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12. 多幸感 *
しおりを挟むマティアスは今、それを胎内に埋め込まれ、男に抱かれやすい状態に仕立て上げられたのだ。でも、それは決して嫌ではなかった。
「まずは、一本入れてみましょうね」
「えっ、あ! そんな、ぁっ」
後孔の入り口を右手の人差し指と中指で撫で回していたアルテュールは、くっ、と少しだけ中指に力をこめてマティアスの中へと侵入させた。
排泄の際にしか使ったことのないはずのそこは、はじめは僅かに抵抗を見せたものの、すぐに第二関節までを飲み込んでいく。
その様子に「おや? ふふっ」なんて笑って、アルテュールはマティアスの中で指をくいくいっと動かし始めた。
「あっ! え、うそ、な、なにっ……ひゃ、あっ」
「どうやらマティアスくんは、中でも十分に感じられる素質がありそうですね。そうですねぇ……ここかな。いや、こちらかな……」
指が中で蠢く感覚に、背筋がゾクゾクした。
はじめは異物感に身悶えていたマティアスだったが、あやすように蠢く指に体が絆されていく。薬の作用で、尻の中では粘度の高い液がぬちゃぬちゃと音を立てていた。
「ん……ふ、ぁっ。あ、んんッ⁉︎」
中を探っていた指が、腹側のある一点をとつっと押したとき、今まで感じたことのない衝撃が走った。
「ああ……ふふっ。ここですか」
「な、なに? そこ、ふぁッ!」
笑みを浮かべるアルテュールを、マティアスは戸惑いの瞳で見返した。そうするうちも、アルテュールの指はくちくちとマティアスの中を弄る。
「ここがマティアスくんの気持ちいいところです。こうやって捏ねてあげると——ふふっ、気持ちいいでしょう?」
「や、ああっ。そこ、押さな、ひゃぅっ」
腰どころか全身が跳ねるほどの甘い痺れが全身を駆けた。
自慰をするときに、こんな感覚を味わったことがなく、マティアスは混乱とともに嬌声をあげる。頭で何も考えられないくらい、未知の快楽に口を閉じることもままならない。
——気持ちが良くて、どうしていいかわからない。
「そう、そのまま啼いていてください。初めてでも、薬のおかげで想像よりもかなり柔らかいですし、これならもう一本入れても問題ないでしょう」
艶やかな笑顔で、アルテュールは瞬くうちにマティアスの体を快楽の海に落としていく。
一本だった指は二本に増え、さらにマティアスが体をくねらせているうちに三本にまで増えた。それでも、マティアスの後孔は痛みを訴えることはない。むしろ与えられる快感に悦び、さらに奥まで飲み込もうとしている。
「ある、てゅ……さまっ、あっ、ふ、んぅっ」
「いい顔ですね。いいですよ、もっと気持ちよくなりましょう」
「は……ぁ、え……」
ちゅぽっ、と指が抜かれると代わりに、質量の違う何かがあてがわれた。それがすでに猛っていたアルテュールの雄であることに気づいたときには、切先が中へと埋め込まれた始めていた。
「あ……あ……そん、な……」
「怖くないですから。ほら、力を抜いていて……」
言われたとおりに体の力を抜くと、ぐぐっと屹立が侵入してくる。
また力が入りかけたところで、唇を塞がれて、舌先で歯列を舐められた。
誘われるように口を開けば、熱い舌がマティアスのそれを捕らえて、唾液を交えるように絡んできた。そちらのほうに意識が向かうと、またぐっと体内に猛ったものが深く埋められる。その繰り返しを経て、艶めいた声が漏れ出るうちにマティアスの中はアルテュールでいっぱいになった。
「ゆっくり動きますね」
「ん……はっ、あぁ、や……ぁっ」
自身の屹立にマティアスが馴染んだところで、アルテュールはゆっくりと腰を動かし始めた。
最初はゆるゆると優しい動きで。それにマティアスが蕩け始めると、今度は抽挿を徐々に速めていく。
「ひ、ぅっ。あっ……やぁ、あっあっ」
「気持ちいいですね、マティアスくん……っ」
「んっ、うんっ……、きもち、い……あうっ!」
淫靡な水音だけだったのに、いつの間にか、ばちゅばちゅと肌と肌がぶつかる音が混じっていく。
はぁ、はぁ、と二人の荒い息が小屋の中に響き、その合間に暖炉の薪ががらんっと崩れた音が鳴った。マティアスは美しい占星術師に抱かれているという多幸感に満ちながら、はじめての快楽に溺れていく。
「あっ! あっ! だめ、だめっ……イくっ。イっちゃ……っ!」
「いいですよ。ほらっ……一緒にイきましょう、ねっ……!」
「うぁ、ぁっ、あっ。ひぁぁあっ!」
奥深くまで突き上げられ、マティアスはいっそう愛らしい声を上げながら、白濁を吐き出した。同時に、胎の奥に熱いものが迸る。アルテュールもまた、己の中で達したのだとわかり、マティアスは荒い息を吐きながら小さく笑んだ。
◇◇◇
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