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第二話
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彼女は心配そうに揺れた瞳で俺に尋ねていた。そこにはビビって見捨てて一目散に逃げ出した俺を非難したいという感情は読み取ることが出来ない。
おそらくとてつもなく優しい女の子なのか、大女優もびっくりの演技力であるかのどちらかだろう。どちらかと言えば前者であってくれた方が俺としてはありがたい。
最も、後者であってくれた方が俺は罪悪感を感じずに済むが、可愛い女の子と出会った時の結論が、『あー、腹黒い女だった、助けなかったの間違いじゃなかった。よし!』で終わるよりは、『こんなにいい子を俺は見捨てようとしたのか…俺はなんてひどいやつなんだ…もうちょっと人としてのあり方ってものを考えよう、ああ、それにしても可愛いなあ』となった方がストレスは大きいがロマンチックだろう。
「え、だ、大丈夫、刺されてないよ」
とは言ってもついさっき死ぬんじゃないかという恐怖に襲われたばかりだ。なんとか質問に応えることが限界だった。本当は「あー、余裕余裕!おっちゃん盾にしたらビビって逃げてったよ。やっぱ頼りになるのは一般市民だよね!それより逃げちゃってゴメンよ」てな感じの返事をする準備が脳内に用意出来ていたが、どうしてこう脳内にある言葉を実際に口にだすのは難しいのだろう。これさえ上手く出来てたら多分今俺彼女居るよね。
「……っふ。よかった。でもダメだよ、危ないよ。女の子を人気のないところで壁に押し付けるような男の人に話しかけちゃダメ!」
彼女は安心したような笑みを浮かべたあと、説教を始めた。最も、漫画なら「めっ!」なんて擬音が書かれていそうな可愛らしい怒り方だ。なんだかこの子見てると落ち着くな。さっきまでの恐怖が消えていくようだ。
「いやー、ごめんよ。あまりにも暇でさ、アクシデントを求めてたんだよね」
「え?あんなに怖がってたくせに?好きなの?あういうの……」
「いやあ、もっとこう、想定してたのが、男の方は普通に弱くて、ナイフも持ってなくて、やっつけた俺カッコイイ!みたいな感じでさ……」
あれ、おかしい。本音がだだ漏れだ。普段はこういう、漫画に影響されたような発想は恥ずかしいから言わないようにしてるんだけどな。なんだか、この子なら俺がそういうこと言っても馬鹿にしたりはしないような気が知れない。初対面だというのに不思議なものだ。ひょっとしてこれは恋か?いや、でも中学の時のアレと比べると……
「かっこよくないよ!……そんなの。別にいいじゃん。男の子だからって強くないととか。死んじゃったら死んじゃうんだよ!」
「そりゃあ死んじゃったら死んじゃうだろうよ。いやさ、俺もそう思うんだけど、さっきはどうかしてたんだよ。変に気が大きくなってたというか。大丈夫。もうしないよ」
本当は逃げてしまったことをすぐに謝って、「ナイフは逃げるよね―」なんてフォローをしてもらいたいのだが、彼女が俺に抱いている問題点はどうやらそこには関係がないらしい。なんだよ『大丈夫、もうしないよ』って、かっこわりぃ。
「約束だよ。お姉さんと」
彼女は柔らかくはにかみながら手を差し出してきた。その笑みを世界の全てを許しているような色をはらんでいて、警戒心どこいった?なんて心配になってしまう。
けど、それ以上に嬉しかった。こんなに優しい顔が出来る女の子がこの世界にいてくれて、恋とは少し違うような、むしろ恋心のような、ドキドキするのとはちょっと違う、不思議な嬉しさだ。
「お姉さんて……、同い年くらいなんじゃないの?」
意識すると急にこっ恥ずかしくなった。
結局、無防備で、優しげな女の子と「約束だよ」の握手をし、俺は帰路についた。別れる前に連絡先と名前と年齢を教えあった。彼女の名前は“平井 絵里”歳は俺と同じ17歳だ。あ、そうそう、俺の名前は“吉田 清”17歳で高校二年生だ。
平井さんも高校生なのだろうか?どんな人生を送ってきたらあんな表情ができるのだろう?なんて考えていると、俺のスマートフォンからメッセージ受信の音が鳴った。
『もうあんな事しちゃだめだよヽ(`Д´)ノ困ったときは110番!』
というメッセージがアプリに届いていた。
ああ、可愛いなぁ……なんていう感想をディスプレイ上の文字に抱くというのはよくよく考えると少し恥ずかしい。この効果を狙って世の女の子達は顔文字とかギャル文字とか、文字の使い方を日々研究しているのだろうか。……あざといなぁ。
などと違っていたら非常に失礼な推論をしたあと、結局俺は、
『うん、わかった。』
と、返信した。
おそらくとてつもなく優しい女の子なのか、大女優もびっくりの演技力であるかのどちらかだろう。どちらかと言えば前者であってくれた方が俺としてはありがたい。
最も、後者であってくれた方が俺は罪悪感を感じずに済むが、可愛い女の子と出会った時の結論が、『あー、腹黒い女だった、助けなかったの間違いじゃなかった。よし!』で終わるよりは、『こんなにいい子を俺は見捨てようとしたのか…俺はなんてひどいやつなんだ…もうちょっと人としてのあり方ってものを考えよう、ああ、それにしても可愛いなあ』となった方がストレスは大きいがロマンチックだろう。
「え、だ、大丈夫、刺されてないよ」
とは言ってもついさっき死ぬんじゃないかという恐怖に襲われたばかりだ。なんとか質問に応えることが限界だった。本当は「あー、余裕余裕!おっちゃん盾にしたらビビって逃げてったよ。やっぱ頼りになるのは一般市民だよね!それより逃げちゃってゴメンよ」てな感じの返事をする準備が脳内に用意出来ていたが、どうしてこう脳内にある言葉を実際に口にだすのは難しいのだろう。これさえ上手く出来てたら多分今俺彼女居るよね。
「……っふ。よかった。でもダメだよ、危ないよ。女の子を人気のないところで壁に押し付けるような男の人に話しかけちゃダメ!」
彼女は安心したような笑みを浮かべたあと、説教を始めた。最も、漫画なら「めっ!」なんて擬音が書かれていそうな可愛らしい怒り方だ。なんだかこの子見てると落ち着くな。さっきまでの恐怖が消えていくようだ。
「いやー、ごめんよ。あまりにも暇でさ、アクシデントを求めてたんだよね」
「え?あんなに怖がってたくせに?好きなの?あういうの……」
「いやあ、もっとこう、想定してたのが、男の方は普通に弱くて、ナイフも持ってなくて、やっつけた俺カッコイイ!みたいな感じでさ……」
あれ、おかしい。本音がだだ漏れだ。普段はこういう、漫画に影響されたような発想は恥ずかしいから言わないようにしてるんだけどな。なんだか、この子なら俺がそういうこと言っても馬鹿にしたりはしないような気が知れない。初対面だというのに不思議なものだ。ひょっとしてこれは恋か?いや、でも中学の時のアレと比べると……
「かっこよくないよ!……そんなの。別にいいじゃん。男の子だからって強くないととか。死んじゃったら死んじゃうんだよ!」
「そりゃあ死んじゃったら死んじゃうだろうよ。いやさ、俺もそう思うんだけど、さっきはどうかしてたんだよ。変に気が大きくなってたというか。大丈夫。もうしないよ」
本当は逃げてしまったことをすぐに謝って、「ナイフは逃げるよね―」なんてフォローをしてもらいたいのだが、彼女が俺に抱いている問題点はどうやらそこには関係がないらしい。なんだよ『大丈夫、もうしないよ』って、かっこわりぃ。
「約束だよ。お姉さんと」
彼女は柔らかくはにかみながら手を差し出してきた。その笑みを世界の全てを許しているような色をはらんでいて、警戒心どこいった?なんて心配になってしまう。
けど、それ以上に嬉しかった。こんなに優しい顔が出来る女の子がこの世界にいてくれて、恋とは少し違うような、むしろ恋心のような、ドキドキするのとはちょっと違う、不思議な嬉しさだ。
「お姉さんて……、同い年くらいなんじゃないの?」
意識すると急にこっ恥ずかしくなった。
結局、無防備で、優しげな女の子と「約束だよ」の握手をし、俺は帰路についた。別れる前に連絡先と名前と年齢を教えあった。彼女の名前は“平井 絵里”歳は俺と同じ17歳だ。あ、そうそう、俺の名前は“吉田 清”17歳で高校二年生だ。
平井さんも高校生なのだろうか?どんな人生を送ってきたらあんな表情ができるのだろう?なんて考えていると、俺のスマートフォンからメッセージ受信の音が鳴った。
『もうあんな事しちゃだめだよヽ(`Д´)ノ困ったときは110番!』
というメッセージがアプリに届いていた。
ああ、可愛いなぁ……なんていう感想をディスプレイ上の文字に抱くというのはよくよく考えると少し恥ずかしい。この効果を狙って世の女の子達は顔文字とかギャル文字とか、文字の使い方を日々研究しているのだろうか。……あざといなぁ。
などと違っていたら非常に失礼な推論をしたあと、結局俺は、
『うん、わかった。』
と、返信した。
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