僕の兄は◯◯です。

一章

吹影鏤塵

　確かに朗報ではあるけれども。


校舎から少し離れた、見るからに人気のない図書館。


図書委員の山形君（地味メンだけど僕的には癒される）以外、陸の孤島と化したそこは、たしかに人っ子一人いない。


ここで察しの良い方はお分かりになっただろう。


そう、奴が持ってきた朗報とは、あの集団……もうＧで良いや。似たようなもんだし。奴等に絡まれず平穏に過ごせる場所の情報だった。


いや、ありがたいよ。静かに過ごせて快適そうではあるよ、うん。だけどさ。


「……いきなりだけど山形君、抱き締めても良いですか？　っかもう抱き締めてるけど」


「あははっ」


カウンターで仕事をしていた僕よりも身長の低い山形君を後ろから抱きしめて、この暇さ加減をもて余していた。


「どうしたの？体調悪いの？」と微笑みながら、腰に回した腕をポンポンと叩く山形君に、疲れきった心が癒されるのを感じる。


　おっと、癒されることに専念し過ぎて紹介が遅れてしまった。


この腕の中でエンジェルスマイルを浮かべている彼、山形君は同じクラスの地味メン同士である。


意外に大変な仕事である図書委員を、自称チワワ軍団に押しつけられても、受け入れてしまうお人好し。


嫌がらせの如く奴等が仕事を押しつけても、山形君は屈することなく穏やかな微笑みで、持ち前の懐の大きさと包容力を存分に発揮し、今では敵なし。


クラスメイト以外に、あんなに仕事を押し付けてきたチワワ軍団でさえ、山形君のちょっとしたファンクラブがあるみたいだ。と言っても、見守り隊のようなものだが。


んで、僕の親友パート２。高校で出来た初めての友達。


出逢いは追々語るとして、今まで登場してこなかったのは、彼が色々な仕事を担任から進んで請け負っていたからに他ならない。


あの壮絶鬼ごっこの時も、片付けや何やらの仕事で忙しかったようで。