」
にこにこしている子爵夫人たちに向かって、ハイジは背筋を伸ばして姿勢を正す。
「不束者ですが、よろしくお願いします。家族として迎えてくださるのなら、これからは、私のことを”ハイジ”と愛称で呼んでいただきますでしょうか?」
座ったままで失礼だと思ったが、車の中なので仕方がない。ハイジが頭を下げて挨拶をすると、子爵夫人が「まあ!」と感嘆したような声を上げる。
「アデレイド様を愛称で呼んでいいの?」
「それは光栄だな」
思いのほか子爵夫妻が大喜びではしゃいだ。少し恥ずかしくなって、ハイジが照れながらジェフリーを見ると、彼が恭しく彼女の手を取る。
「これからよろしくな、ハイジ」
ぎゅっと手を握りしめるジェフリーは、幸せそうに微笑んでいた。
子爵家の裏に立っているジェフリーの館は、子爵家とは正反対の位置に正門がある。そこで車から降りたハイジとジェフリーは、子爵夫妻を見送ったのち、館に入った。
「おかえりなさいませ。ジェフリー様、若奥様」
屋敷を管理しているというカーター夫妻が、ハイジをジェフリーの妻として出迎えた。
「初めまして。これからよろしくお願いします」
貴婦人の礼をして挨拶をすると、カーター夫妻は嬉しそうに微笑み、夫人がハイジを部屋に案内してくれる。
「以前からお部屋の準備はさせていただいておりましたが、まだ不足のものがあるかもしれません。若奥様のお好みのものを教えていただきましたら、すぐにご用意させていただきます」
アデレイドの部屋よりも広くて、日用雑貨も上質なものが一通り揃っているので、ハイジにとっては十分だ。
ハイジの身の回りをの世話するメイドも数人ついていて、入浴をすますと、彼女たちが肌の手入れや髪を乾かしたりしてくれた。
「今夜はこちらの寝室でお休みください」
カーター夫人が指し示すドアは主寝室で、ジェフリーの部屋にもつながっているという。主寝室と反対側には、ハイジ専用の寝室もあるそうだ。
「このあとは、若奥様に呼ばれるまで誰もお部屋に近づきませんので、ごゆっくりお過ごしください。明日、お目覚めになられましたら、内線でお知らせください」
丁寧にお辞儀をしてカーター夫人はメイドたちを連れて部屋を出ていった。
自分から望んだこととはいえ、いきなり初夜を迎えてハイジはドキドキとしてきた。そっとドアを開けておそるおそる主寝室を覗くと、すでに寝支度を整えたジェフリーがベッドに座って待っていた。
ハイジを見て、彼が顔をほころばせる。
「ハイジ」
彼は足早にやってきて、片手で彼女を部屋の引き入れると、もう片方の手でドアを閉め、そのまま流れるような動作で横抱きにされた。気が付いたら彼の腕の中にいて、ハイジはドギマギとする。
「ジェ、ジェフリー様」
身じろぐ間もなく、ジェフリーはすたすたとベッドへ向かっていく。ベッドの中央にハイジをおろして、彼もその隣に乗りあがった。
体を縮こませるようにしていると、ジェフリーがそっとハイジの頬を撫でる。
「緊張している?」
「は、はい。どうすればいいのか、わからなくて……」
ハイジが答えると、彼はくすりと笑り、彼女の手を取って自分の胸の当てた。
「緊張しているのは俺も同じだ。ドキドキしているだろう?」
確かに手を通して鼓動を感じる。そして改めてジェフリーを見ると、彼の顔がゆっくりと近づいてきて、触れるだけのやさしい口づけをされた。
「俺を受け入れてくれるか?」
熱いまなざしを受けて、恥ずかしさとうれしさで頬が熱くなる。ハイジは自分の熱を感じながら黙ってうなずいた。
ジェフリーがもう一度キスをし、そのまま覆いかぶさるようにして彼女を横たえた。何度も繰り返すキスの合間に、彼は器用にハイジの寝衣をはだけていく。
ジェフリーの手が彼女の胸に触れる。やわやわと胸をもまれ、ハイジの口から吐息が漏れた。
「は……あぁ……」
自分の声が、デニスと抱き合っていた時のアデレイドの声にそっくりで、ハイジは彼女の痴態を思い出す。はっとして、自分に触れているのがジェフリーであることを確認すると、彼女は心の中で安堵した。
彼の指がハイジの乳首をつまむ。
「っ! ……っ」
ハイジは、声を出さないように手で口元を押さえた。こりこりと扱かれるたびに、びくびくと反応する。声を押さえても漏れ出る息遣いが、ハイジにとっては不快に思えた。ジェフリーに与えられる快感に集中できなくて苦しかった。
「我慢しないで声を聞かせて」
ジェフリーが両腕をついてハイジを見下ろしていて、彼女が涙目で見上げると、彼は困ったような顔をしている。
「俺、あんたの感じている声が聞きたい」
「ジェフリー様……」
優しく髪をなでてくれる彼の頬を、ハイジは両手で挟んで引き寄せる。
「私の名前を呼んでくださいますか?」
ジェフリーは、一瞬、戸惑った表情になった。
「ハイジ?」
尋ねるような言い方をするのは、愛称か正式な名かどちらで呼ぼうかと迷ったようだ。ハイジが頷いて軽く口づけると、彼は嬉しそうにほほ笑む。
「可愛いな、ハイジは」
それからはことあるごとにジェフリーがハイジの名を呼んでくれる。
いとおしそうに何度も呼ばれると、アデレイドの身代わりだったことは払しょくされ、忌まわしい光景も思い出さない。
「ハイジ。ハイジ、愛している」
「あ……。あぁ……ん」
ハイジは、素直に快楽を享受できるようになっていった。
体のあちこちにキスをしていたジェフリーは、やがて手で彼女の秘所に触れた。
誰かにそこを触られるのは初めてのことで、ハイジはびくっとして彼の首に手をまわす。下着の上から優しく撫でられ、彼女は体の奥から濡れていくのがわかって彼にぎゅっとしがみついた。
「ハイジ……」
彼に吐息交じりで名前を呼ばれただけでも感じて、彼女の下着はどんどん濡れていった。
「ふっ! あぁ……」
「可愛いよ、ハイジ」
ジェフリーが器用に片手だけで彼女の下着を脱がせる。指で秘所を開きながら、彼は蜜口をいじりだす。
「あ……、あん!」
指を入れられると、腰がはねてしまった。どっと愛液が出てきたようで、ぴちゃぴちゃという水音がしだした。
「すごく感じてくれているんだね。うれしいよ、ハイジ」
恥ずかしくて目をつぶっているハイジと違い、ジェフリーは間近で彼女の表情の変化を見て喜んでいるようだ。
彼が唇に何度かキスをして、緊張で閉じている彼女の唇を舌でつつく。
「ハイジ、口を開いて」
促されて唇を開くと、彼の舌が口内に入ってきた。
「んん、……はぁ……、あ……」
舌をからめとられ、キスが深くなる。ハイジは息をするのがやっとだった。
キスの合間に膣内に入れている指が増やされ、目まぐるしい快感に襲われる。ジェフリーの指が動くたびに、びくびくと反応した。自分の体が自分のものじゃないように、ふわふわとしてくる。
ハイジは体を置きくのけぞらし、硬直したかと思うと、目の前が真っ白になってしまった。
やがて脱力したように、腕を離すと、彼がやさしく彼女の髪をなでる。
「ハイジ、いった?」
ハイジが肩で息をしながら、意味が分からずきょとんとしていると、ジェフリーはほほ笑む。
「今のハイジの感覚がいくってことだよ。気もちよかった?」
「は……い」
なんとなく恥ずかしくなって、ハイジは真っ赤になりながら答えた。
「一度いっておいたら、まだましだと思うけれど、痛かったら言ってくれ」
ジェフリーがハイジの足を開かせて、その中心に彼の肉棒を当てる。
「慣れるまで、ゆっくり進めるよ」
指とは比べ物にならないくらい大きなものが挿入されてきた。圧迫感と想像したことのない痛さに息が詰まる。
「うっ……あっ……」
無意識に抵抗するように頭を振ると、彼がぎゅっと抱きしめてきた。
「悪い、もう少しだから我慢してくれ」
切羽詰まったような声をしているのに、ジェフリーはハイジの髪をなでたり、額に口づけを落としたり気遣ってくれる。大事にされている、愛されていると肌で感じて、彼女の気持ちは落ち着いていく。緊張がほぐれると体の抵抗はなくなり、ジェフリーはゆっくりとハイジの中に入ってくる。
「ごめん、痛かったよな」
体がぴったりと重なり合うと、痛みでうっすらと涙を浮かべていた彼女の目に、彼がキスをした。
「いいえ、大丈夫です」
ハイジにとっては痛みよりも喜びのほうが強く感じて、彼女がほほ笑んで首を振れば、彼は困ったように顔をゆがめる。
「そんな可愛いことを言ったら止められなくなるぞ。俺は、あんたを大事にしたいんだ」
「大事にしていただいていますから、ジェフリー様の好きなようにしてください」
「ハイジ!」
彼が噛みつくようにキスをしてきた。深い口づけを何度も繰り返した後は、ハイジが動かないように背中で腕をクロスして両肩を抱きしめられる。
「悪い、我慢できねえ」
ジェフリーは腰をぐいぐいと押し付けて、彼の肉棒で彼女の体をかき回す。
「あ……! あぁ……んっ!」
まるで嵐のような激しさだ。体の奥をえぐるように貫かれると、恍惚として目の前がちかちかとしてきた。
「あんたの中は熱くて、すごく締め付けてくる」
「はぁ……、あぁ……。……ん……」
嬌声しか上げられないハイジは、快感が強すぎて彼にしがみついていないと、どこかに飛んで行ってしまいそうな気分になる。
「あ、あぁ……。ジェフリー様……、あ……。私を、捕まえていて……」
荒い息を吐きながらそういうと、ジェフリーが腕に力を込めて彼女を抱きしめた。絡みつくように抱き合いながらも、彼の腰の動きは早くなっていく。
「ああ、ハイジ。俺は、あんたを離さない。愛しているよ、ハイジ。ハイジ!」
ジェフリーの感極まった声とともに、ハイジの最奥で熱を感じた。
激しい息遣いをして、腕の力を緩めると、彼は体をずらす。
「愛している、ハイジ。これからもずっと俺のそばにいてくれ」
そういって、彼は彼女の乱れた髪を整えてくれた。ハイジは、その手を両手で握りしめる。
「ええ。私も、ジェフリー様を愛しています。あなたと結婚できることがうれしいです」
二人で見つめあい、どちらからともなく、口づけを交わした。
彼らは会話を中断して笑顔で出迎え、ハイジは、フォールコン侯爵夫妻と並んで長椅子に腰かけた。
侯爵は、ウルリヒに渡された書類に目を通す。
「不備がなければ、アデレイドは今からでも俺の家のほうに入ってもらいます」
ジェフリーが言うと、侯爵はきょとんとする。
「そなたの家とは?」
「俺は騎士団に入った時から、親から独立している。まあ、垣根で隔てただけで、同じ敷地に立っているから子爵家の別棟ともいうかな」
アデレイドの離れと似たようなものだが、侯爵夫妻に説明するのを聞いていると、ジェフリーの家は侯爵家より一回りくらい小さな屋敷で、身の回りの世話をする召使は子爵家から派遣してもらっているそうだ。
「ふむ。まあ、いいだろう」
家の大きさや召使について、侯爵はあまり気にした様子もなく了承した。
ギーゼラがアデレイドの身の回りの物を持ってくると、全員で応接室を出た。玄関ホールで別れの挨拶をしていると、侯爵夫人がそっとハイジに耳打ちする。
「わかっているわね、アデレイド。子爵家に行っても、あなたはフォールコン侯爵令嬢だということを忘れないのよ」
おそらく、格下の子爵家の言いなりにならずに、侯爵家のプライドを持てということなのだろう。ハイジはあきれながらも、表面上は微笑を返すだけで何も答えなかった。
子爵家のリムジンに、ハイジはジェフリーと一緒に乗り込み、子爵夫妻と向かい合わせに座る。侯爵夫妻と召使たちに見送られて車は発進し、フォールコン侯爵家はすぐに見えなくなっていった。
「ジェフリー、アデレイド様と結婚するにあたって、言っておくことがある」
街並みを走る車の中で、子爵がジェフリーに改まって言う。
「一人前に伴侶を得るのだから、これからは親に頼るようなことはするな。わしたちはお前の家庭に干渉も援助もしないと思え」
「ああ、わかっている。俺だけの力でアデレイドを幸せにするようにするよ」
ジェフリーも真面目な顔をして頷いた。
「ごめんなさいね、アデレイド様」
子爵夫人が謝りながらハイジに説明する。
「ジェフリーに、独立した世帯主としての責任を持ってほしいから、こんな厳しいことを言うんですよ」
「いいえ、ご立派なお考えだと思います」
彼らのしっかりとした考えにハイジが賛同すると、みんなほっとした表情をした。
「だけど、本当に困ったときはいつでも相談してほしい。フォールコン侯爵家には及ばんが、子爵家としてそれなりの人脈も資産もあります」
いざとなったら助けるつもりでいると子爵が胸を張る。親身で頼りがいのある子爵に感謝して、ハイジは「ありがとうございます」とお礼を言った。
「これから家族になるんだから、仲よくしましょう」
にこにこしている子爵夫人たちに向かって、ハイジは背筋を伸ばして姿勢を正す。
「不束者ですが、よろしくお願いします。家族として迎えてくださるのなら、これからは、私のことを”ハイジ”と愛称で呼んでいただきますでしょうか?」
座ったままで失礼だと思ったが、車の中なので仕方がない。ハイジが頭を下げて挨拶をすると、子爵夫人が「まあ!」と感嘆したような声を上げる。
「アデレイド様を愛称で呼んでいいの?」
「それは光栄だな」
思いのほか子爵夫妻が大喜びではしゃいだ。少し恥ずかしくなって、ハイジが照れながらジェフリーを見ると、彼が恭しく彼女の手を取る。
「これからよろしくな、ハイジ」
ぎゅっと手を握りしめるジェフリーは、幸せそうに微笑んでいた。
子爵家の裏に立っているジェフリーの館は、子爵家とは正反対の位置に正門がある。そこで車から降りたハイジとジェフリーは、子爵夫妻を見送ったのち、館に入った。
「おかえりなさいませ。ジェフリー様、若奥様」
屋敷を管理しているというカーター夫妻が、ハイジをジェフリーの妻として出迎えた。
「初めまして。これからよろしくお願いします」
貴婦人の礼をして挨拶をすると、カーター夫妻は嬉しそうに微笑み、夫人がハイジを部屋に案内してくれる。
「以前からお部屋の準備はさせていただいておりましたが、まだ不足のものがあるかもしれません。若奥様のお好みのものを教えていただきましたら、すぐにご用意させていただきます」
アデレイドの部屋よりも広くて、日用雑貨も上質なものが一通り揃っているので、ハイジにとっては十分だ。
ハイジの身の回りをの世話するメイドも数人ついていて、入浴をすますと、彼女たちが肌の手入れや髪を乾かしたりしてくれた。
「今夜はこちらの寝室でお休みください」
カーター夫人が指し示すドアは主寝室で、ジェフリーの部屋にもつながっているという。主寝室と反対側には、ハイジ専用の寝室もあるそうだ。
「このあとは、若奥様に呼ばれるまで誰もお部屋に近づきませんので、ごゆっくりお過ごしください。明日、お目覚めになられましたら、内線でお知らせください」
丁寧にお辞儀をしてカーター夫人はメイドたちを連れて部屋を出ていった。
自分から望んだこととはいえ、いきなり初夜を迎えてハイジはドキドキとしてきた。そっとドアを開けておそるおそる主寝室を覗くと、すでに寝支度を整えたジェフリーがベッドに座って待っていた。
ハイジを見て、彼が顔をほころばせる。
「ハイジ」
彼は足早にやってきて、片手で彼女を部屋の引き入れると、もう片方の手でドアを閉め、そのまま流れるような動作で横抱きにされた。気が付いたら彼の腕の中にいて、ハイジはドギマギとする。
「ジェ、ジェフリー様」
身じろぐ間もなく、ジェフリーはすたすたとベッドへ向かっていく。ベッドの中央にハイジをおろして、彼もその隣に乗りあがった。
体を縮こませるようにしていると、ジェフリーがそっとハイジの頬を撫でる。
「緊張している?」
「は、はい。どうすればいいのか、わからなくて……」
ハイジが答えると、彼はくすりと笑り、彼女の手を取って自分の胸の当てた。
「緊張しているのは俺も同じだ。ドキドキしているだろう?」
確かに手を通して鼓動を感じる。そして改めてジェフリーを見ると、彼の顔がゆっくりと近づいてきて、触れるだけのやさしい口づけをされた。
「俺を受け入れてくれるか?」
熱いまなざしを受けて、恥ずかしさとうれしさで頬が熱くなる。ハイジは自分の熱を感じながら黙ってうなずいた。
ジェフリーがもう一度キスをし、そのまま覆いかぶさるようにして彼女を横たえた。何度も繰り返すキスの合間に、彼は器用にハイジの寝衣をはだけていく。
ジェフリーの手が彼女の胸に触れる。やわやわと胸をもまれ、ハイジの口から吐息が漏れた。
「は……あぁ……」
自分の声が、デニスと抱き合っていた時のアデレイドの声にそっくりで、ハイジは彼女の痴態を思い出す。はっとして、自分に触れているのがジェフリーであることを確認すると、彼女は心の中で安堵した。
彼の指がハイジの乳首をつまむ。
「っ! ……っ」
ハイジは、声を出さないように手で口元を押さえた。こりこりと扱かれるたびに、びくびくと反応する。声を押さえても漏れ出る息遣いが、ハイジにとっては不快に思えた。ジェフリーに与えられる快感に集中できなくて苦しかった。
「我慢しないで声を聞かせて」
ジェフリーが両腕をついてハイジを見下ろしていて、彼女が涙目で見上げると、彼は困ったような顔をしている。
「俺、あんたの感じている声が聞きたい」
「ジェフリー様……」
優しく髪をなでてくれる彼の頬を、ハイジは両手で挟んで引き寄せる。
「私の名前を呼んでくださいますか?」
ジェフリーは、一瞬、戸惑った表情になった。
「ハイジ?」
尋ねるような言い方をするのは、愛称か正式な名かどちらで呼ぼうかと迷ったようだ。ハイジが頷いて軽く口づけると、彼は嬉しそうにほほ笑む。
「可愛いな、ハイジは」
それからはことあるごとにジェフリーがハイジの名を呼んでくれる。
いとおしそうに何度も呼ばれると、アデレイドの身代わりだったことは払しょくされ、忌まわしい光景も思い出さない。
「ハイジ。ハイジ、愛している」
「あ……。あぁ……ん」
ハイジは、素直に快楽を享受できるようになっていった。
体のあちこちにキスをしていたジェフリーは、やがて手で彼女の秘所に触れた。
誰かにそこを触られるのは初めてのことで、ハイジはびくっとして彼の首に手をまわす。下着の上から優しく撫でられ、彼女は体の奥から濡れていくのがわかって彼にぎゅっとしがみついた。
「ハイジ……」
彼に吐息交じりで名前を呼ばれただけでも感じて、彼女の下着はどんどん濡れていった。
「ふっ! あぁ……」
「可愛いよ、ハイジ」
ジェフリーが器用に片手だけで彼女の下着を脱がせる。指で秘所を開きながら、彼は蜜口をいじりだす。
「あ……、あん!」
指を入れられると、腰がはねてしまった。どっと愛液が出てきたようで、ぴちゃぴちゃという水音がしだした。
「すごく感じてくれているんだね。うれしいよ、ハイジ」
恥ずかしくて目をつぶっているハイジと違い、ジェフリーは間近で彼女の表情の変化を見て喜んでいるようだ。
彼が唇に何度かキスをして、緊張で閉じている彼女の唇を舌でつつく。
「ハイジ、口を開いて」
促されて唇を開くと、彼の舌が口内に入ってきた。
「んん、……はぁ……、あ……」
舌をからめとられ、キスが深くなる。ハイジは息をするのがやっとだった。
キスの合間に膣内に入れている指が増やされ、目まぐるしい快感に襲われる。ジェフリーの指が動くたびに、びくびくと反応した。自分の体が自分のものじゃないように、ふわふわとしてくる。
ハイジは体を置きくのけぞらし、硬直したかと思うと、目の前が真っ白になってしまった。
やがて脱力したように、腕を離すと、彼がやさしく彼女の髪をなでる。
「ハイジ、いった?」
ハイジが肩で息をしながら、意味が分からずきょとんとしていると、ジェフリーはほほ笑む。
「今のハイジの感覚がいくってことだよ。気もちよかった?」
「は……い」
なんとなく恥ずかしくなって、ハイジは真っ赤になりながら答えた。
「一度いっておいたら、まだましだと思うけれど、痛かったら言ってくれ」
ジェフリーがハイジの足を開かせて、その中心に彼の肉棒を当てる。
「慣れるまで、ゆっくり進めるよ」
指とは比べ物にならないくらい大きなものが挿入されてきた。圧迫感と想像したことのない痛さに息が詰まる。
「うっ……あっ……」
無意識に抵抗するように頭を振ると、彼がぎゅっと抱きしめてきた。
「悪い、もう少しだから我慢してくれ」
切羽詰まったような声をしているのに、ジェフリーはハイジの髪をなでたり、額に口づけを落としたり気遣ってくれる。大事にされている、愛されていると肌で感じて、彼女の気持ちは落ち着いていく。緊張がほぐれると体の抵抗はなくなり、ジェフリーはゆっくりとハイジの中に入ってくる。
「ごめん、痛かったよな」
体がぴったりと重なり合うと、痛みでうっすらと涙を浮かべていた彼女の目に、彼がキスをした。
「いいえ、大丈夫です」
ハイジにとっては痛みよりも喜びのほうが強く感じて、彼女がほほ笑んで首を振れば、彼は困ったように顔をゆがめる。
「そんな可愛いことを言ったら止められなくなるぞ。俺は、あんたを大事にしたいんだ」
「大事にしていただいていますから、ジェフリー様の好きなようにしてください」
「ハイジ!」
彼が噛みつくようにキスをしてきた。深い口づけを何度も繰り返した後は、ハイジが動かないように背中で腕をクロスして両肩を抱きしめられる。
「悪い、我慢できねえ」
ジェフリーは腰をぐいぐいと押し付けて、彼の肉棒で彼女の体をかき回す。
「あ……! あぁ……んっ!」
まるで嵐のような激しさだ。体の奥をえぐるように貫かれると、恍惚として目の前がちかちかとしてきた。
「あんたの中は熱くて、すごく締め付けてくる」
「はぁ……、あぁ……。……ん……」
嬌声しか上げられないハイジは、快感が強すぎて彼にしがみついていないと、どこかに飛んで行ってしまいそうな気分になる。
「あ、あぁ……。ジェフリー様……、あ……。私を、捕まえていて……」
荒い息を吐きながらそういうと、ジェフリーが腕に力を込めて彼女を抱きしめた。絡みつくように抱き合いながらも、彼の腰の動きは早くなっていく。
「ああ、ハイジ。俺は、あんたを離さない。愛しているよ、ハイジ。ハイジ!」
ジェフリーの感極まった声とともに、ハイジの最奥で熱を感じた。
激しい息遣いをして、腕の力を緩めると、彼は体をずらす。
「愛している、ハイジ。これからもずっと俺のそばにいてくれ」
そういって、彼は彼女の乱れた髪を整えてくれた。ハイジは、その手を両手で握りしめる。
「ええ。私も、ジェフリー様を愛しています。あなたと結婚できることがうれしいです」
二人で見つめあい、どちらからともなく、口づけを交わした。
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