魔法闘争

ミルクEX

文字の大きさ
3 / 4

三、魔導書

しおりを挟む
 アルマは深呼吸をして気持ちを整える。
 アルマはティナを見つけてしまった。彼女は街を歩いていた。
 ここなら作りも複雑だし逃げられるかもしれない……。アルマはそう自分に言い訳して逃げようとしたが、ギリギリの所で踏みとどまった。
 アルマは自分に暗示をかける。殺すことを躊躇ってはだめだと。
 心を殺す。目的を果たすには相手が誰であろうと殺すしかない。
 縮小する筋肉は次の瞬間に爆発する。
「――――ッ!」
 地面を思い切り蹴り、全力でティナが立つ場所まで駆ける。
 胸ポケットから一冊の本を取り出す。
 ティナはアルマが来ることを知っていたかのように動じることなく指を動かした。
 指が指し示すのは遥か上空。
 ティナが腕ごと振り下ろすと無数の槍が――いや、氷の鳥が降り注ぐ。
「全能の魔導書、第一六の魔法」
 だがアルマが本を開きそう呟いただけで鳥は霧散した。
 魔導書にはいくつか種類がある。攻撃に特化したもの、防御に特化したもの。あるいは何かを作り出したり、破壊したり。世界には合わせて二三の魔導書があると言われている。
 そしてそれらの書物は対になっており、二冊を揃えることで、より大きな効果を得ることが出来る。
 しかし世界に一冊のみ、その理から外れた魔導書がある。
 それが全能の魔導書だ。その書はそれだけで全ての偉業を成し得る。
 人が手にしてはならぬ神器だ。その書に手を伸ばすということは人の理から外れることを指し示す。
 しかし、その魔導書は人の手に渡ることは無かった。なぜならその書物は手にする者が生まれながらに扱える能力だからだ。
 他の魔導書は遥か昔から人の手によって管理されてきたが、全能の魔導書は持ち主が死ぬと消えてしまう。
 そして、次の持ち主の能力としてこの世に現れる。しかしその持ち主は人ではない。それはそうだろう。例え人の形をしていようと、神の力を手にした者は人ではないのだから。
 魔女と神の力を持つ者。人から外れた者同士の死闘。生き残った者が、この世に君臨する。 
 それが幸せかどうかなんて分かりきっている。答えは単純。この先には苦痛しかない。周りからの畏怖、嫉妬、侮蔑。さらには唯一の友を殺したという拭えぬ後悔。
 それでもなお、戦わなければならない。それこそが人に対する礼儀であり、友に対する最高の敬意だからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...